こんなREITがあったら面白い!

こんなREITがあったら面白い!

日本の田園_REIT
(写真=PIXTA)

 REIT(不動産投資信託)にもさまざまな種類があります。日本では住居型、オフィス型、商業施設型などを中心に、ホテル・旅館を対象としたREIT、物流施設に特化したREIT、福祉施設・介護施設を対象としたREITもあります。しかし世界にはもっと変わったREITもあります。
 REITは多様な可能性を秘めています。日本では今後どのようなREITが生まれることが考えられるか、解説していきます。

アメリカには刑務所のREITがある

 金融商品の開発でもっとも進んでいるのがアメリカです。アメリカには、さまざまな投資可能な資産がありますが、REITも例外ではありません。アメリカはREITの多様性に富んでいます。
 そもそもREITとはどのような仕組みになっているのでしょうか?例えばヘルスケアに特化したREITは、投資家から集めたお金で高齢者施設や病院などのヘルスケア施設を運営し、そこで出た利益を投資家に配分する仕組みです。この仕組みを応用すれば、さまざまな「不動産」の運営に応用できることが分かります。
 例えばアメリカには「刑務所のREIT」があります。アメリカは新自由主義的な政策が進められており、小さな政府、規制緩和、民営化といった政策を実施しています。民営化の波は刑務所にも及んでおり、アメリカでは民間会社が刑務所を管理しているのです。アメリカには大量の囚人がおり、さらに増え続けているため、その運営を担っている会社も利益を出すことができています。
 実は日本でも刑務所の民営化は進んでおり、日本でも刑務所のREIT化が絶対ないとは言い切れなくなってきています。

山林のREITもある

 さらに世界には山林を対象としたREITもあります。山林は植樹し、管理し、育てて、伐採するまでに数十年という非常に長い時間がかります。そのため普通に考えれば山林などはREITとして投資対象にはならないように考えてしまいます。しかし実際にはそうでもなく、アメリカの巨大な投資会社が次々に広大な山林を購入しているのです。
 山林が注目される理由は、山林は金融資産と相関が低いためだと言われています。つまり金融市場が停滞して株が下落した時に備えて、山林REITを投資対象として加えていれば、分散のきいたポートフォリオによって安定的な投資を行なうことが可能になるというわけです。
 日本では、今のところ山林REIT、林業REITのようなものはありません。その理由はアメリカと日本でのコストの違いにあります。アメリカの林業は大規模に行なうことができ、作業の大部分が機械化されています。そのため1人あたりの作業効率が非常に高いのです。しかし日本の山林は人の手で管理されている部分が大きく、管理や伐採のコストがかなり割高になっています。そのため今のところ投資対象として魅力的ではないかもしれません。しかしこれから日本でも、複雑な地形に対応した管理・伐採の技術開発が進んだり、育成の早い苗などが開発されれば、作業効率も上昇して投資対象として考えられるようにもなるかもしれません。

農業REITは実現可能か?

 今、そしてこれからもっとも大きく変化すると考えられる分野の1つが「農業」です。TPPが大筋合意されたことで、これからの日本の農業は、これまで以上に国際的な競争にさらされることになります。TPPという非常に自由度の高い地域的な経済連携協定をきっかけに、今後もさらなる自由化が進むことが予想されます。そうなれば日本の農業環境は激変していくでしょう。これまでも日本の農業生産は脆弱である、自給率が低いと言われてきました。このような動きの中で、農業生産性を高め、国際的に競争力のある農業を作っていこう、ブランド力の高い農産物を作っていこう、という動きも起こっています。政府も農業経営の大規模化、法人化、6次産業化などを進めており、これからは農業への企業の参入が多くなっていくでしょう。

 日本の農業の高収益化が実現でき、また農地に関する法改正が進めば、農業REITの参入も考えられます。例えば農業REITによって休耕地になっている農地を買い上げ、あるいは借り上げて、農業は専門的な知識・ノウハウを持った企業に任せる。企業は高い生産性や販売ルートによって収益を上げて、回収した利益に基づいて投資家に分配金が配分される、というREITは可能ではないでしょうか。
 農業REITが可能になれば、農業にお金が流れ、企業がさらに参入し、日本の農業は活性化します。現在危惧されているような日本の農産物消費が安い海外農産物ばかりになるというシナリオも防ぐことができるでしょう。
 ただ農業REITには検討すべきこともあります。それは農産物の品質です。国際的な競争と戦おうとすれば、農業経営を大規模化し、企業が参入し、効率性重視の農業が主流になるかもしれません。そうなると手間をかけて品質が高いと言われる日本の農産物も、国際市場に合わせた質になってしまうかもしれません。また日本の農業には、その地域の自然を保護するという機能もあります。しかし利益を重視した企業がそこに参入すれば、地域の自然を破壊してしまうかもしれません。農業REITを行なうならば、ブランド価値の維持や自然の保護なども考えたREITである必要があります。
 農業REITのリスク要因としては、農産物の生産量や価格が自然条件に大きく左右されてしまうこと、需給が変動しやすく収益のボラティリティが高いこと、などのリスクが存在します。農業REITへ投資する場合は、金融市場の価格変動リスクだけでなく、農産物の商品市場の価格変動リスクも気にかける必要がありそうです。

再生可能エネルギーREITも登場する?

 REITが新たに参入するのは、基本的にこれから成長する可能性の高い分野でしょう。不動産投資の代替としてのREITと、事業への投資の側面の強いインフラファンドとの境界があいまいになってくるのですが、再生可能エネルギー分野でもREITが参入する可能性は大きいと言えます。
 再生可能エネルギーとは、太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなどを利用したエネルギーのことです。一部のエネルギーに関しては2000年代から投資商品として販売されていましたが、ほとんど浸透していませんでした。しかし2015年4月に、東京証券取引所にインフラファンド市場が創設され、今後再生可能エネルギー分野での投資が拡大することが考えられます。
 再生可能エネルギーでのREITが可能であるとすれば、例えば投資家から集めた資金で再生可能エネルギー設備に投資し、会社は専門の会社が運営、出た利益の一部を投資家へ配分するという形になるでしょうか。再生可能エネルギーのREITの参入はかなり可能性が高いと考えられます。今後の動向に注意してみましょう。
 

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