不動産テックにおける機械学習の可能性

不動産テックにおける機械学習の可能性

AI

 近年、金融分野でIT関連技術が活用される「フィンテック」が大きな潮流を巻き起こしています。その流れが不動産業界にも来ています。それが「不動産テック」です。今回は不動産テックの潮流の中で、特に注目の集まっている人工知能による機械学習の可能性について、ご紹介しましょう。

第三の人工知能ブーム

 メディアでもここ数年「第三の人工知能ブーム」起こっていると言われるようになっています。飛躍的に進化したIT関連技術によって、あらゆる分野で技術革新が起こっているのです。特に多くの分野に適用できることから開発が進んでいるのが「ディープ・ラーニング」という技術です。
 そもそも人工知能とは、コンピュータに人間の行う複雑な作業、あいまいな状況の判断、創造的活動などを代わりに行わせる技術のことです。人間の脳の働きをそのまま再現することはできませんが、いかにしてそれに近い働きをさせるかという点でコンピュータの誕生当初から開発が続けられています。

 1980年代、第一の人工知能ブームが起こりました。脳科学の進歩により人間の脳の仕組みが分かってきたため、人間の脳神経細胞に似せてソフトウェアを開発すると人工知能を作ることができるかもしれない、少なくともこれまでとは質的に異なるソフトウェアの開発が可能かもしれないという期待からブームが発生しました。ただ実際に人間の脳をモデルとして、それをそのままソフトウェアの開発に活用することは難しいことが分かり、ブームは縮小しましたが、音声認識など現在も使われている技術の一部は、この第一次人工知能ブームに依拠しています。
 第一次人工知能ブームでは、複雑な情報処理を行うだけの処理能力がコンピュータにありませんでした。しかしその後コンピュータの処理能力は飛躍的に向上します。また脳をそのままモデルとして開発するのではなく、人間が言語を認知している仕組みを解明することから研究が行われるようになりました。これは自然言語処理と言われ、その登場が第二次人工知能ブームとなりました。この時代に「かな漢字変換」などの技術が開発されました。
 第一次、第二次人工知能ブームでは多くの技術が開発され、人工知能に関する膨大な研究が積み重なったものの、人工知能そのものの開発には今一歩遠いことが自覚されるにとどまりました。これらの経緯を経て、現在巻き起こっているのが第三次人工知能ブームです。第三次人工知能ブームのコアになっているのが、機械学習なのです。

 人工知能の技術では人間のように新たな知識をいかに学習させるか、というところが非常に重要になります。コンピュータは人間が直感で判断しているようなあいまいな物事や複雑な状況の判断などが難しいと言われています。従来はその物事の判断を行わせる上でのポイントとなる情報や特徴などを、人間が条件を一つ一つプログラミングしていくことで学習させていました。しかし機械学習の一つであるディープ・ラーニングの場合、機械が自動で判断する上でポイントとなる情報を抽出して学び、精度を増大させていく仕組みになっています。
 これは大量の情報処理が可能になり、ビッグデータが多岐にわたって活用される現在だからこそ可能になったとも言われています。

機械学習の活用

 このようにイノベーションの起こっている機械学習ですが、その活用範囲は多岐にわたっています。代表的なものはスマートフォンやパソコンでの音声認識、文字認識機能です。音声や文字は使う人によって大きく形態・音質などが異なります。手書きの文字は使う人によって形や大きさ、文字の濃さなど千差万別ですし、音声も声の大きさ、高さ、特徴が異なります。以前からコンピュータで認識することができるようになってはいましたが、精度の問題が残っていました。しかし機械学習の活用で大きく精度を向上させることができるようになってきています。
 画像認識の分野で日常的に接するのはFacebookです。多くの人が見たことがあると思いますが、Facebookで集合写真などを投稿すると「○○さんをタグ付けしますか?」という文章が出てきます。Facebookの友達の写真のデータから、プログラムが自動で「○○さんっぽい」という情報を抽出し、タグ付けするかどうかという判断を行うのです。
 このように進化している機械学習ですが、しかしディープ・ラーニングを用いた人工知能には、まだ問題点もあります。同時並行で複雑な情報処理を行う手法は進化はしてきていますが、人間の脳を再現するニューラルネットワークを多層化させると計算に時間とコストがかかるのです。また、画像認識やパターンの認識には効果的であるものの、ニューラルネットワークになじまない不得意分野もあります。機械学習は、課題を残しつつ日々進化している途上なのです。

不動産と人工知能

 現在不動産業界でもITを活用する不動産テックがブームとなっています。たとえば気になる物件の内覧をネット上から申し込んで手軽に見に行くことができるサービスなどが行われています。しかし、これらのサービスは従来の技術でも充分に可能なもので、人工知能のイノベーションとは今の時点では関係ないものです。
 今後、機械学習が不動産業界で活用されることが期待されるのは、不動産市場の相場情報についてです。機械学習の利用によって、現時点での賃料だけでなく、将来にわたる賃料の推移や将来時点での不動産価値といった、所有期間全体の価値に関する情報を受け取れれば、より納得のいく取引が可能になるでしょう。
 人工知能・機械学習には、まだ課題も残っています。しかし今後のテクノロジーの進展で確実にカバーされるようになるでしょう。不動産業界で機械学習がどのように展開されるのか、今後も注目する必要がありそうです。

 

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