不動産市場活性化に欠かせないJ-REIT、投資先としての魅力と注意点

不動産市場活性化に欠かせないJ-REIT、投資先としての魅力と注意点

不動産市場活性化に欠かせないJ-REIT、投資先としての魅力と注意点

今や10兆円市場にまで広がったJ-REIT

 近年、投資対象としてJ-REITの認知が高まっている。

 J-REITは、個人で投資しにくい高額な不動産を投資対象とし、そこから得られる賃料収入や売却益を投資家に配当する金融商品だ。1万円程度の少額から投資できる手軽さもあり、急速に広がってきた。証券会社を通して購入が可能であり、株式同様に決算短信や有価証券報告書もあるため、株式投資に慣れている人にも馴染みやすい。

 J-REITは利益の9割を配当すれば法人税が課税されない制度上の恩恵があるため、株式へ投資した場合と比べると、高い配当を出す銘柄が多く、投資家の人気を集める理由のひとつといえる。また、値動きが緩やかな不動産を投資対象としているため配当が安定しており長期的な運用がしやすく、老後資金としても魅力的だ。

 J-REIT市場は2001年に2投資法人、時価総額2,600億円で始まったが、2014年では48投資法人、時価総額10兆285億円の市場へと急成長を遂げており、投資対象も「オフィスビル」「商業施設」「物流施設」「ホテル」などに広がっている。

海外REITとJ-REIT、魅力的なのはどちらか

 REITはもともとアメリカで生まれた金融商品だ。J-REITは日本版のREITだが、海外系REITと比較した時にメリットがあるのはどちらだろうか。

 海外不動産投資で特に難しいのは、「地政学リスク」の存在である。地政学リスクとは、ある特定の地域が抱える政治的・軍事的な問題が高まり、地域紛争やテロ等が発生し、為替通貨の乱高下等の悪影響を受けてしまうことだ。実際、海外系REITは円安など為替の影響を受けて、J-REITを下回る利回りとなっており、現時点では投資魅力は薄い。国内であれば不動産物件だけに注意していればいいが、海外系REITだと対象国や関係国の政治経済に常にアンテナをはらなくてはならないので投資家の負担やリスクが大きい。

J-REITへ投資する際の注意点とは

 こうして見てくるとJ-REITはメリットの大きい金融商品のように思えるが、実際の運用においては、いくつか注意しておきたい点がある。元本や配当は保証されておらず、日々価格変動があるといった特性は株式と同じだが、投資対象である不動産特有の注意点があるのだ。

 J-REITの価格や配当に影響を及ぼすのは、不動産価格の下落や、賃料の下落、空室率の増加等の要因である。また、土地や建物等が投資対象のため、地震や風水害といった自然災害や、物件周辺の環境問題等の予測が難しい偶発的な事象が発生すると、J-REITの価値が影響を受ける可能性がある。

 また、J-REITを運用している投資法人の倒産などが起きると、通常の株式と同じように上場が廃止され、証券取引所での自由な売買ができなくなるなど、不利益を被るおそれがある。こういった特性を正しく理解した上で、投資をすべきである。

日銀によるJ-REIT買い入れ増でさらなる活況

 最後に現在のJ-REIT市場の動向を見ていこう。

 日銀は2014年10月31日に追加金融緩和策を実施した。この施策では、長期国債の買い入れ額の増額と共に、J-REITとETFの買い入れ額を年間約300億円から900億円の3倍へ増額することを決定した。これを受けて、J-REIT市場は活況を呈し、これまで上昇基調にあった価格にさらに弾みがついた。

 日銀の追加金融緩和策により活況を呈しているJ-REIT市場では、追加発行が相次ぎ、追加発行で調達した資金を元手に不動産の取得を積極的に行う等、好循環が続いている。

 J-REIT投資環境は整備されている上に、本格的なデフレ脱却を目指す日銀による政策的な支援という追い風を受けている。このような背景を踏まえれば、投資先を考える上で、株式投資や外貨投資等に加えてJ-REITを選択肢のひとつとして検討してみてもいいだろう。

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