アベノミクスにより魅力が増す不動産投資
ひと昔前まで不動産投資といえば、「賃貸物件のオーナーとなり賃貸収益を得ること」が中心だったが、最近ではJ-REITの存在感が増し、「投資額を自由に設定し利回りを得る」という選択も加わっている。
J-REITは、アメリカのREITをもとにした金融商品であり、日本導入当初は「リスクが高い」といった声も多かった。しかし、市場が拡大にするにつれ、安定性が増してきている。
このような状況で「J-REIT」と「賃貸経営」のどちらを選択すべきか、で迷っている投資家も多いだろう。なぜなら、現時点では、どちらの選択にも魅力を感じやすいからだ。「J-REIT」は、アベノミクスの大胆な金融緩和および日銀によるJ-REIT株の大量買い付けによって活況にある。一方の「賃貸経営」は、東京圏を中心に物件価格が上昇傾向にあり、安定した賃貸収益の確保に加えて、売却差益にも期待できる状況にある。
ここでは、2つの投資法の性格を明確にすることで、どのようなタイプの投資家に「J-REIT」「賃貸経営」が合っているかをナビゲートしたい。
平均利回り約3%。各社ほぼ横並びのJ-REIT
一つ目の比較テーマは、「利回り」である。まずは、J-REITの「分配金利回り」だが、不動産投信情報ポータル「JAPAN REIT」の2015年1月5日付のデータでは、すべての法人を合わせた平均利回りは3.02%である。4%台の法人は3社であり、1%台の法人はゼロだ。2%〜3%台の利回りに大半の法人がおさまっているというのが実状だ。
賃貸経営の利回りは、「中古か新築か」「中古なら築古か築浅か」「立地は都心か郊外か」といった複数の要素によって決まってくるが、通常は10%以上の「表面利回り」が最低限のラインとされる。
だが、この「表面利回り」をJ-REITの「分配金利回り」と単純に比較することはできない。投資家が最終的に得る利回りは、ここからローン金利を相殺し、さらに賃貸管理会社に払う管理料、空室期間の利益損失、将来のリフォーム代などを差し引いたものとなるからだ。
J-REITは投資による利回り、不動産投資は経営による利回りという性格の違いがあるため、単純な比較はできないが、最終利回りの計算をした上で、どちらの投資が効率的かを精査するというのも一案だ。
本業の所得との合算申告で節税できる「賃貸経営」
二つ目の比較テーマは、「運用している間の税金比較」である。
J−REITの場合は、極めて単純で分配金は分離課税 の対象となり、分配収益から20.315%が引かれる。これに対して、賃貸経営は少々複雑で、税率は各人によって異なる。なぜなら、賃貸収益は所得税の対象であり、副業で賃貸経営をしている場合、本業の給与と副業の賃貸収益を合算して申告できるためだ(個人投資家の場合)。現実的には、管理料、減価償却、借入金利子をはじめとする様々な経費を計上すると帳簿上は赤字になることも多く、この赤字分を給与所得から差し引くことで結果的に節税になる。
このような節税効果はJ-REITにはないので、節税を重視する投資家は、賃貸経営の方が合っているといえる。
どちらも安定性の高い不動産が投資対象
最後は「投資リスク」による比較だ。
J-REITは、経済状況や金利変動による「投資口価格や分配金の減少」、法人の倒産による「投資資金の大幅な目減り」がデメリットとしてよく取り上げられる。だが、これらは他の金融商品と同様のリスクであり、J-REITだけのリスクではない。賃貸経営は、「空室による収益性悪化」が最大のリスクだが、これは空室が発生しにくい立地や物件条件を設定すれば未然に防げる。
J−REIT、賃貸経営の両者に共通するポイントは、「安定性が高い」と言われる不動産が投資対象だということ。景気の状況によって、収益に波はあるものの、通常の経済状況であれば、物件の価値が短期間で半値になるような乱高下や、ゼロになったりすることは考えにくい。ローリスク、ミドルリスクが不動産投資の性格を踏まえて、過度にリスクを恐れず、自身に合った選択をするのがよいだろう。