不動産投資を行なう方は増えてきていますが、不動産投資にはトラブルがつきものです。大家の仕事特有のさまざまな苦労があります。今回はそんな大家の苦労話をトラブル事例の紹介とともにまとめました。
大家さんの仕事は苦労が多い
不動産投資家になることで不労所得を得て脱サラする、そのような話が不動産投資をすすめる雑誌や記事には多く書かれています。しかし実際に物件を保有し自主管理をはじめると、さまざまなトラブルに巻き込まれ、大家の仕事もとても大変であることが分かります。
トラブル事例に多く見られるものを分類すると「入居者」とのトラブルと「業者」とのトラブルとに分けられます。入居者とのトラブルは、主に家賃の滞納や夜逃げなど、業者とのトラブルは修繕やリフォームの料金の支払い後に業者と連絡が取れなくなったりするケースです。具体的にみていきましょう。
賃借人とのトラブル
■Aさんのケース
Aさんは不動産経営をはじめて1年未満の初心者でした。 |
Aさんのように不動産投資をはじめて半年で滞納が出るというケースも充分あり得ます。しかしそれから対策を考えても遅いため、実際に不動産を取得する前から滞納への対処方法を考えておいた方がいいでしょう。
Aさんはその後内容証明を送って退去してほしい旨を伝え、それまでの入居者には退去してもらいました。しかし意外なことに滞納した分のお金は数ヶ月後に振り込まれていたそうです。実際にはこのように法的な手続きをせずに滞納分の賃料が回収できるケースは稀です。そのため滞納に備えて法的手続きの方法をよく調べておくか、保証会社と契約しておくなどの対策を講じておくようにしましょう。
■Bさんのケース
Bさんの父親は一人で所有するアパートを管理しており、家族にも経営には一切手をつけさせていませんでした。 |
このような入居者とのトラブルには、保証会社と契約することで対処することができます。しかし保証会社の利用も万全ではありません。保証料の費用を負担しなければならないことはさておき、保証される額には上限があること、また問題が発展したときの対応は応じてもらえないことに注意が必要です。つまりある程度の滞納トラブルには対処できるものの、度を超えた滞納者とのトラブルのリスクには対処できないということです。しかし、だからといって自分で強引に回収することもできません。
しかしこのトラブルへの対処の手間と心理的な負担は大きく、Bさんはすっかり疲れてしまい、結局Bさん父親が死亡した後に物件を手放してしまいました。このケースでは自分で強引に回収しようとしても大きなトラブルにはなりませんでしたが、強引な自主回収は賃借人から逆に法的に訴えられることもあるからです。このようなケースでは、裁判所での滞納賃料等回収の手続きを行なうことがベターです。それはそれでお金がかかりますが、もっとも安全に問題に対処することができます。
法的な手続きとしては、まず①内容証明を送り、それから②裁判外でも示談、③ADRの利用、④支払い督促、⑤賃料請求訴訟の提起、という流れになります。また夜逃げなどの場合は訴訟とは別に強制執行という手続きを行なう必要があります。できれば、このようなトラブルに発展する前に対応できればいいのですが、どうしても起こってしまったときのために、このような手段があることを知っておくことが重要です。
業者とのトラブル
Aさん、Bさんは入居者とのトラブルのケースでしたが、不動産投資のトラブル事例の中には業者とのトラブルも多くあります。
■Cさんのケース
Cさんは古い中古物件を格安で購入し、それをリフォームして賃貸することを考えました。 |
Cさんのケースは業者とのトラブルですが、これはCさんの進め方にも問題があります。先に支払ってしまうと逃げられても回収できない可能性があるのです。
この業者は一人親方で税金を滞納しており、Cさんが支払ったお金もすぐに税務署に差し押さえられており、仕入れ業者に支払うお金がなかったため逃げてしまったそうです。不自然に安い業者に依頼したり、要求されるまま先にお金を支払ったりしてしまうと、トラブルの元になってしまいます。
物件の漏水
また物件そのもののトラブルがあります。よくあるのが「漏水」です。
あるケースでは、漏水の原因がユニットバスにあったものの、漏水の原因となっている部品のみの交換ができなかったため、ユニットバスをまるまる取り替えることになったそうです。そのため浴室の壁を壊し、ユニットバスを入れ替える工事を行い、それから再び壁をつくる、という作業が必要になりました。総額で200万円かかったそうです。
漏水すると修繕費用がかかるだけでなく、漏水によって入居者に損害が発生した場合、損害賠償請求されることもあります。漏水は部品や家の劣化が原因で起こるものであるため定期的なメンテナンスを行なって、問題には未然に対処するようにしましょう。
このように大家さん業は苦労がつきものです。不動産経営は「不労所得」なのか「苦労所得」なのか。それは大家さんの間でよく話題になる永遠のテーマかもしれません。