不動産投資データの新時代の評価方法

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相場データの統計的分析手法

 相場感を可視化し、市場を正確に分析するためには、統計的な手法を用いることが必要です。統計的に不動産の価格を分析する代表的な手法としては、リピートセールス法とヘドニック法が広く採用されています。

 リピートセールス法とはS&Pケース・シラー価格指数や東証住宅価格指数において採用されており、同質性を有する既存マンションの複数回の売買価格を活用し、既存マンションの価格水準の動向を推計します。

 ヘドニック法は、英国政府やHalifax等の英国を代表するモーゲージバンクに採用されており、不動産の価格をさまざまな属性の集合体(属性の束)とみなし、回帰分析によって価格を推定します。

 リピートセールス法では、同一物件の属性変化による集計バイアスや物件のセレクションバイアスが存在し、ヘドニック法では属性の過少定式化バイアスが生じる傾向があります。

 日本においては、アメリカやヨーロッパの不動産のように、同じ建物が何度も取引される取引環境になっていないことに加え、住宅の耐用年数が短く経年劣化が激しく起こることから、リピートセールス法で価格評価を行うことは比較的困難です。他方ヘドニック法では経年変化を変数化することで価格算定式に取り込みやすく、大数の法則※によって信頼度を高めやすい手法であるため、日本においては多くの先行研究が存在しています。

 たとえばマンションは、商品性能がほぼ均質化しているため、大量のデータをヘドニック法によって適格に分析することができます。統計データを持ち出すまでもなく、マンションでは、立地、築年数と㎡数、徒歩分数、向きなどの変数によって、価格のほとんどを説明することができるからです。
※数多くの試行を重ねることにより事象の出現回数が理論上の値に近づく定理

ヘドニック法による不動産相場価格の計算

 私は2009年より、市場分析のために、インターネットに掲載された数多くの不動産情報を収集し続けています。前述のようにREINSのデータはマーケットの取引の一部しか掲載されておらず、実際の取引相場より5%から10%ほど安い価格が記載される傾向があります。また市場の各ポータルサイトのデータは募集価格であるため、取引価格より5%から10%ほど高い価格が掲載されています。取引価格に近いデータを分析するという観点で考えれば、双方を組み合わせて元データとすることが合理的です。弊社ではREINSと市場データの双方を自動収集するプログラムを、クロールという技術をつかって開発し、2014年時点において約600万件の不動産データを集積しています。

 表は、東京23区の単身者物件の分析結果です。分析の精度をたかめるために、東京23区内の築10年から30年、16㎡から30㎡、かつ2階以上のデータに絞って分析しています。

不動産投資データの新時代の評価方法
価格=50736.4+徒歩分数×-460.2+築年数×-707.4+広さ×1755.7

各説明変数が絶対値のままでは相対比較することができないため、3つの指標を定義します。

1. build_rate b.築年/d.切片
 説明変数buildを切片dで割る。賃料に与える築年数の影響度を表す。

2. Time_rate a.徒歩/d.切片
 説明変数timeを切片dで割る。賃料に与える徒歩分数の影響度を表す。

3. Sddep_rate  e.標準偏差/d.切片
 標準偏差を切片dで割る。賃料のばらつき度合いを表す。

 94,072件のデータを分析したところ、23区の単身者の物件は50736.4円からスタートし、徒歩1分ごとに460.2円値下がり、築年一年毎に707.4円値下がり、1㎡ごとに1755.7円値上がりする相場だということがわかります。このデータの当てはまり度合いは64%です。築年数の影響割合(build_rate)は年あたり-1.39%となっており、安定的な下落率であることがわかります。駅ごとに分析すると、その駅ごとの特徴が見えてきます。

駅別の不動産相場の特徴と推移

 たとえば西早稲田を分析すると、築年数の影響割合が1.01%と東京平均より低く、賃料のばらつき度合いも東京平均の20.7%と比較して14.41%と低い数値を示しています。これは学生需要によるマーケットの安定性を説明しているとともに、学生ターゲットのため、賃料の需要の幅が限られているということを意味しています。

 この地域は築年数の影響をあまり受けず安定的に賃料が得られる一方で、バリューアップなどによる家賃上昇には限界があるマーケットであると分析できます。一方で麻布十番では築年数の影響割合は1.97%と高く、ばらつき度合いも36.41%と幅広い賃料設定がされている駅であることがわかります。これは経過年数による影響というよりは、グレードの差によるばらつきが大きいことが原因と考えられ、築浅の高額なグレードの物件から築古の安い物件まで、さまざまな不動産が混在しているマーケットであることを意味しています。こうした駅では逆にリノベーションなど物件のグレードを上げることによって高い賃料を獲得できる受容度が高いエリアであり、キャッシュフローが改善すればキャピタルゲインを狙うことも不可能ではないエリアと分析できます。

 大量のデータをヘドニック法によって分析することで、勘と経験に頼ることなく、適正な相場価格を算出することができるようになります。多くの不動産事業者はいまだに地場賃貸業者へのヒアリング程度で賃料価格を算出していますが、統計データを駆使することによって、より正確性の高い賃料査定をすることが可能となるのです。

賢い不動産投資を始めよう

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2015年1月19日 6:18 PM カテゴリー: 不動産投資

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