【不動産投資の基本】不動産価格の変化を知る!

【不動産投資の基本】不動産価格の変化を知る!

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(画像=Thinkstock/Getty Images)

不動産価格と株式市場の関係

 資産形成においては市場動向を把握し先読みすることが非常に重要です。株式投資に限らず、多くの投資商品は世界各国からの投資資金の流動の中でその価格が決定されるようになっています。その傾向は、不動産においても同様であり、不動産資産はもはやグローバルな資産となっていると言えます。特に2000年以降マクロ的にみた株式市場は不動産価格の動向を抜きに語れない状況になっています。今回は不動産価格の変化の背景とそのメカニズムを明らかにしてきます。

 バブル崩壊後、幾度かの日経平均の大幅な上下動を経験してきている日本市場ですが、CPI調整済み日経平均株価と不動産価格(中古マンション価格)の推移を過去20年比較すると、興味深いあるひとつの傾向が見て取れます。それは、株価が不動産価格指数を底値に反転しているという事実です。株価は人々の期待によって形成されます。ところが経済危機において将来に期待がもてなくなると株価は下落します。どこで底値になるかは、その会社の実物資産によります。その多くが不動産資産であるため、株価の底値水準は不動産の水準に依存するということです。資産形成を考える上で、不動産市場を理解するということは非常に重要な判断指標を得るということを意味しています。(図1)

住宅価格指数

不動産価格のサイクル

 不動産投資自体は日本において長く実績がある投資方法の一つですが、その価格形成のメカニズムについては意外と一般的に知られていません。どのような要因で価格が決定されるのかを理解することは不動産投資の成功確率を高める上で欠かせないプロセスです。

 不動産には実は厳然としたサイクルが存在しています。不動産価格の形成要因を考える上で、このサイクルの存在を無視することはできません。図2はそのサイクルを時系列グラフで表したものです。日本不動産研究所が調査している市街地価格指数(住宅)の前年伸び率をHPフィルターという手法によってサイクルとトレンドに分離しています。赤のラインがトレンド、緑のラインがサイクルですが、明らかに日本の地価には定期的な循環傾向が見て取れます。こうしたサイクルの存在は日本に限らず世界の不動産市場においても同様に確認されている事象です。

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出所:日本不動産研究所データより筆者作成

 では、こうしたサイクルはどのように発生するのでしょうか。我々が経済学の授業で学んだ景気循環の長短位相の存在は、そのまま不動産市場においても納得できる説明となっています。オーストリア(現チェコ)出身の経済学者・シュンペーターの主張したコンドラチェフサイクルは市場の50〜60年程度の大きな循環を形成し、A・W・ルイスらが指摘した20年のクズネッツサイクルは住宅建築における供給循環を説明しています。英国の経済学者J・キッチンが指摘した3〜4年のキッチンサイクルは平均契約期間が3.7〜4.0年の賃貸市場の動向として妥当性のある説明といえます。

不動産価格変化のモデル

 不動産経済学では4象限モデルによって長期的均衡を説明しています(図3)。第1象限(右上)は横軸にストック量と賃料、第2現象(左上)では、賃料と不動産価格、第3象限(左下)は建設市場、第4象限はストック調整市場をそれぞれ表しています。右上からストックが増えると賃料が下がり、ストックが減ると賃料が上がります。第1象限の賃貸市場で決まった賃料に基づき、第二象限の不動産価格が決まります。第二象限の線の傾きが利回りという事になり、不動産価格によって第三象限の新規建設着工面積が決まります。建設着工面積がマーケットアウトされる建物廃棄量よりも多ければストックは増えて新たな第一象限の水準が設定されます。インフレや市場の期待利回り建築規制などの外部要因によってそれぞれの象限が影響を受けることによって、均衡ラインが変動し、そうした均衡変化がサイクルを発生させる原因となります。

四象限モデル
 
 こうした長短の位相が組み合わさることよって不動産市場のサイクルが構成されています。不動産投資において重要なのは、こうした価格変動の要因を理解した上で、サイクルの先読みをすることです。投資家にとってみれば、サイクルの頂上である時期に不動産投資を行うことは明らかに合理的な判断とは言えません。不動産アナリストの多くは新規着工数や人口流入などからこの均衡点を修正することで投資家にサイクルの動向予測を提言します。サイクルに大きく影響する要因の一つは、市場への投資資金の流入動向です。サイクルの振動幅を大きくさせ、価格のダイナミックな変化を生み出します。

 2008年以降、日本の実物不動産市場は、安定投資を求めて海外投資家を始めとした多くの機関投資家から資金が流入してきています。これはとりもなおさず、日本の不動産価格が底値をつけたという判断にほかなりません。その傾向は、国交省のアンケートなど多くの調査結果からも明らかになっています。購入の時期によって大きく相場が変化する不動産投資で失敗しないためには、価格変動のメカニズムを理解した上で現在の状況をきちんと判断できることが重要ということです。

 

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