住宅型J-REITの投資行動と世帯年収の関係は?

住宅型J-REITの投資行動と世帯年収の関係は?

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 スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの小売店は、出店を計画している地域の人の流れや競合他社の動向を調査して、採算がとれると見込んだところに出店します。J-REITも同じように事前の調査を行って、長期的に利益が見込めるところに投資をします。

 自分が住むためにマンションを購入する、あるいは賃貸でマンションを借りる場合、駅周辺の賑わいや交通の利便性、駅からの距離を重視します。またお子さんがいる世帯では、治安や防災面も気になるところでしょう。

 REITが物件の事前調査を行う場合も、駅周辺の繁華性や駅からの距離、安全面などをもちろん考慮します。それらに加えて、「賃料の負担能力のある人が多い地域なのか」も、投資を行う際には絶対に外せないポイントとなります。

多く投資している地域は、港区・中央区・渋谷区

 J-REITの投資動向を、東京都内の23区に限ってみてみましょう。現在J-REITは、23区すべてに住宅物件を保有しています。その評価額の合計はおよそ1兆4,000億円です。また、そのなかでは港区の割合がもっとも高く、評価額で2,300億円を超え、比率では17%を占めます。港区に次いで多いのは中央区で、評価額でおよそ1,800億円、比率では13%となっています。

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 J-REITの投資地域をみると、港区、中央区、渋谷区、新宿区など都心が中心です。それ以外では都心に比較的近い品川区や、豊洲や辰巳のある江東区も投資額上位に位置しています。

 一方で、比較的古くからの住宅街であり、賃貸不動産の多い杉並区、中野区、江戸川区、練馬区、荒川区、足立区、葛飾区などには、J-REITはあまり投資していません。

投資の判断基準は賃料負担力(世帯年収)

 不動産投資は、長期保有が前提です。不動産価格の短期的な値上がり、値下がりを気にすることなく、超長期にわたって安定した家賃収入を得ることこそ、不動産投資の要諦だからです。つまり不況期にあっても借り手がいる物件を保有することが、きわめて重要となります。

 安定した収益を得るためには、賃料負担能力の高い人が多く住む場所にいい物件を持つことです。いい物件をいい場所に持っていれば、不況などで需要が低下した時でも 、賃料を下げることで入居率を維持できます。また、好況期に賃料を引き上げるのも、いい場所にあるいい物件からはじまります。

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 上の図は23区の区ごとにJ-REITが投資している額を横軸に、その区の世帯年収を縦軸にしたものです。これをみれば、投資額の大きさと世帯年収の大きさには密接な関係があることがわかります。

 なお、世帯年収が高くても投資額が小さい区が一つだけあります。それが千代田区です。千代田区はもともと住宅に適した土地が少なく、居住用だけでなく投資用のマンション自体が少ないことで順位が下がっているのです。この千代田区を除けば、投資額と世帯年収にはおおむね右上がりの関係がみられます。

J-REIT投資が港区を好む理由

 港区の世帯年収を階層別にみてみましょう。東京区部の分布と港区の年収の分布は大きく異なっています。具体的には、港区は年収400万円までの世帯が少なく、年収800万円を超える世帯が多くなっています。

 つまり港区は高額所得者層が多く、東京区部の平均に比べて港区に住む人の賃料負担力が高いことになります。賃料負担力の高い人が多く住む地域に物件を持っていれば、マクロの景気変動の影響を受けて賃貸住宅の需要が減ったとしても、賃料を下げればテナントは見つけやすいでしょうし、港区以外のエリアからテナントを呼び込むことも可能です。

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 住宅型J-REITの傾向としては、都道府県では地方より東京、東京23区の中でも周辺区よりは都心区に集中して投資しています。それは超長期に安定した賃料を得られる見込みが高いのが人口密度の高い東京であり、その中でも賃料負担能力の高い人が多く住む都心区だからなのです。

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