現状
2016年11月15時時点)米国大統領選挙は、共和党候補のドナルド・トランプ氏が優勢です。
米国CNNニュースの速報では、トランプ候補がフロリダ、テキサス、オハイオ州などの大票田を制し、民主党のヒラリー・クリントン候補を押さえています。クリントン候補は大票田のカリフォルニア、ニューヨーク州を勝ち取りましたが、選挙人の総数では、トランプ氏を下回っています。
トランプ候補の勝利が濃厚となる中、東京の株式市場では日経平均が1000円を超えて下落し、為替市場では105円台から101円台へ急速に円高が進むなど、金融市場で混乱が生じています。
アジア市場に目を向けても、中国、香港、台湾、ASEAN諸国、インドなどの株式市場は軒並み下落し、全面安の様相を呈しています。
以下は、トランプ候補が米国大統領になる前提で日本の不動産市場への影響を検討します。
当面、不透明さは継続
円高の進行は慎重に見ておきたい要因です。外国人投資家は、これまで積極的に日本の不動産を購入してきました。今回のトランプ候補の勝利による円高を受けて、外国人投資家はリスクテイクに慎重になりそうです。
トランプ、クリントン両氏は選挙戦の間、お互いのネガティブ・キャンペーンに終始し、政策論争は二の次にしてきました。そのためトランプ大統領となったときの政策には不透明感が漂っています。トランプ大統領がどのような政策を推進するのかを見極めるまでは、グローバルな投資家は、しばらくは投資に慎重になる可能性は高いでしょう。
リスクオフの円高が進むようですと、一部の外国人投資家は日本の資産で利益確定の売却を行うかもしれません。しかし、それは国内の不動産投資家にとって絶好の機会となりそうです。良質な物件が相場より安い価格での放出もありえるからです。
世界的な金融緩和は継続・強化
米国の大統領の交代は世界経済に与える影響も大きく、しばらくはリスクの取りにくい状況になりそうです。一方で、経済のファンダメンタルズに目を向けると、米国では雇用も増え、賃金の伸びも加速したことから、12月の利上げが視野に入るほど米国の経済は堅調です。また、力強さには欠けるものの日本の経済も底堅さが見られます。
トランプショックによって、米国株式市場が想定外に崩落するといった事態に陥らない限り、米国の利上げの可能性は高く、金利差に着目すれば為替がどんどん円高に行く状況でもないと思われます。また、日銀が緩和姿勢を強化する可能性もあり、日米の金利差、金融政策の方向性からは、円高も過度に懸念する必要もないと思われます。
日本の不動産市場
米国大統領選挙の結果が、日本の不動産市場に与える影響は直接的には小さいと考えます。これまでの日本の不動産市場を見るに、不動産の値動きをもたらすのは、金融の緩和や、その逆の総量規制や貸し渋りといった、国内の金融調節だからです。
現在の状況では日本の当局が金融を引き締めるとは考えにくく、むしろ、長期、低金利での資金調達がしやすい環境になる可能性の方が高いと考えます。不動産投資の点では、ローンの調達金利が低くなる期待が持てます。トランプショックの影響を過度に心配する必要はないでしょう。
まとめ
米国の大統領選挙は、事前の予想に反しトランプ候補の勝利となりそうです。
その結果を受けて、国内やアジアの株式や為替市場は混乱に陥っています。しかしながら、長期的な視点で投資を行う不動産投資家としては、目先のショックに惑わされることなく、マクロ的な経済の状況や金融緩和の状況に目を向けることが重要でしょう。
投資環境に不透明さが増す中だからこそ、冷静に現在と将来を分析するスタンスが大切です。