不動産価格下落のウソ―価格変動の要素を正しく理解していますか?

不動産価格下落のウソ―価格変動の要素を正しく理解していますか?

516490251(写真=Thinkstock/Getty Images)

不動産価格が下落する要因

 不動産投資の現場で最もよく直面する否定的な意見は、人口に関するものです。「日本は空室率が既に13%、人口がこれから減少していくので、不動産の価格がさらに下がる。」不動産価格の将来性とともに、このコメントをする評論家やブロガーは、明らかに経済学を知らない人々といえるかもしれません。

 アメリカや日本の数多くの先行研究の結果から、人口は確かに不動産価格のマイナスのファクターであるとされています。それ自体は間違ってはいないものの、他の要素が一切変わらないという前提においてのみ、成り立つロジックなのです。研究では前提条件を明示した状態で分析しないと、結論を導き出すのが著しく困難になります。ゆえに、他の変数が一切変わらない場合の影響度という分析をするのです。ところが、現実の不動産市場では、政策的にも需給的にも、価格を決定する要素が戦略的に柔軟に変動していきます。多くの変数が変動することで市場の圧覚を調整していくのです。供給過剰となれば、利潤で供給調整され、過剰な需要は市場への資金で調整されます。人口以外の要素が変わらないということは、現実にはあり得ない仮定であり、事実、日本では過去60年に大きな4回の不動産バブルと崩壊がありましたが、その間に人口の減少はありませんでした。不動産価格は人口のみでは決まらない、という何よりの証拠です。

 ハーバード大学教授で米国大統領経済諮問委員会(CEA)委員長であったグレゴリー・マンキューが1989年に発表した論文において「アメリカの不動産はベビーブーマーが不動産を買わなくなるため、2007年までにアメリカの不動産価格が47%下落する」と指摘しました。当時のアメリカの景気は、ある意味不動産によって支えられていたので、国内の経済評論家の間で大変な議論となりました。しかし、20年たってもそのような状態にはならず、アメリカで空前の住宅バブルが起こったことは、記憶に新しいのではないでしょうか?

 日本でも今、同じようなことを指摘している評論家がいます。経済学の先行研究や不動産の歴史を少しでも調査していれば、若者が不動産を買わなくなるから不動産の価格が下がる、不動産が余るから不動産は安くなるなどの指摘は、誤りだとわかるはずです。不動産のマーケットが移り変わる中で、市場をコントロールする要素はそれぞれ大きく変動してきました。今後、不動産を取り巻く環境要素が一切変わらないと仮定することは、ナンセンス以外の何物でもありません。

不動産価格をコントロールする要素とは

 不動産価格は多くの要素から成り立っています。一つの要素は市場の「需給のバランス」です。現在、首都圏近郊の新築戸建物件の販売は非常に苦戦を強いられています。千葉や埼玉の一戸建てが投げ売りをしている現状から「やはり不動産の価格は下がるのだ」と考えてしまうのが、経済学を学んでいない人の発想なのです。投げ売りをするということは、プレイヤーにとって利潤の取れない市場になるということですので、プレイヤーが撤退し供給も減少します。不動産は古くなればマーケットアウトし、供給が少なくなれば市場の不動産ストックも減ることになります。多くのコラムや評論では、現在余剰がでているのに、これからも供給され続けるから、さらに余って価格が下がる、と指摘していますが、儲からない市場に、いったい誰が供給するというのでしょうか。どのくらいのボリュームが供給されれば、今の空室率がさらに上昇する計算なのでしょうか。そうした要素を考慮し、需給バランスの推移予測を加味したコメントは、今まで見たことがありません。

 不動産の価格を決めるもう一つの大きな要素は不動産市場への資金の流入量です。なぜ日本では戦後4回も不動産の価格が大きく上昇したのでしょうか。また、ベビーブーマーが購入しなかったはずのアメリカで、なぜ不動産の価格が歴史にないレベルで上昇したのでしょうか。もっと言えば、住む人のいない物件を作り続けている中国で、なぜ不動産の価格が上昇しているのでしょうか。

 それらの疑問への答えは、不動産の価格をコントロールしている最大の要素が、不動産市場に流れる資金の流入量なのだということです。図は日銀の調査レポートですが、不動産の地価の伸び率が何によってきまっているかの要因分析をしたグラフです。

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出所:地価とファンダメンタルズ―加重平均公示地価指標を用いた長期時系列分析―

 不動産の価格の変動要因が人口でないことは一目瞭然ですが、もっとも大きい要素はば赤と黄色の要素となります。赤は市場の将来期待値、黄色は期待値分を超えた貸出要因です。明らかに市場の期待値が高まることで貸し出しが増え、不動産価格の押し上げ要因になっていることが見て取ることができます。EC項は過去の値動きですが、期待値を超えた過剰な貸し出しが増えると、過去の値と期待値がマイナスファクターに振れています。

 不動産の価格を決める要素が調整されることで、不動産の市場価格にボラティリティが生まれることになるのです。いつの時代でも不動産自体のニーズがある以上、経済合理性のある取引がなされるマーケットは残っていきます。不動産実務家及び投資家には「否定のためにする批評」そのものを批評できる前提知識が必要ということです。

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