地方銀行の不動産融資に変化

地方銀行の不動産融資に変化

地方銀行の不動産融資に変化

日本経済新聞が全国の地方銀行を対象に、投資用不動産向け融資(アパートローン)の調査を行いました。その結果、「今後、積極的に融資を伸ばす地銀はゼロ」という事実が判明しました1

担保評価などの審査が厳しくなり、銀行の融資は絞られる方向なのは間違いないでしょう。銀行の融資姿勢に変化が見られる今、不動産市場と銀行融資の関係を見ていきたいと思います。

不動産価格は高止まり

一般財団法人日本不動産研究所が公表している「不動研住宅価格指数」の動きを見てみましょう。以下の図は東京都の既存マンション(中古マンション)の価格の推移です。なお、左軸の数値は2001年1月の価格を100とした指数値です。


(一般財団法人日本不動産研究所のデータをもとに当社作成)

この図からは、2013年以降はマンション価格が上昇していることが分かります。ただし、2017年から横ばいとなっています。価格が高止まりして、これ以上は上がりにくい状況とみることができます。

銀行の融資姿勢は慎重

日本銀行が公表している「貸出先別貸出金」のデータから、「個人による貸家業」の新規貸出額を見てみましょう。


(日本銀行のデータをもとに当社作成)

この図からは2013年以降は新規融資が増えていることが分かります。ただし、2017年以降は、新規融資は出ているのですが、金額は減る方向です。

不動産価格と銀行融資

不動産価格と銀行の融資の関係を見ていきます。さきほどの2つのグラフを重ねると興味深いことが分かります。


(一般財団法人日本不動産研究所と日本銀行のデータをもとに当社作成)

2017年以降は、新規融資の勢いが鈍化する中で中古マンション価格は横ばいで推移しています。今年、2018年はスルガ銀行による「かぼちゃの馬車」への不正融資が問題となりました。冒頭の日本経済新聞の報道にあるように、今後の新規融資は抑制的になっていくでしょう。
新規の融資が絞られていくとすると、マンション価格はやがて下落に向かうと思われます。今後の銀行の融資姿勢に目が離せません。

今後の方向性

スルガ銀行の不正融資などを受けて、金融庁は銀行がアパートローンを適切に審査・管理する態勢があるかを点検する方針を固めました。金融庁の姿勢を受けて、銀行は案件を選別していくと思われます。
銀行の融資姿勢が厳しくなる状況では、割高な賃料にもとづく価格設定や、賃料や入居率を盛ったうえでの返済計画では今後は融資を得にくくなるのは間違いありません。

不動産事業者にとっては、今後は賃料や入居率や価格などについて、銀行や顧客に対してこれまで以上に納得性の高い資料の提示が必要になるでしょう。逆に考えると、納得性の高い資料を提示することで他社との差別化が図れ、顧客に選ばれる可能性も高まります。

不動産向け融資が減速することは、大きな環境変化です。中には環境変化についていけない事業者も出てくるかもしれません。しかし、環境の変化をチャンスととらえる事業者は、冬の時代を乗り越えることができるでしょう。

Gate.は環境の変化をチャンスととらえる事業者を支援していきます。

不動産市況カテゴリの最新記事