リノベーションブームに便乗する不動産会社
不動産業界では、昨今「リノベーション」に注目が集まっています。グーグルトレンドを見ると「リノベーション」というキーワードの検索が、2006年から増え始め、2013年頃には一段と増えていることがわかります。
「賃貸リノベーション」というキーワードでは、2007年から検索され始め、「リノベーション」同様、2013年に検索が倍増しています。
検索されはじめた2007年の時点では、賃貸のリノベーション物件を手がける不動産会社はわずかだったものの、今ではその数多くが賃貸リノベーションを扱っています。
入居者を囲い込むための有力な手法として、注目が集まっている証拠と言えるものの、不動産業界では猫も杓子も「リノベーション」というキーワードを使っているという印象を受けます。宣伝文句として「リフォーム」よりも「リノベーション」とうたった方が、高級感やこだわり感をアピールできるという、不動産会社の狙いがうかがえます。
「リフォーム」と「リノベーション」は、そもそも全く別の概念です。不動産会社の営業トークにごまかされないためにも、正確な理解が必要といえるでしょう。
リフォームとリノベーションの違い
リフォームとはre-formですから「形(form)を元に戻す(re)」ということです。つまり壊れた部分汚れた部分を修繕して良い状態に戻すということがリフォームという言葉の意味です。もちろんまったく同じデザインである必要はないので、壁紙の変更やカーペットフロアからフローリングへの変更なども広義の意味でリフォームと捉えてもらって良いでしょう。
しかし、いくつかの不動産会社が提案している内装は、ただのデザインリフォームレベルでありながら、「リノベーション物件」と銘打っているものが見受けられます。
リノベーションとはrenovation = innovationです。刷新、革新という意味合いが込められています。単に内装を変えるという観点で捉えれば、「リフォーム」と「リノベーション」はまったく同じといえます。
「リノベーション」というキーワードが新しく登場した目的は、リフォーム(修繕)を超えた付加価値を提供する点にあると言えます。
「リフォーム」で実現できないレベルの価値の創造を施すもの、それが「リノベーション」の言葉の定義となります。
リノベーションによる価値の創造とは?
それでは「リノベーション」が生み出す価値を、どのように理解すれば良いでしょうか?
端的にわかりやすいものとしては賃料が挙げられます。修繕レベルであれば、賃料は新築当時の価格になることはありません。経年分だけ建物全体の価値が下がるからです。「リノベーション」を施すことで、経年劣化を超えた賃料設定を可能にすることが、最もわかりやすく価値を生み出していると言えるでしょう。「リノベーション物件」と銘打っておきながら、他のリフォームと同程度の家賃収入しか得られない施工であれば、それは「リノベーション」ではなく、単なる「デザインリフォーム」ということです。
投資家にとっては、収益性の向上を実現する手法が「リノベーション」です。その目的のための結果をもたらすことができる施工業者を選ぶことが、重要なポイントとなります。概念を正確に理解して、紛らわしい情報には惑わされないという姿勢が、賢い不動産投資家には必要なのです。