人工知能を応用したサービスまとめ|2016年08月版

人工知能を応用したサービスまとめ|2016年08月版

Brain brings computer to life. A Frankenstein moment.

 

人口知能の発達により多くの分野に進出

 「第三次AI革命」が世界を変えようとしています。このAI革命のポイントは「ディープ・ラーニング」です。これまでにも人工知能は存在しましたが、これまでの人工知能は人間の頭脳の機能の一部を、機械によって代替させようとするものでした。これに対してディープ・ラーニングとは、人間の脳神経をモデルとして、膨大なデータを解析しようとするアルゴリズムから生まれました。コンピュータが膨大なデータを処理することができるように、性能が向上したことから、ニューロンネットワークを多層化することが実現し、複雑な計算作業が可能になりました。こうして実現したディープ・ラーニングが、人工知能ブームに火を付けたのです。

 

 ディープ・ラーニングは、これまで機械では判断が難しかった、音声や画像、言語などの曖昧な情報の処理が可能になりました。つまり、これまで機械に頼れず、人間にしかできなかった複雑な作業までが、コンピュータによって実現できる可能性が高まってきたということです。各業界での人工知能の動向を見てみましょう。

 

医療業界でのインパクト

 今回の人工知能ブームの中心にあったのは、IBMの開発した「Watson(ワトソン)」です。ワトソンは質疑応答システムで、2011年にアメリカのクイズ番組で人間のチャンピオンに勝利したことから、有名になりました。IBMはワトソンを医療分野での活用を模索しはじめました。ワトソンはもともと質疑応答システムでしたが、現在では、「研究開発」、「診断支援」、「顧客サポート」の大きく3つの役割が与えられています。

 研究開発とは、例えば新しいがん治療薬の開発などの研究分野で、膨大なデータを扱うような分析をワトソンによって行ったり、患者の診断記録を臨床試験のデータと照らし合わせて、その患者に最もふさわしい治療方法を見つけ出したりすることです。「Watson Discovery Advisor」や「Watson Clinical Trial Matching」という、研究分野で活用するプロジェクトが、早くも実用段階に入っています。

 診断支援では、患者の電子カルテから必要な情報を抜き出したり、膨大な症例から患者に必要な治療方法を見つけ出したりするものです。「Watson for Oncology」というプロジェクトでは、がん治療の診断支援として、電子カルテが「質問」の対象となり、診療の案をワトソンが提示したりします。

 最後の顧客サポートとは、患者だけでなく医者からの専門知識を必要とする問い合わせに対して、ワトソンが代わりに答えるというものです。「Watson Engagement Advisor」や「Utilization Management」のプロジェクトが進行中です。

 このように、ワトソンは医療の全行程で急速に開発が進められています。これらのプロジェクトの内容を見ると、膨大なデータから情報を分析するといったもので、これまでの人工知能と大差ないように思えるかもしれません。しかし、医療分野の情報は非常に複雑で、判断が難しいものが多い上に、人の生死に関係するものですので、これまでの人工知能の技術では難しかったのです。それが可能になっているのですから、いかに現在の人工知能が進んでいるかが分かります。

 日本の企業も、診療サポートへの人工知能の活用をはじめています。東芝メディカルシステムズなどの医療機器メーカーが開発した「ホワイト・ジャック」という人工知能は、患者の診療データから、適切な治療方法を提案するシステムを開発しました。サンフランシスコのベンチャー「Sense.ly」は、バーチャルナースという、独自のシステムを開発しています。バーチャルナースの「Molly」は、音声でコミュニケーションを取ることができ、血圧の測定、薬の量や飲む時間の管理など、ナースの行うような仕事をかわりに行い、さらにテレビの会議で画面越しに石の診察を受けることもできます。

 

製造業での人工知能の活用

 製造業では、かなり早いうちから業務工程のオートメーション化が進められており、生産の多くの部分がロボットによって担われてきました。人工知能の導入も、早くから取り組まれています。しかし、製造業の場合は他の分野での活用方法とは少し異なるところがあります。多くの分野での活用方法は、膨大なデータ処理や記録容量をクラウド環境の存在によって実現させています。しかし、クラウドを利用すると処理にタイムラグが生じるため、リアルタイム性が重要視される製造業の現場での活用には、限界がありました。

 そこで生まれたのが「エッジ・コンピューティング」という考え方です。エッジ・コンピューティングとは、エッジサーバを物理的に近い距離に置くことによって、通信によるタイムラグを最大100分の1まで縮める構想のことです。IoT(インターネット・オブ・シングス=モノのインターネット)の活用で現場でのデータの取得が可能になっているため、エッジ・コンピューティングの構想を実現させることで、取得から処理までを現場で行えるようなシステムの開発が進められています。

 ファナックと人工知能を開発するベンチャーであるPFN(Preferred Networks)は、このような取り組みを先駆けて行っていました。これはファナックの開発する産業用のロボットに、人工知能を搭載し、人工知能の機械学習の機能によって操作方法を教育するというものです。ロボットが部品を取り上げる過程で情報を収集し、機械学習することよって操作を精緻化していくことができるのです。

 

自動車や金融までも

 より私たちの生活に近い部分では、自動車への人工知能の活用があります。テスラモータースが世界に先駆けて自動運転の実用化に向けて開発中ですが、日本のトヨタも人工知能の開発に投資しています。より安全で快適な自動車社会の実現のために、トヨタは新会社を設立し、今後5年間で10億ドルを投資する方針を発表しました。

 さらに、金融業界でも人工知能の活用が相次いでいます。人工知能はマーケットやネット上から情報を集め、自分で投資手法を学習し、投資先を見つけます。報道では、業界全体での運用成績が4%近いマイナスを出している時期に、コンピュータ運用型のファンドは、2%以上のプラスを出していたとされています。金融取引での人工知能の活用は、すでに魅力的な実績を出しているのです(日経新聞2016年5月9日)。2016年6月には、三井住友銀行が人工知能で顧客に最適な金融商品を提案する取り組みをはじめることも発表され、これからはさらに活用分野の広がりが期待されます。

 同様の動きは不動産投資の分野でもはじまっています。人工知能の活用で顧客に最適な物件を提案したり、膨大な情報を分析したりすることで、投資分析する方法がすでに開発されています。これらの技術は、まだ多くの不動産投資家には知られていません。リーウェイズの提供するGATE.は、不動産投資の投資分析に特化した、人工知能を用いたサービスです。

 このような手法を活用できる投資家と、そうでない投資家の間で、これからは大きな差がついていくのではないでしょうか。これから人工知能の活用はどこまで広がるのか、注視していかなければなりません。

 

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