個人で資産運用して老後資金を準備する時代はすでにはじまっています。不動産投資の中でも初期費用が抑えられ、安定的に収入を得ることができることで人気の中古マンション投資ですが、成功する人がいる中で失敗して多額の損失を抱えたり、すぐに撤退してしまう人も少なくありません。中古マンション投資で失敗してしまうのはどのような人なのでしょうか。
中古マンション投資で失敗しがちなケース
中古マンション投資で失敗しがちなのは以下のようなケースです。
①表面利回りのみを見て収益性を判断したため利益が出ない
②人に勧められるままに購入したが、悪い業者だったことが判明
③多額の管理費、修繕費が必要となった
④計画通り入居者が増えず空室率が高くなった
⑤入居者の滞納が多い
⑥多額のローンを組んでしまい、毎月現金の持ち出しがある
これらの原因は投資開始時に入念な計画・準備を行なわなかったということに集約されます。多くの失敗は「リスクの計算を行なう」「正確に利回り計算を行なう」「正確な資金計画を立てる」という方法で防ぐことができます。中古マンション投資に失敗した3人のケースをシミュレーションしてみましょう。
リスクへの対応に出費〜Aさんのケース〜
不動産投資には多くのリスクがあります。主なものは「家賃下落リスク」「空室リスク」「物件価格下落リスク」です。そして以外と大きくかかってしまうランニングコストとして「修繕費」「税金」などがあります。これらのリスクの計算をしっかり行なわなかったAさんのケースを見てみましょう。
・物件価格:1000万円
・頭金:250万円
・借り入れ:750万円(20年ローン)
・家賃:10万円
Aさんの購入した物件は上記のようになっています。20年ローンのため、金利を4%とすると毎月の返済は約4万5500円です。家賃収入から返済額を引くと、単純計算で毎月5万4500円が手元に残ることになります。表面利回りを計算すると6.5%となります。もしも同じ物件を3部屋保有していれば、毎月の収入は16万円を超える計算になります。Aさんは不動産業者からこのような説明を受けて、中古マンション投資をはじめることにしました。
しかしこの計算には、修繕費の上昇、家賃の下落、空室率の上昇などが含まれていません。実際にAさんの保有する物件は当初は修繕積立金が1700円だったのですが、それが4倍近い7500円にまで引き上げられてしまいました。また入居の募集をかけても入居者が現れず、家賃を10万円から8万5000円まで引き下げることになりました。そのため、毎月の手元に残るお金は5万4500円から3万2000円にまで引き下げられることになります。実質利回りを計算すると、3.8%と少なくなります。
修繕積立金とは、マンションの共用部分の修繕などに使うための積立金で、購入後に引き上げられるケースも少なくありません。また家賃下落のリスクも考慮せずに計算していたため、利回りは当初よりもずっと少ない3%台まで下がってしまいました。今後も修繕積立金が増加することや空室率が上がる可能性があるため、Aさんはこの物件を手放してしまいました。
このように、最初から予想される実質利回りを厳密に計算して資金計画を立てないと、失敗してしまう可能性があります。Aさんのケースでは、現状では3.8%とまだ利益がありましたが、場合によっては赤字になることもあり得るのです。
ローンの借り過ぎ〜Bさんのケース〜
不動産投資の中でも、中古マンション投資は新築マンションの投資に比べて、少ない資金ではじめることができるという利点があります。しかし少ない資金からはじめられるとは言っても、数百万円単位のお金は必要となりますので、多くの人はローンを組むことになります。ローンをかけるということはレバレッジをかけるということであり、それだけリスクを抱えることにもなります。
Bさんは以下のような条件で都内のファミリー向け中古マンションを購入し、不動産投資をはじめました。
・物件価格:3000万円
・頭金:0円
・借り入れ:3000万円(30年ローン)
・家賃:18万円
家賃は18万円と高いですが、頭金をゼロ円にして全額ローンにしたため、30年ローンでも1年での返済額は100万円、金利を4%とすると毎月の返済額は約14万3000円で、毎月手元に残るのは3万7000円となる予定でした。成功すればさらに物件を購入し、毎月の収入を増やしていこうと考えていました。資金の手出しはゼロで毎月3万7000円、1年で44万を超える収入が得られるのですから、メリットしかないように思えます。
しかしここに初心者が投資に失敗する落とし穴が存在しています。多くの場合、ローンは固定金利ではなく変動金利になっています。そのため金利が上昇すれば、毎月の返済額も上昇し、一気に収入が減ってしまうのです。Bさんは当初4%で返済していましたが、経済情勢の変化から、途中から6%に金利が上昇してしまいました。毎月の返済額は約18万円となりますので、家賃と返済額が打ち消し合って手元に残るのはゼロ円です。さらに家賃の下落や空室率の上昇があると、収入が減る一方で返済額はこれまで通り支払わなければならないため、完全に赤字になってしまいます。
このケースから、頭金をゼロ円にして投資をはじめることには大きなリスクがあることが分かります。投資をはじめる際には、どの程度自己資本を準備し、どの程度をローンにすればイレギュラーな事態に対応できるか、綿密に計算しておくことが重要です。
例えば、もしもBさんが2割の自己資金を準備してローンを2400万円にしていれば、毎月の返済額は金利4%で11万4500円、金利が6%に上昇しても返済額は14万4000円であり、ローンを返済しても余裕があります。空室や家賃下落があっても赤字になる可能性は少なくなります。
安すぎる物件に投資〜Cさんのケース〜
Cさんも中古マンション投資の初心者でしたが、少ない自己資金からはじめて、成功したら少しずつ保有物件を増やしていこうと考えていました。そのため、まずは失敗しないように郊外の安い中古ワンルームマンションを購入しました。
・物件価格:700万円
・頭金:300万円
・借り入れ:400万円(20年ローン)
・家賃:6万円
家賃は6万円と少ないですが、物件価格は700万円とかなり安いです。毎月の返済額は金利4%で約2万4000円、手元に残るのは3万6000円と計算していました。表面利回りは4.3%と低いですが、まずは堅実な投資からという思いから購入に踏み切りました。
購入時は立地によさから入居率は高いマンションと聞いていたのですが、近隣に新築で価格帯も競合するマンションが建設されたため、入居率が下がってしまいました。安さから旧耐震性の物件を購入した点もデメリットとなったようです。ここ5年で、入居者がいたのは36ヶ月でした。
返済が終わる20年間で、空室率が現在の状態から下がらないとすれば、家賃収入も3分の2に落ちてしまいます。手元に残るお金は平均すると1万6000円少なくなってしまいます。今後さらに空室率が上がってしまうと、収入はさらに少なくなります。中古マンションのため今後の修繕費の増大も不安要因です。しかし最初に300万円も頭金で支払ってしまったため、Cさんは手放すこともできず、空室率を下げるために頭を悩ませる毎日になってしまいました。
このように郊外の安い物件は、初心者でもはじめやすいというメリットはあるものの、競合する物件が近隣にできた場合に、空室率の上昇や家賃の下落リスクが高いこと、また家賃収入が少なく、これらのリスクに対応するだけの余裕がないというデメリットもあるのです。Cさんの場合は、そもそも投資用物件としての価値があるかどうかの判断を誤ったことが、失敗の原因にあることが分かります。
中古マンション投資で気をつけなければならないのは?
Aさん、Bさん、Cさんは共に投資初心者でありながら、資金面での計算や物件選びの見通しが甘かったことから、失敗につながってしまっていることが分かります。知識や経験の少ない初心者だからこそ、最初は入念な計画・準備が必要なのです。
中古マンション投資で気をつけなければならないポイントをまとめると、以下のようになります。
①管理費・修繕費、税金、主要なリスクまでも含めて実質利回りを計算する
②自己資金を多く、レバレッジは低くしてはじめる
③物件の安さや利回りの高さだけでなく、物件の価値、立地、不動産業者の情報の正確さまで総合的に見て判断する
これらのポイントを守って、投資に失敗しない中古マンションを見つけましょう。