不動産経済研究所『不動産経済マーケットニュース 2014年12月8日』のレポートによると、日本、特に東京都心部の不動産価格はリーマンショック前の水準近くまで回復してきている。活性化する不動産市場の中で、外国人投資家の存在感が増しているといわれるが、彼らが東京の不動産に注目する理由は何か、また、どのような物件を対象にしているかにフォーカスして解説していきたい。
海外投資家に積極的に営業をかける日本の不動産会社
ここ最近、日本の不動産投資に積極的といわれる外国人投資家だが、その主な理由は、「円安により日本の不動産価格が自国や他国の不動産と比べ割安になっていること」と「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う再開発の活性化」の2つが大きいだろう。
外国人投資家の中でも、特に台湾人、香港・シンガポール・マレーシアなどの華僑系投資家層が意欲的である。
JASDAQ上場の投資用ワンルームマンションを販売するアーバネットコーポレーションは、中央区築地で建設中の投資用マンションを台湾法人へ譲渡する予定だが、西新宿で建設予定の投資用マンションについても、台湾法人への譲渡を予定している。
同様に他の不動産各社においても、アジア各地で商談会の開催や駐在員事務所を設けるなどの動きが見られる。たとえば、三井不動産リアルティは香港や台湾で投資用マンションの商談会を開催、野村不動産アーバンネットは海外初の駐在員事務所を香港に開設するなど、外国人投資家の取り組みに積極的だ。
キャピタルゲイン期待の華僑系投資家
外国人投資家の関心の高い投資対象エリアは、オリンピックの開催地である東京である。特に、招致決定後に投資が進んだのは、選手村や各種競技場が周辺に建設される豊洲エリアだ。
また、虎ノ門ヒルズの億ションに代表されるような2億円半ばの価格帯の物件や、従来から人気の六本木、青山、麻布、赤坂エリアも投資が活発である。業界関係者によると、台湾の投資家が虎ノ門ヒルズの一室を購入し、特にテナントを入れるでもなく空室のまま値上がりを待っている事例もあるようだ。高級億ションを買い漁っている華僑系投資家の中には、賃貸経営による利回りよりも値上がり益を期待して買いに入っている者も多い。
華僑系投資家がこれまで投資対象にしてきた国の不動産の価格は、ピークあるいはピークアウトなことが多く、これらとは対照的に、ここ数年で底打ち感のあった日本の不動産市場は魅力的に見えるのだろう。さらに、東京オリンピック招致というプラス要因や円安という要因が加わってキャピタルゲインが期待できる環境となり、投資意欲が旺盛になったというわけだ。
インカムゲイン期待の欧米諸国の投資家
もちろん、インカムゲインに期待した海外投資家もいる。特に多いのは、欧米諸国の外国人投資家のようだ。彼らが日本の不動産に注目する理由は、他の国の不動産に比べて利回りがよいからである。
日本の不動産の利回りの優位性は、世界の主要都市に立地する同規模のマンションの「平米単価」と「賃料利回り」を比較したデータを見てみると分かりやすい。野村総合研究所『金融ITフオーカス 2014年10月号』によると、ニューヨーク、香港、パリといった都市では、平米単価は約20,000ドル、賃料利回りは4%程度となっている。
一方、東京は平米単価約12,000ドル、利回りは5.5%と高いパフォーマンスになっている。このように実際に、平米単価と賃料利回りを比較してみると、外国人投資家が「日本の不動産は安い」と言うのは納得感がある。
インカムゲインを求めた欧米諸国の海外投資家。そして、先ほど紹介したキャピタルゲインを求めた華僑系の海外投資家。この2者が国内の不動産市場の活性化にひと役かっているわけだが、今後、円安が進むようであれば、不動産取得にさらに拍車がかかり、それにより、さらなる活性化が期待できる。また、リーマンショック前に流行った金利と不動産利回りの差であるイールドギャップを求めた投資も再燃する可能性もあるだろう。