大家さんが裁判に巻き込まれるケース

裁判事
(写真=PIXTA)

 不動産投資をして物件のオーナーになれば、裁判に巻込まれることもあります。自分で裁判を起こすこともあれば、裁判を起こされてしまうこともあるでしょう。今回は不動産投資に関わるちょっと変わった裁判の例をご紹介します。

不動産投資に裁判はつきもの?

 「裁判」というと多くの人は犯罪や事故に巻き込まれたケースのことを想像して、気が引けるかもしれません。しかし実際に不動産投資をはじめて大家になれば、裁判に触れる機会は多くあります。多数の物件を保有していたり長期間にわたって大家業を行なっていれば、必ずと言っていいほど法的な係争に巻き込まれることがあります。そのため不動産投資をはじめて大家になるならば、裁判に関する知識は事前に得ておく必要があります。投資と法律は密接な関係にあるのです。それでは具体的な事例を見てみましょう。

家賃滞納

 大家業をしていてもっとも多く接するのが「家賃滞納」のトラブルです。10戸物件を保有していればそのうち1戸では滞納が発生するとすら言われます。滞納は発生から早期であれば、裁判を起こさずに滞納を督促することで対応することができます。多くの滞納はこの滞納督促で解決されます。しかしそれでも解決できない滞納や早期に対応しなかった滞納に対しては、裁判を起こす必要があります。滞納に対して裁判を起こしたAさんの事例を見てみましょう。

~Aさんの事例~
 Aさんはまだ不動産投資をはじめたばかりの初心者でしたが、さっそく保有する物件の1つで滞納が発生しました。
 入居者からの要望から滞納督促は数ヶ月にわたって行ないませんでしたが、入居者が払ってくれるか不安になったため、裁判を起こすことにしました。

 Aさん入居者には退去してもらいたかったため、裁判では滞納している家賃の請求と立ち退きの要求を行なうことにしました。この場合はメインの請求は立ち退きで、滞納は付帯請求になります。
 Aさんはお金をかけたくなかったため、簡易裁判所で自分で提訴することにしました。

 裁判には入居者が出廷しなかったため、告訴から2ヶ月弱で結審し、建物明け渡し請求の判決が出ました。
 入居者はそこで退去したため、Aさんは数万円の手続き費用と手間はかかりましたが、滞納分の賃料の支払いと退去をさせることができました。

 もしも入居者が判決を受けても退去しなかった場合は、強制執行の申し立てを行なわなければならないため別の手続きが必要になります。このような滞納や退去に関わる簡易裁判は、もっとも多く発生するケースです。

迷惑な入居者

 不動産投資を行なっていれば問題のある入居者にあたってしまうことは避けられません。マンションで騒音を起こす入居者を提訴しその物件の競売まで認められた例を見てみましょう。

~Bさんの事例~
 Bさんは平成6年ごろからマンションの一室を購入しましたが、居住はしていませんでした。
 しかしBさんの子どもであるCさんに平成7年2月ごろから使用貸借し、Cさんが単身で入居し始めました。Cさんはその5年後である平成12年から、物件内で異常な騒音を発するようになり、同じマンションの入居者に迷惑をかけるようになりました。
 そこでマンションの管理組合では、出席者全員一致の議決で、BさんとCさんとの使用貸借の解除と物件の引き渡し及び競売を請求しました。この3つの要求はすべて認められました。

 これは管理組合と入居者の間での裁判ですが、このようなマンション内でのトラブルによって競売まで認められるケースは少ないです。しかし入居者の大半がこのCさんからの被害を受けていたこと、Cさんが再び入居することを避けるためには競売を行なうことが妥当と考えられたことから、引き渡し及び競売が認められた数少ないケースとなりました。

大家が賃貸契約を別の人と結んでしまった例

 まずは事案の概要を説明しましょう。

~Dさんの事例~
 Dさんは平成11年に賃貸用のビルを建築することを計画し、不動産会社に入居者の募集・契約を依頼しました。不動産会社はある建築会社に賃貸契約の勧誘を行い、平成12年1月ごろ、契約の案を作成して貸し主であるDさんと建築会社に届けました。また建築会社とは工事の請負契約を行い、その会社がビルの工事を行ないました。建築会社は、要望通りの案で貸借できるものと考えていました。

 しかし同時期にDさんに対して他団体から一括貸借したいという申し入れがあり、Dさんとしてはこちらの方が多くの賃料が取れると考えたため、当初契約を締結する予定であった建築会社には貸借を行なわない旨を伝えて、この団体と契約締結してしまいました。
 これを受けて建築会社はDさんに対して、控訴審においてDさんに過失があるとして損害賠償請求が行なわれました。

 この事件は大家の問題のある行動によって、大家が提訴されてしまった例です。Dさんと建築会社は貸借契約を行なったとは言えないが、契約締結以前の過程において建築会社に信頼感を与えたにも関わらず、それを裏切ったため、「信頼利益の侵害」が認められました。その結果Dさんは損害賠償の責任を負うことになったのです。
 大家としては少しでも利益のである入居者と契約を締結したいと考えるのは当然です。しかし、問題があったのはそれ以前に別の相手と契約の準備を進めていたという点、そしてそれを話し合いなどもなく一方的に打ち切ったという点です。これは極端な例かもしれませんが、これに近いケースは珍しくありません。

入居者の契約違反による裁判

 物件を貸し出すときになんらかの条件を付けることは、どの大家でもやっていることです。特に貸しビルなどの場合は店舗が入居するため、どのような業種の店舗ならばOKなのかといった条件を付けるのが一般的です。この事例では、大家であるFさんは物件の貸し出し条件として、不動産業者にカラオケの禁止、焼き肉などの強い臭気の出るものは禁止という条件で物件の媒介を依頼しました。

~Hさんの事例~
 居酒屋経営のための店舗を探していたHさんは、その条件を見て営業は可能だと判断して契約を申し込みました。不動産業者が作成した契約書にはカラオケ不可とのみ記されており、Fさんの指示したその他の特約については記載されていませんでしたが、不動産業者を信頼していたため、特約を追記することを指示しただけでこれに押印しました。

 しかし大家であるFさんは、開業前に居酒屋経営を行なうならばダクトの完備が必要と主張したため、Hさんは経営が困難と考えて契約解除の要求とともに、保証金・賃料の返還、開業準備金、逸失利益の請求を行ないました。
 この裁判では、居酒屋経営を行なおうとしたHさんは、強い臭気のでるものの営業は禁止である旨は知らないままに契約していたため、大家Fさんに過失があると認められ、逸失利益以外の要求は認められました。Fさんは賃料、保証料の返還だけでなく開業準備金まで支払うことになりました。

 不動産投資を行なう上で、契約内容は非常に重要です。投資と法律はとても密接な関係にあるのです。この事例では大家は契約者に対して明確に条件を伝えることができていなかった点に問題がありました。

 不動産を保有して大家になれば、裁判に巻き込まれる可能性はあります。それも滞納請求のように自分が裁判を起こす側になることもあれば、契約上の不備によって自分が訴えられることもあります。
 これから大家になるという人は、不動産投資に関連することだけでもいいので法律に馴染んでおくといいでしょう。
 

賢い不動産投資を始めよう

賢い不動産投資を始めよう

2016年8月30日 7:00 AM カテゴリー: 不動産トラブル, 不動産投資, 事例・実践

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