少額から不動産投資を始めるなら◯◯?

少額から不動産投資を始めるなら◯◯?

J-REIT
(写真=PIXTA)

 不動産投資をするにはお金を知識もない、またそこまで手間をかけたくないという人におすすめなのが「J-REIT」です。J-REITには証券投資としての側面と不動産投資としての側面があり、他の投資に比べても多くのメリットがあります。しかし実物不動産投資と比べるとどのようなちがいがあるのでしょうか。どちらに投資する方がいいのでしょうか。今回はJ-REITの特徴と実物不動産投資の特徴を比較してみましょう。

J-REITとは?

 REITは「Real Estate Investment Trust」の略で不動産投資信託という意味で、頭のJは日本の、という意味です。つまり国内の不動産を投資対象とした投資信託のことをJ-REITと言います。投資信託とは投資家から小口で集めたお金を投資会社が様々な投資対象へ投資・運用し、そこで得られた利益を投資家へ還元するものです。不動産投資信託の場合は、投資家から集めた資金で不動産投資を行い、そこで得られた家賃収入や売却時のキャピタルゲインを投資家へ配分する投資商品です。投資法人が不動産投資を行い、不動産を証券化し、その証券を証券取引市場へ上場し、それを投資家が売買するという仕組みです。分配金は運用益に従って、年1回もしくは2回支払われます。またJ-REITは途中解約できない「クローズエンド型」の商品ですが、証券取引所に上場されているため、解約しなくても市場で売買することで流動性を確保することができます。

 J-REITには株式や債券などの金融商品への投資と比べて、分配金が得られやすいというメリットがあります。株式会社ならば、会社の売上から法人税や内部留保が引かれた残りから配当金が支払われますが、J-REITは収益の90%を分配するという条件を満たせば法人税がかからないため、それだけ分配金が支払われやすいのです。

 この他にもJ-REITには様々なメリット・デメリットがありますが、一番の特徴は投資信託という証券投資の形態を持ちながら、投資対象が不動産であるため、証券投資と不動産投資の両方の特徴を持っているという点です。それぞれの側面から特徴を見てみましょう。

J-REITの証券投資、不動産投資としての側面

 J-REITは実物不動産投資に比べて以下のようなメリットがあります。

  ①少額投資が可能
  ②多数の不動産事業へ分散投資が可能
  ③実物不動産投資に比べると流動性が高い
  ④専門知識がなくても投資できる
  ⑤管理の手間がかからない

 もっとも大きなメリットは少額で投資できるという面でしょう。実物不動産投資は最低でも数百万円からの資金が必要ですが、J-REITの場合は最低1万円程度からでもはじめることが可能です。よって、複数の不動産事業、例えば「ホテル事業主体」と「住居事業主体」のJ-REITに分散投資することも可能です。実物不動産投資で複数の不動産事業に投資するのは資金的にも、専門知識や手間の面でも難しいですが、J-REITならばそれが行ないやすいのです。

 また実物不動産投資は売買するのに数カ月単位の時間が必要ですが、J-REITは証券市場で取引できるため、株式市場などに比べれば低いですが、実物不動産投資よりも流動性は高いです。そのため価格が下落局面に入ったら、すぐに売却して損失を最低限に抑えることができます。そしてJ-REITは、自分で不動産投資の専門的なことを勉強したり、自分の手で管理会社や不動産会社を探したりする必要がありません。実際に不動産投資をはじめようと思っている人の多くが、はじめるまでの知識面や手間の面で高いハードルを感じますが、J-REITにはそれがなく手軽にはじめることができるのです。

 ただしJ-REITにはデメリットもあります。それは実物不動産投資と同じものもありますが、J-REIT特有のデメリットがあります。まず実物不動産投資と共通するデメリットは以下のようなものです。

  ①賃料下落リスク、空室リスクなどの影響で利回りが悪化する可能性
  ②災害などの発生で投資対象の物件の価値そのものが下落する可能性
  ③借入が多いと金利変動で利回りが悪化
  ④不動産の修繕費用や管理費など他の証券投資にはないコストがある

 さらにJ-REIT特有のリスクとしては以下のようなものがあります。

  ⑤株式市場の下落局面でJ-REITも下落する傾向がある
  ⑥投資法人が倒産すると損害を受ける

 ①〜④の実物不動産投資と共通しているデメリットについて、J-REITは実物投資に比べて不利な側面があります。自分で直接不動産投資を行なう場合、賃料下落リスクや空室リスクなどは、物件選びやリフォームによる物件価値の増大、広告宣伝などで、ある程度避けることができます。また金利変動リスクも、借入金の割合を少なくしてレバレッジを小さめにしておけば、キャッシュフローの悪化を最小限にとどめることができます。しかしJ-REITの場合は、不動産投資の運用の全てを投資法人に任せるため、自分の裁量でリスクを避けることができません。

 ⑥のデメリットについては全ての証券投資に言えることなので、その会社の業績などを調べて対応するしかありません。実物不動産投資と大きく異なるのは、株式市場の影響を受けやすいということで、株式市場が下落局面に入るとJ-REITも下落しやすく、またJ-REITは株式よりも流動性が低いため、損失を回避しにくい面があります。J-REITは株式市場からの影響を受けやすく、株式市場が低迷すればJ-REITも低迷する傾向があるのですが、その逆は言えません。現在株式市場は8月下旬に発生した中国の経済失速懸念から発生した世界の株価の乱高下によって2万円台を割り込んだものの、再度2万円台突破へ向けて上昇し、これまで描いていた上昇トレンド上に回帰しようとしていますが、J-REIT全銘柄を対象とした指数である東証REIT指数は依然として下落トレンドのまま反転の兆しが見えません。これは株式市場の方が高い利回りが期待できるために、株式市場へ投資家の目が移っていることが原因だと考えられます。

 つまりJ-REIT特有のデメリットとは、株式市場ほどの流動性の高さはなく利回りも小さいが、実物不動産投資ほどの安定性はない、ということです。これらのメリット・デメリットを踏まえて、J-REITと実物不動産投資がどのような投資に向いているか整理してみましょう。

実物不動産投資との比較

 J-REITに比べると実物不動産投資は値動きがゆるやかで、安定しています。流動性は低いものの、長期的に一定の収入を得ることができるため、投資手法として安全です。整理すると、J-REITは資金的に実物不動産投資ができるほどの余裕はないという投資家や、株式や投資信託などの金融商品中心のポートフォリオを組んでいて、短期的なキャピタルゲインを得ることを目的としている投資スタンスの投資家、もしくは不動産投資に興味はあるがまた知識も資金もないため、まずは第一ステップとしてJ-REITをはじめてみたいという投資家に向いていると言えるでしょう。

 一方で実物不動産投資は、資金面、手間、専門知識といった面で初期のハードルは高いですが、長期的・安定的な投資を行なうことができます。10年以上の長期的な投資計画を立てて、ある程度の余裕のある初期投資を行なえる投資家に向いています。実物不動産投資は老後資金の形成や、本業の給与以外で継続的に所得を得ることに向いている投資です。特有のリスクとその対処法さえ押さえていれば、安定した収入源になりえます。

不動産投資カテゴリの最新記事