貸借人による物件の模様替えが認められている国 賃貸マンション制度の国際比較

Hand painting wall in apartment (写真=iStock/Hand painting wall in apartment)

賃貸マンションの制度は、それぞれ国によって大きな違いがあります。日本独自のもの、その国特有のもの、共通するもの、さまざまです。今回は賃貸マンションの制度や慣習について国際比較してみます。

日本

まずは我が国、日本の制度から見てみましょう。日本の賃貸マンションに対する制度は、従来から慣習的に敷金・礼金・更新料を取られるのが一般的になっており、敷金・礼金は2ヶ月分程度であることが多いです。また2年、3年といった期間で契約し、その間は物件の賃料が値上がりしても、家賃は据え置きになります。保証人が必要ですが、最近では保証人不要の物件も増えてきました。敷金・礼金ゼロという物件も見かけますが、その分の金額は家賃に上乗せされていたり、敷金はないが退去時に原状回復費を数万円取られるということもあります。更新料は不動産会社へのサービス料として支払う慣習ですが、これも非合理的なものと考えられており、消費者からの反発もあります。

アメリカ

アメリカの制度はどうなっているのでしょうか。アメリカの場合も敷金・礼金の制度はありますが、日本とは異なります。敷金は原状回復費と保証金としての役割を持っており、退去時に回復費を引いた分の金額が返金されます。金額は家賃の2ヶ月分程度が一般的です。礼金は通常のアパートなどではなく、高級マンションや一戸建てを借りるときに、家賃1ヶ月分程度とられることがあります。

アパートは人気な投資対象であるため、管理会社の役割が強いというのがアメリカの特徴です。契約者は大家と直接ではなく、管理会社と契約を結ぶのが普通で、契約社会であるアメリカでは管理会社と貸借人の関係は非常にビジネスライクです。トラブルが訴訟に発展することも多くあります。ただし、アメリカでは意外にも保証人は必要なく、そのかわり収入やクレジットで信用力が審査されます。契約期間は6ヶ月〜12ヶ月であることが通常ですが、途中退去した場合は契約通り残りの期間の分の家賃も支払わなければならないことがあります。全体の特徴としては契約重視の関係で、日本のように慣習で行われている部分は少ないと言えます。

ブラジル

日本の裏側にあたるブラジルの制度は、貸借人には少し不利なものになっています。敷金・礼金にあたるものはありませんが、入居時には保証人の役割が非常に重視されます。保証人は親族であることが多いですが、不動産を保有している、会社のオーナーであるといった信用力の高い人である必要があります。その保証人からの推薦状がなければ契約できないケースもあります。保証人をつけることができない人は、家賃の3ヶ月分程度を支払うことで契約できることもあります。

韓国

韓国はどのような制度になっているのでしょうか。韓国の制度は日本と大きく異なるどころか、世界的に見て珍しいものになっています。その制度の名前は「チョンセ」と言います。この制度では、貸借人は入居するときに契約上の期間分の金額を一括払いし、退去時にはそのチョンセから家賃を差し引いた分が返金されます。つまり、チョンセは保証金と家賃の一括払いという2つの役割をもったものなのです。チョンセを預ける代わりに保証人は不要で、毎月家賃を支払う必要もないと言うことです。

韓国では日本のような賃貸制度はなく、個人が投資対象として購入した分譲マンションが借家として流通しているのが実態です。チョンセの制度は特徴的ですが、入居時にそれほどの大金を支払うことができないという人も多いです。そのような人は月払いになります。また、賃貸マンションに複数世帯(その多くが親族)が同居するというのも、韓国の賃貸事情の特徴です。これだけ近い国でも制度は大きく異なるものなのですね。

中国

同じくアジアの国である中国はどうでしょうか。中国の賃貸制度は日本とは正反対で、貸借人よりも貸し主の力の方が圧倒的に強いです。また、契約上のルールよりも慣習や貸し主の発言の方が強いことも多く、契約と違うことを貸し主から主張されても文句が言えないことがあります。

入居時には3ヶ月分の家賃と1ヶ月分の保証金を前払いするのが一般的で、これは日本の敷金・礼金と似ています。ただ最も大きく異なるのは、契約は1年ごとですが、家賃は据え置きではなく、物件価格・賃料の値上がりと共に家賃も値上がりしていくということです。最近では、以前ほど中国の不動産市場は価格の上昇が激しくはありませんが、数年前では去年と今年で家賃が何倍も違うというケースもあったようです。

ドイツ

ドイツはアメリカ以上にルール・契約重視という面が強いです。ドイツでは敷金・礼金も制度として確立されているだけでなく、景観を維持するためにパラボラアンテナは設置してはいけない、洗濯物は外に干してはいけないなどのルールも明文化されています。このようなルールを守ることで、観光資源になるほどの景観が維持されているのです。いかにもドイツらしいですね。

また、契約重視の文化であるため、貸借人と家主の間でのトラブルが訴訟になることも多くあります。そのため貸借人が弁護士保険に加入できるようにするための組織が存在します。これは世界を見渡しても珍しい制度です。

フランス

ドイツのお隣フランスの制度は、日本に近いものになっています。保証人は必要ではありますが、経済的な信用力が求められているため、銀行に一定額の預金があることを示せばいい場合もあります。礼金、更新料はありませんが敷金はあります。しかし敷金は家賃2ヶ月分以内と決まっているため、それ以上に高くはなりません。また契約更新時に家主側から拒絶することに対しては厳しく規制されており、貸借人の権利が保護されています。

フランスの他国と比べて珍しい点は、貸借人による物件の模様替え・改装が認められているということです。日本ならば改装自由の物件など、探してもなかなかありません。フランスの面白いところです。

ニュージーランド

最後に太平洋に浮かぶニュージー−ランドの制度を見てみましょう。ニュージーランドはブラジルのように、入居時に保証人による推薦状がなければ入居することができません。入居時には一定額の保証金が必要となりますが、保証金は退去時に返金されます。これらを見て分かるように、入居時のハードルが高いのがニュージーランドの特徴です。

もう1つ特徴があります。それは民間の不動産会社が存在しないということです。これは珍しいですね。民間の不動産会社がないため公的な機関が売買を仲介しています。そのため保証金は家賃数ヶ月分を期間に預けることになっています。

 

今回は世界各国の賃貸マンションの制度を国際比較しましたが、いかがだったでしょうか。国や地域が違えば制度は異なり、近い国同士でも大きく制度・慣習が異なることがよく分かりました。不動産投資はどんどんグローバルなものになっていきますが、このような契約上の制度を知らないとトラブルの元になります。これをきっかけにさらに制度を調べ、比較し、より投資しやすい国を探してみるのもおもしろいかもしれません。

賢い不動産投資を始めよう

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2016年6月12日 8:00 AM カテゴリー: 不動産投資, 事例・実践

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