相続時精算課税制度の知っておきたいメリットと陥りがちな失敗とは

相続時精算課税制度の知っておきたいメリットと陥りがちな失敗とは

 相続税増税に伴い、子や孫などに財産を残す『生前贈与』に注目が集まっている

 自らの財産を子や孫などに残すための選択肢には、遺言による遺贈や生前贈与などがあります。遺言による遺贈は、不動産や預貯金、株などの財産を「どの相続人にどれだけ配分するか」を遺言書に記載しておくことで遺族に財産を与える方法。生前贈与とは、文字どおり生きている間に無償で財産を与える方法です。

 2015年からの税制改正により、遺産に関わる基礎控除額が引き下げられる一方、最高税率は5%引き上げられます。この改正により、相続税の対象となる方が増加。併せて、財産額の多い方はより負担が大きくなる傾向が強まります。こういったことを背景に今、生前贈与に注目が集まっているのです。

生前贈与と贈与税の改正

 生前に贈与を受けた財産には、贈与税が課せられます。贈与税には、通常の『贈与(暦年課税)』と『相続時精算課税』の2つの制度があり、贈与を受ける財産について、いずれかを選択します。選択はどちらか一方で、併用できないため注意が必要です。

 この贈与税は、2015年の税制改正で一部変更があります。まず、『暦年課税』については、相続税同様に最高税率が引き上げられます。また、『相続時清算課税』では、贈与者の年齢の下限が60歳に引き下げられると共に、贈与を受ける側はこれまでの推定相続人に加えて“孫”も対象になります。つまり、贈与する側も受け取る側も、「対象となる範囲が広がった」ということです。この『相続時清算課税』について、さらに詳しく見てみましょう。

相続時精算課税制度とは

 通常の贈与(暦年課税制度)は、贈与を受けた資産の金額が年間110万円以下の場合には贈与税が発生しないというものです。毎年、年間110万円までが非課税になります。

 一方、相続時精算課税制度では、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与に限られますが(注:改正後は60歳以上、20歳以上の子および孫)、相続時に贈与財産を遺産に追加して相続税を計算(精算)するもので、2,500万円の特別控除を受けることができます。つまり、2,500万円までの資産であれば、贈与の時点では贈与税はかかりません(注:相続の時点で清算することで、課税となる場合もある)。なお、2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税がかかります。

 その後、相続発生時には贈与を受けた資産の価格を相続財産に加えて相続税を計算し、算出された相続税からすでに納付済みの贈与税分を差し引きます。また、相続税よりも贈与税を多く払っていた場合には、その分の還付を受けることができます。

 例えば、生前に父親から相続時精算課税制度に基づいて3,000万円の贈与を受け、父親が亡くなった際に、相続財産として2,000万円を受け取った例を考えてみましょう。

 ・生前の贈与税:(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円

 ・死亡時相続税:(((生前贈与資産3,000万円+相続財産2,000万円)-
(定額控除3,000万円+600万円×法定相続人数1人))×税率15%-控除額50万円)-生前の贈与税額100万円=60万円 となります。

 これは、会社員の給料計算に置き換えるとわかりやすいかもしれません。生前に支払った贈与税は給料から天引きされる源泉税のようなものであり、再び相続税を計算するのは年末調整をするようなものといえるでしょう。

相続時精算課税制度のメリット

 相続時精算課税制度のメリットは、おもに以下の3つが考えられます。

1)一度に多額の贈与を行いやすい
 子ども一人につき2,500万円までは贈与税がかかりません。通常の贈与である暦年課税制度によれば、仮に一度に2,500万円を贈与した場合、贈与税額は970万円(38.8%)にもなります。しかし、相続時精算課税制度によれば、同額が控除となるため、多額の贈与を一度に行うことが可能になります。

2)収益不動産を贈与することで相続財産の増加を防ぐ
 収益不動産であるマンションやアパートなどを贈与すれば、贈与後すぐに受贈者が家賃収入を得られます。これにより、相続時の財産が増えるのを事前に防げます。

3)将来、価値の上昇が見込める資産を贈与することで節税が期待できる
 相続税の計算時に相続時精算課税を適用した資産を合算する場合は、相続時ではなく贈与時の価格で計算されます。したがって、贈与時よりも相続時の価値上昇が見込める資産の場合、結果として節税できる可能が高くなります。

陥りがちな失敗は

 相続時精算課税制度を適用する場合に陥りがちな失敗もあります。

1)暦年課税制度を長く続けるほうが節税メリットが高いことも
 将来、価値の上昇が見込める資産を贈与することで節税となる場合もある一方、思うように価値が上昇しない場合には、暦年課税制度を毎年コツコツと継続したほうが結果的に相続税を抑えられることもあります。

2)相続時精算課税制度を選択すると暦年課税制度には戻れない
 相続時精算課税制度を一度選択すると、通常の暦年課税制度に変更することはできません。そのため、相続時精算課税制度を選択する場合は、慎重に考える必要があります。

 このように相続時精算課税制度には一長一短があります。生前贈与を検討する際には、信頼のおける税理士に相談し、しっかりと対策を考えるようにしましょう。

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2015年1月19日 4:28 PM カテゴリー: 節税

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