不動産テックが解消する「情報の非対称性」と投資家のメリット

不動産テックが解消する「情報の非対称性」と投資家のメリット

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不動産業は「情報の非対称性」があるため、長らく不動産業者に有利な状況でした。
購入者は物件についてあまり知らないけれど、業者は詳細に知っていることが「情報の非対称性」です。業者側は伝えたい情報を積極的に開示しますが、伝えたくない情報は開示が義務付けられている事項を除いては、聞かれなければ教えないスタンスを取りがちです。その結果として個人が受け取る情報は良い情報に歪んでしまい、購入してみて、あれも、これも・・・と後から気が付くことが出てきます。

ところが、これまで情報化が遅れていた不動産取引の現場に、情報とテクノロジーの波が押し寄せているのです。この動きは投資、実需を問わず、不動産の購入者にとってメリットが大きいと言えます。

アカロフのレモン市場

経済学に「アカロフのレモン市場」という問題があります。
アカロフとは米国の経済学者、ジョージ・アーサー・アカロフ氏の名前です。アカロフ氏は「情報の非対称性」に関する研究で2001年ノーベル経済学賞を受賞しています。レモン市場とは、米国で中古自動車市場を表す俗語です。レモンとは質の悪いもの、粗悪品を意味し、英語で “I bought a lemon” と言えば、「あぁ失敗した、ろくでもないものを掴んでしまった!」というニュアンスがあります。米国では中古車の流通が多く、なかには値段以上の価値のある掘り出し物もあれば、値段相応の車、そして、値段に見合わない車もあります。

問題なのは、購入者にとって、どの中古車が値札に見合う価値があるのかが分からないことです。

値札は見えているのですが、それに見合う価値があるのかは購入者には分かりにくいものです。そのような市場で粗悪品が多く出回ると、購入者はその市場で適切な値段で取引をしなくなります。粗悪品を買ってしまうかもしれないので、保守的な値段でしか買いたくないと考えるからです。その結果、その市場には価値のある、したがって値段も高い優良な中古車は取引されにくくなり、やがて、値段以下の価値しかない粗悪品(レモン)しか出回らないことになります。それがアカロフのレモン市場です。レモン市場化する要因が、購入者が中古車の情報をほとんど知らない、業者は知っているという「情報の非対称性」です。

不動産の価格と価値の関係

値札は見えているのですが、それに見合う価値があるのかが購入者には分からない。
それは、なにも米国の中古市場に限った事ではありません。不動産の取引も、骨董品や美術品の取引も似た側面があります。たとえば、中古マンションです。2000万円の売り出し価格は見えているのですが、その物件は2000万円以上の価値のある掘り出し物かもしれませんし、価格に見合う価値かもしれませんし、実際は1500万円ほどの価値しかないかもしれません。

不動産を購入するときに知りたいのは、いくらで取引されるかといった値段ではなく、いくらの価値があるのかという情報でしょう。Gate.の不動産テックは、不動産にいくらの価値があるのかといった情報に光を当てます。

不動産の価値とは

では、不動産の価値をどう計算したらいいでしょう。不動産の価値を評価するには、主に3つの方法があります。ひとつ目は、「取引事例比較法」です。近隣で似たような条件のA物件が2000万円、少し小さなB物件が1800万円、築年数がやや新しいC物件が2300万円。だから、この物件は○○万円。このような評価です。取引事例比較法のメリットは、いま現在取引されやすい価格を示すことです。逆にデメリットとしては、比較事例による評価はプライスを追っているのであって、その不動産が持っている本質的な価値を表しているのではないことです。バブルの時期や金融危機のときは、価格が大きくぶれがちです。

2つ目は、「原価法」です。もしその不動産を更地で買って、建物を建てたとしたら、いくらのコストで再現できるかという評価法です。再調達原価の価格を出して、そこから経年の減価分を差し引きます。

3つ目は、「収益還元法」です。不動産が将来に生み出す利益(キャッシュフロー)から不動産の価値を評価する方法です。不動産を「将来収益をもたらす資産」としてとらえる評価法です。収益還元法は、不動産の資産性に着目した評価法であり、不動産の本質的な価値を評価するのに適した方法です。

人工知能によるキャッシュフロー分析

これまで、個人向けの不動産取引ではIRR(全期間利回り)が用いられず、表面利回りが一般的でした。また、収益還元法で不動産の「価値」を評価することよりも、取引事例で「価格」を追うことが一般的でした。

この2点は、同じ理由に根差しています。将来のキャッシュフローを見積もるのが難しい、あるいは、面倒だということです。しかし、将来のキャッシュフローを見積らない限り、その不動産の本質的な価値は不明なままです。不動産の購入者が、購入しようとしている不動産の値札はわかるものの、その不動産の価値は見えない状況は、冒頭のレモン市場(米国の中古自動車市場)と同じです。

この状況をGate.は変えていきます。
不動産が将来に生み出すキャッシュフローは、一般的には経年によって減っていきます。その減り方は不動産の立地、規模、構造などによって異なります。Gate.では、それらを不動産ビッグデータを用いて分析することにより、合理的に将来のキャッシュフローを見積もります。

いまの妥当な賃料はいくらか、10年後の賃料はいくらになりそうか。20年後に売却するとしたらいくらくらいで売れそうか。そういったことに答えていきます。不動産テックは、購入者と不動産業者との間にある情報の非対称性を弱めます。購入者は、不動産の価値にもとづく判断ができるようになるでしょう。

不動産テックの進展は、大きな目で見れば不動産取引の活性化を招き、購入者、不動産業者の双方にとってメリットの大きな動きと期待できます。


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