チャイナマネーの爆買い 中国人による日本の不動産の爆買いは今後どうなるか

チャイナマネーの爆買い 中国人による日本の不動産の爆買いは今後どうなるか

爆買い

 中国経済のバブルが深刻視されるようになり、中国経済を世界経済のリスクと考える投資家が増えています。不動産バブルが崩壊し、株安、人民元安になっている現在、チャイナマネーによる不動産の爆買いの勢いは衰えてしまうのでしょうか。今回は中国経済の最新動向から、チャイナマネーの不動産市場への影響を検討していきましょう。

チャイナマネーによる不動産爆買いが目立った2015年

 ここ数年、急速に成長を遂げるチャイナマネーによって世界中の不動産が爆買いされていることが報道されています。不動産市場のデータを扱うリアル・キャピタル・アナリティクスの調査では、2015年の中国人によるニューヨークの不動産購入額は、2014年の3倍以上の38億ドルにもなることが示されています。別のデータでは、中国からアメリカの不動産市場に投資された資金は100億ドルを超えており、2010年代に入ってからは平均年率72%という勢いで増加していることが分かっています。
 アメリカだけではありません。日本人の不動産投資家の間で人気の高いマレーシアでも、チャイナマネーによる不動産の爆買いが目立っています。マレーシアでは海外からの投資を拡大するため、2006年から国内市場の規制を緩和しました。東南アジアには中華系資本の華人ネットワークが存在し、中国人は投資しやすい環境にあるため、規制緩和と中国の経済成長からマレーシア不動産はチャイナマネーの流入を受けることになりました。

 海外だけではありません。日本の不動産もチャイナマネーの影響を強く受けています。日本はアベノミクスの影響から円安が進行し、最近では1ドル120円前後で推移するようになっています。円安は、海外の人からするとその国の全商品がセールになっているようなもので、当然投資も加速します。人民元に対して日本円が30%切り下がれば、日本の全商品が3割引で購入できるのと同じ意味を持ちます。さらに2020年に東京オリンピックを控えている日本は、不動産市場が加熱しており、中国人投資家にとって非常に魅力的な市場になっています。
 2014年の中国人による日本の不動産の購入額は、250億円近くにもなりました。これは2013年の3倍という額です。2015年は中国人による巨額の不動産取引が多く見られました。2014年の国交省の調査によると、外国人投資家は不動産投資において、ファンド、債券、J−REITなどではなく実物不動産を購入する傾向にあり、その割合は6割を超えています。また、日本における「外国人投資家」は、アジア系が65%を占め、その内訳は中国人がもっとも多いものとなっています。つまり国内不動産市場でもっとも影響力のある海外投資家は、その多くが中国人投資家なのです。
 しかし、中国経済の停滞が明らかになり、日本の不動産市場におけるチャイナマネーによる「爆買い」も縮小するのではないか、という声が聞こえてくるようになしました。

不動産バブル崩壊による中国経済の停滞

 中国経済は、不動産バブルに支えられている側面が大きいという、危険な特徴を持っていました。中国経済はもちろん実体経済の成長も大きいですが、不動産市場や株式市場の実体経済の成長から大きく乖離した価格の高騰から利益を得た人たちが多いのも事実です。こうしたバブルでもうけた富裕層が、日本で「爆買い」しているのです。中国では不動産は居住目的ではなく投資目的で購入し、それをさらに転売する、というサイクルが繰り返されています。その結果、地方には誰も住まない新築のマンションが建て並ぶゴーストタウンがいくつも存在し、その存在は日本でも報道されています。しかし、バブルも膨張し続けるだけならば問題ありません。中国の投資家もいつかは崩壊することは分かっていても、そのいつかが来るまでは投資・転売を繰り返して、利益を得ようと行動していました。
 しかし、バブルは必ずいつか崩壊します。中国経済は2015年に入ってから不調が指摘されるようになり、複数のメディアで不動産バブルの崩壊が叫ばれるようになりました。中国の地方にいくつも存在するゴーストタウンは、完全に投資目的で建てられたものであり、誰も住まないという価値の無さにマーケットが気づいたときに、その不動産の価値は暴落します。2014年から中国の不動産市場を表す指標には異常が見られるようになりましたが、2015年にはいよいよバブル崩壊が目の前になっていました。

中国の株式市場が変動しはじめた

 中国の不動産市場では2014年から、在庫の積み上がりから供給過剰が明らかになり、多数の都市で不動産価格が下落し続けました。その一方で2014年から2015年半ばまでは、株式市場は好調で株価は上昇を続けていました。これは中国で下落を始めた不動産市場から、株式市場へとマネーがシフトしたことが背景にあります。つまり不動産市場から流出したマネーが株高につながったということです。
 こうして発生した株式市場のバブルは長くは続きませんでした。上海総合指数は6月をピークに、7月頭には3割も下落しました。中国当局は公的資金の投入、規制緩和、新規上場株式の承認の一時停止などの対策をとりましたが、それでも下落を止めることはできませんでした。その影響は中国国内だけでなく世界中の市場にも波及し、日本の日経平均株価も6営業日連続で下落しました。2万円を超えていた日経平均は、1万8000円台を割り込むまでに急落しました。「上海ショック」です。
 中国当局は追加緩和を実施しましたが、いまだに中国不動産市場、株式市場の不調は続いています。

中国経済は不安材料が増え始めた

 不動産市場、株式市場の不調は人民元安にもつながっています。株式市場の不調が実体経済の不調につながらないように、中国政府は為替介入を行い、人民元安を演出しました。人民元安になると中国人にとっては、海外のあらゆる製品が割高になります。これまで円安の恩恵を受けて爆買いしていた中国の富裕層・中間層も、これまでほどには日本市場が割安ではなくなるでしょう。不動産市場の不調、株価の下落、人民元安という要因から、中国人による日本の不動産市場での爆買いも、縮小していくと予想されています。しかし、これほどの勢いを見せていた爆買いは衰えるのでしょうか?
 確かに中国経済の勢いは衰え始めていますが、かといって富裕層の爆買いの勢いも衰えるとは言えません。中国の富裕層は、安全な資産として海外資産、とくに不動産を保有したいという強い意欲があります。不動産は金融市場の影響で大きく変動する株や債権とは違い、一定の物件そのものの持つ価値があります。またキャピタルゲインだけでなく、賃貸していればインカムゲインも望めます。その他の資産に比べて安定性が高いと言えるのです。しかし中国の富裕層にとって、バブルの崩壊した中国国内の不動産は投資先として魅力的ではありません。そこで日本の不動産市場に目をつけているのです。
 日本の不動産市場はすでに多くの中国人投資家が参入していることから、他の国と比べれば投資環境が整っています。さらに人口減少がはじまっているとは言え、地方から都市部へ人口が流入していることから都市部の不動産需要はまだまだ底堅く、2020年の東京オリンピックも控えていることから不動産市場はホットになっています。つまり中国の富裕層・中間層にとって、多少富が減少していても、日本の不動産市場の魅力は衰えないのです。小さな変動は予想されるものの、これからも中国人投資家による日本の不動産市場の「爆買い」は、しばらくは続いていくことが予想されます。

 

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