金融庁もサブリース関連トラブルへ注意喚起

金融庁もサブリース関連トラブルへ注意喚起

金融庁は26日、「アパート等のサブリースに関連する注意喚起について」と題する注意喚起をホームページ上に掲載しました。消費者庁と国土交通省は連携して、3月に「アパート等のサブリースの契約を検討されている方」に向けて注意喚起しています。

今回の金融庁の注意喚起は、これに追加する形で、金融庁・消費者庁・国土交通省の連名で公表したものです。

金融庁による注意喚起

これまでサブリース契約に関するトラブルは、不動産業者の所管官庁である国土交通省と、消費者問題に関する注意喚起を担当する消費者庁が、連携して注意喚起を行ってきました。

本来、サブリース契約は賃料を保証する不動産業者と、契約を結ぶアパートのオーナー(投資家、消費者)との間の問題であり、金融庁はどちらの主体にも直接は関係しません。

ところが今回は、金融庁も注意喚起に名を連ねました。

銀行による顧客本位の業務運営

金融庁のホームページには「サブリース契約を伴う投資用不動産向け融資を受ける際、不動産業者や金融機関による不正行為が確認されています。」とあります。この一文から、金融庁は金融機関による不正行為と、そのことによって消費者保護が損なわれることを重視し、今回の注意喚起になったと読み取ることができます。

金融庁は、前任の森信親長官が「顧客本位の業務運営」を促すなど、金融行政の改革に努めています。顧客本位の業務運営について、金融庁が2017年3月30日に公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」から、2つを紹介します。

原則2.金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。

原則5.金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、(略) 金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。

7つある原則の中から原則2と原則5を抜粋しました。

金融庁は、銀行に対し高度の専門性と職業倫理を求めています。また、銀行と顧客との間には情報の非対称性があることを前提として、銀行に対して重要な情報の提供も求めています。

顧客本位の原則は、主に投資信託や保険などの金融商品を取り扱うことを想定しています。しかし銀行の主力商品であるローンについても同じことは言えるでしょう。

銀行による投資家保護

銀行が顧客本位の立場に立つなら、場合によっては不動産投資のローンを断らなければなりません。金融庁は銀行のモニタリングを強めていきそうですので、今後はローンが断られるケースや金額が絞られるケースは増えるでしょう。

ローン審査の厳格化によって、不動産投資マーケットの取引量は一時的に縮小する可能性はありますが、銀行が顧客本位の立場に立つことは、マーケットの中長期的な発展のためには望ましいことと言えます。

銀行が高度の専門性と職業倫理を保持し、銀行の目線で物件を評価し、顧客の最善の利益を図るべく、適切な額のローンを提供することで、過剰な債務を抱えて不良物件を購入してしまう不幸な投資家は減るでしょう。

金融の側から不動産のレモン市場が解消される動きを期待したいところです。

今後の不動産投資

もちろん、銀行が「顧客本位の業務運営」を行っても、不動産への投資やローンの利用は「自己責任」です。投資家は銀行や不動産事業者に頼り切らず、最終的には自分で判断を下す必要があります。

オリックス銀行の「キャッシュフローシミュレーター」には、Gate.のAI査定機能が取り入れられ、投資家にキャッシュフローのシミュレーションを提供しています。投資家は、本システムを利用することで、現時点での表面利回りだけでなく、将来の収支を見積もることができます。投資判断の参考にご利用ください。

今後は、金融機関・不動産事業者に対して、ますます「顧客本位の業務運営」が要求されます。それに伴い、投資家サイドにおいても、適切な利回りが見込める物件を選び、将来のキャッシュフローを見積もり、必要十分な額のローンを利用する堅実な不動産投資に対するニーズが高まると思われます。

リーウェイズは、金融機関・不動産事業者の「顧客本位の業務運営」と投資家の「客観的なデータに基づく投資判断」を引き続き支援していきます。

 

 

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