2020年の東京オリンピック開催を受けて、首都圏の不動産市場は過熱しています。過熱しているのは投資家だけでなく、大手不動産デベロッパーは競争するように大規模な再開発計画を実施しています。今回は2020東京オリンピックまでの、主な不動産再開発計画をまとめました。
東京都心エリア別の再開発計画
■ 渋谷駅とその周辺エリア
2020東京オリンピックに向けて、もっとも大規模な再開発の1つとなることが予想されるのが渋谷駅の再開発計画です。渋谷は新宿と共に、政府から「特定都市再生緊急整備地域」に指定されており、自由度の高い都市計画を行うことが可能です。そのため大規模な再開発計画が複数進行中です。
渋谷駅には3つのビルが建てられる予定で、東口には地下7階、地上46階建ての高層ビルが、中央棟は地下2階、地上10階建て、西棟は地下5階、地上13階建てのビルが建築予定です。もっとも高くなる東棟は地上228メートルと、渋谷ヒカリエよりも45メートルも高くなる予定になっています。渋谷駅の再開発は、50年、100年に一度と言われるほどの大規模なものです。東棟は、低層階は大規模商業施設に、中層階は交流施設、高層階はオフィスが入る予定です。東棟の完成は2019年を予定しており、2020年のオリンピック開催時には渋谷のシンボルタワーになるとされています。西棟、中央棟はオリンピック開催までの完成は予定しておらず、2027年完成予定で、リニア中央新幹線の開業と同時期になることが考えられます。
東棟の特徴は「屋外展望施設」です。これは東棟屋上に設置されることが予定されている広場で、前面ガラス張りのラウンジになる予定です。広さは約3000㎡で、渋谷駅東棟の集客に期待できる施設になりそうです。
さらに、渋谷駅では利便性向上のための方策が、他にもいくつかあります。たとえば駅街区と道玄坂方面をつなぐデッキを整備し、移動する歩行者の利便性を高めるプランも実施されています。また渋谷川広場として2カ所の広場の設置も予定されています。さらに東急プラザは、新東急プラザとして2018年に生まれ変わる計画になっており、地下5階、地上18階の大型商業施設として、渋谷西口の新たな玄関口となる予定です。2018年完成予定で、東京オリンピックの観光客の取り込みが期待できます。
(渋谷:109から見えるヒカリエ)
渋谷駅で再開発が予定されているのは、駅ビル3棟だけではありません。渋谷駅南にもビルが建設される予定です。旧東横線渋谷駅ホーム・線路跡地とその周辺に建設される計画で、地上35階、高さ180メートルの高層ビル、低層階には商業施設、中層階はホテル、高層階はオフィスが入ります。「渋谷駅南街区プロジェクト」としてすでに開始されており、高層ビルは2018年に完成予定です。これも渋谷の新しいシンボルとなりそうです。
■ 新宿駅とその周辺エリア
渋谷と共に、新宿エリアも大規模な再開発計画が進行中です。新宿駅の再開発で主要なものは、新宿駅南口の再開発計画です。新宿駅は、西側は超高層ビルが建ち並び、東側は伊勢丹などの商業施設が建ち並んで栄えていますが、それに比べると西側はいまいち盛り上がりに欠けたエリアと言われることがあります。しかし、今回は南口で大型の「新宿駅南口ビル」プロジェクトがはじまっています。
新宿駅新南口ビルは地下2階、地上33階建て、延床面積11万㎡の高層ビルで、国道20号線沿いの新宿駅新南口駅舎の跡地で建設が進められています。低層階は商業施設が、高層階はオフィスになります。
このビルの機能の一つは、「交通結節点」としての機能です。ビルの隣接地には歩行者広場、タクシー乗り場、バスターミナルが集中され近隣に観光地へのアクセスの利便性向上が望めます。新宿駅は世界一の乗降客数を誇る駅ですが、その駅に電車だけでなくバス、高速バス、タクシーなどその他の交通機関の機能も集積されることで、交通の要衝としての機能をさらに集めることになりそうです。
新宿で再開発が進められているのは、南口だけではありません。高層ビル群の玄関口である西口も、再開発計画が立てられています。中心となっているのは小田急電鉄です。小田急は西口最大の地権者であり、西口周辺の主要施設の多くを保有しています。また西口にある、かつて富士重工の本社ビルだったスバルビルを2011年に取得しており、小田急は西口広場を中心とした再開発を計画しているようです。具体的な計画はまだ発表されていませんが、2016年中に公表される予定です。
(新宿:西口の高層ビル群)
新宿の特徴は、駅の西側と東側で、遊ぶ街と働く街とに分かれているということですが、この西側と東側の交流を活発にしようという計画もあります。東西連絡通路である「青梅通路」を、現在の17メートルから25メートルに拡大するというものです。通路と改札を面する形に移動させることで、西側と東側を移動しやすくすることが目的です。働く西側から遊びの東側へ、簡単に行き来できるようにすることで、これまでよりさらに交流が活発になるのではないでしょうか。
■ 東京駅周辺の大規模再開発
再開発が進むのは渋谷や新宿だけではありません。東京駅を中心とした丸の内・大手町エリアでも、競争するように不動産再開発計画が進んでいます。この計画は2027年度完了予定と2020年の東京オリンピックに焦点を当てた計画ではありませんが、今後の東京の不動産再開発計画として、非常に大規模かつ影響の大きなものであると考えられるため、ご紹介します。
東京駅周辺の再開発計画は、三菱地所の行うもので、東京駅日本橋口前の常磐橋街区を再開発し、高さ390メートルの日本最大の高層ビルを含む4つの棟と広場を開業するというものです。事業の規模は1兆円にもなる見通しで、12年にわたる非常に大規模なプランになっています。
現在の東京駅日本橋口前には、日本ビル、朝日生命大手町ビル、JXビル、大和呉服橋ビルの4つが存在し、その隣には常盤橋公園とJFE商事ビルがあります。三菱地所はこれらを一体で再開発し、敷地面積3.1ヘクタールの複合施設を整備します。施設内にはオフィス、商業施設、大型駐車場、ホテルなどを整備する予定ですが、2027年開業と期間が遠く、見通しのつかない部分が大きいため、施設内の内容、規模、配置など具体的計画は今後段階的に行われる予定です。
これは三菱地所の行う大手町の再開発計画ですが、東京駅周辺の計画はこれだけではありません。反対側の八重洲口では、三井不動産と東京建物による大規模な計画が進行中です。三井不動産・東京建物は、八重洲口近くに250メートル級の高層ビル2棟を建築予定で、ビルには高級ホテル、オフィスの他に小学校まで整備する計画になっています。事業費は6000億円を超える見通しです。地下には2万㎡を超える巨大バスターミナルが整備される予定で、現在分散している八重洲口のバス発着所が集積されることで、交通の要衝としての機能が高められることが予想されます。
(東京:東京駅周辺の夜景)
この計画も2022年の完了予定と東京オリンピックには焦点を当てていないものですが、東京駅を挟んで三井不動産と三菱地所がぶつかり合うという、話題性にも富んだ再開発計画です。これらの計画は2020年までには完了しませんが、東京にはオリンピック以降も、もう一つ大きなイベントがあります。2027年の「リニア中央新幹線開通」です。東京駅周辺の2020年以降になる再開発計画は、オリンピックよりもリニア開通に焦点を当てた計画なのでしょう。
■ 赤坂・虎ノ門・六本木エリア
大規模な再開発計画は、港区でも進んでいます。不動産再開発事業において、何かと話題になることが多い赤坂・虎ノ門・六本木エリアですが、2015年には森ビルによって、東京都市最大規模の再開発計画が発表されました。相延床面積220万㎡、総事業費1兆円、事業期間10年に及ぶ計画です。
森ビルの再開発計画の一つが虎ノ門を対象エリアとして行う計画です。計画は二つに分けられており、一つは虎ノ門に2棟の高層ビルを建築する計画で、1つが地下3階、地上36階の高層オフィスビル、もう1つが地下3階、地上23階のオフィスビルです。これらは2019年、2020年に完成予定になっています。
もう一つの計画は、虎ノ門ヒルズの北側一体を開発する計画です。このエリアには賃貸オフィスを建設する予定で、さらに1階部分にオリンピック会場を結ぶバス、リムジンのターミナルを整備する計画になっています。さらに地下鉄日比谷線駅、銀座線虎ノ門駅をバスターミナルと結び、利用者に利便性向上に向けた取り組みも、計画に組み込まれています。
(赤坂:赤坂見附の建設中ビル)
また、虎ノ門だけでなく赤坂でも再開発計画が進んでいます。赤坂プリンスホテル跡地に建設される「東京ガーデンテラス」がその代表です。東京ガーデンテラスは、オフィス・ホテル棟と住宅棟の2棟が建設される予定で、オフィス棟は地下2階、地上36階建て、高さ180メートルになる高層ビルで、住宅棟は高さ90メートルになる予定です。オフィスにはヤフーが入居、ホテルはプリンスホテルが運営する計画です。総事業費は980億円になります。日本を代表する「赤プリ」跡地の計画ということで、注目を集めています。
これらの計画の他にも、首都圏・都心部では多くの再開発計画が進行・構想中で、2020東京オリンピック開催に伴って、新たに設置される駅もあります。これから2020年までの4年間、東京は不動産再開発を中心に大きな変貌を遂げるでしょう。今後も再開発計画がどのように進行していくのか、注目していきましょう。