今回は、J-REITと賃貸用不動産の比較をして、それぞれの特徴の理解を深めていこうと思います。
J-REITとは何か?
REITは、Real Estate Investment Trustの略称で不動産投資信託のことをいい、日本では、JapanのJを冠して、J-REITと呼ばれています。
多くの投資家から集めた資金で、賃貸用の不動産を購入し、その賃貸収入や売却益を、投資家に分配する金融商品です。
REITの投資対象となる賃貸用の不動産は、オフィスビル、賃貸用マンション、ショッピングセンター等の商業施設、ホテル、物流施設など多岐にわたります。
J-REITの運営会社
JREITを運営している会社には、それぞれに特徴があります。その一部をご紹介します。
日本ビルファンド投資法人
三井不動産をメインスポンサー(株主)とするオフィス特化型のJ-REITです。
ジャパン・リアルエステート投資法人とともに、J-REITとして初めて上場しました。
日本ビルファンド投資法人HP
東急リアル・エステート投資法人
東急電鉄が単独のスポンサーとし、首都圏の商業施設とオフィスビルに投資する複合型のJ-REITです。
後述する渋谷Qフロントなど皆様に親しみのある物件があります。
東急リアル・エステート投資法人HP
ユナイテッド・アーバン投資法人
オフィス、住宅、商業施設、ホテル等多様な形態に投資する総合型のJ-REITです。
メインスポンサーは丸紅です。用途と、投資地域を分散させています。
ユナイテッド・アーバン投資法人HP
実はあのビルも、このスーパーもJ-REIT?
J‐REITが保有している物件には様々なものがあります。
渋谷Qフロント
渋谷スクランブル交差点前にあり、ガラス貼りの壁面と大型の街頭ビジョンが印象的な専門店ビルです。
TSUTAYAやスターバックスなどがテナントです。
渋谷QフロントHP
渋谷クロスタワー
かつては東邦生命ビルと呼ばれた、渋谷駅近くのオフィスビルです。
26歳で夭逝した歌手、尾崎豊さんのモニュメントが併設されています。
渋谷クロスタワーHP
クイーンズ伊勢丹杉並桃井店
食品スーパーのクイーンズ伊勢丹を核に、ユニクロ等の専門店を融合させた近隣型商業施設です。カルロス・ゴーン氏の日産リバイバルプランの一環として売却された工場跡地の一部に、住宅地とともに開発されました。
クイーンズ伊勢丹杉並桃井店HP
皆様が通勤されるオフィスビルや、ご利用されるスーパーマーケットも、その大家さんは、J-REITかもしれません。
J-REITの賃貸用不動産との違い
賃貸用不動産(マンション、アパート等)と比較したJ-REITのメリットとデメリットを紹介します。
J-REITのメリット
①少額投資が可能
賃貸用不動産は、マンション一部屋の購入でも、通常は1,000万円以上かかりますが、J-REITでは、10万円から100万円程度で投資が可能です。
②換金性が高い
賃貸用不動産は、売り出しから入金まで何か月もかかることが多いのに対し、J-REITは株式市場に上場しており、多数の売り手と買い手がいるため、即日の売却も可能で、売却日から4営業日後には換金が可能です。
③分散投資が可能
賃貸用不動産は、通常は購入に1,000万円以上はかかりますので、分散投資するにはそれ以上の金額が必要となります。
J-REITは、10万円から100万円程度で何十もの物件への分散投資が可能です。
④手間が、あまりかからない
賃貸用不動産は、テナントの退出や建物・設備の故障に、自ら対応するか、それらに対応してくれる管理会社を選ばなくてはなりません。
J-REITは、あらかじめ定められた運用会社が、こうした事態にも対応してくれます。
J-REITのデメリット
①意外に価格の変動が激しい時期がある
J-REIT全銘柄の時価総額を加重平均した指数を東証REIT指数といいます。
この東証REIT指数が、約2か月で16%以上下落した時期があります。
2015年6月末に1803.13だった東証REIT指数は、同年9月8日には1509.63をつけ、この間に約16.27%下落しました。
年間の配当利回りが3-4%程度の銘柄が多いJ-REITで、ここまでの下落に耐えるには、かなりの精神的なタフさが求められそうです。
一方、賃貸用不動産の価格や賃料が、2か月程度でここまで下落するということは考えにくいです。
②相続税の節税には活用できない
2015年4月1日以後、基礎控除額の40%もの削減や税率の改正で相続税の対象者と、その負担額が少なからず増加したことは皆さんも知っていると思います。
賃貸用不動産は、土地や建物の価格が、購入額より低く評価されることが多く、相続税の節税に効果があります。特に中古の賃貸用マンションは、相続税の評価額を購入額の三分の一程度まで圧縮できることがあります。
一方、J-REITには相続税の圧縮効果はありません。
③借り入れができない為にレバレッジ(テコの原理)効果がない
賃貸用不動産では、銀行からの借入によるレバレッジ効果が期待できます。
例えば、1000万円の自己資金の全額で、年間家賃60万円の物件を購入すると、年間の収入も60万円、利回りは6%です。(わかりやすくするため管理費等の計算は除外します。)
1000万円の自己資金と2000万円の借入(金利3%)で、先ほどの物件を3つ購入すると、年間の家賃収入は180万円、支払利息は60万円で、年間収入は差し引き120万円。自己資金1000万円の利回りは12%になります。
このように、小さい力で、より大きな効果をもたらすことを、レバレッジ効果(テコの原理)といいます。
しかし、銀行に「J-REITを買いたいので、お金を貸して下さい」と言っても、銀行はお金を貸してくれないので、J-REITには上記のようなレバレッジ効果はありません。
このように比較することで、J-REITと賃貸用不動産の良い点、難しい点があることが分かったと思います。
J-REITで資産の一部を運用し、お気に入りの賃貸用不動産を見つけた時に、J-REITを売却して頭金に充てるのも一つの運用方法かもしれません。