時価総額10兆円規模!成長し続ける国内REITの未来

時価総額10兆円規模!成長し続ける国内REITの未来

REIT
(写真=PIXTA)

 J-REIT(Jリート)は誕生からまもなく15年目を迎える。2014年11月に時価総額が初めて10兆円を超え、なおも成長を続けている。2001年9月にスタートしたJ-REITは、2007年5月までに6.8兆円規模まで順調に拡大した。しかしリーマンショックの影響により、2009年2月に時価総額2.3兆円まで急速に下落(出典①、以下同じ)。その後は2012年半ばあたりから右肩上がりで回復し現在に至っている。一度天井まで上り詰めて下落し、その後回復したJ-REITは、今まさに第2タームの成長期を走っていると言えよう。そこで今回はこの成長し続ける国内REITの未来について見てみることにしたい。

変化しているアセットタイプの割合

 まず、かつて第1タームでピークだった2007年5月のJ-REIT保有不動産額をアセットタイプ別に振り返る。2007年5月時点ではオフィスが54.1%、住宅21.2%、商業19.5%、ホテル3.4%、物流が1.3%の割合を占めていた。アセットタイプは断トツでオフィスが多かったのである。しかし2015年3月時点ではオフィス46.8%、住宅17.0%、商業18.7%、ホテル3.4%、物流10.0%となった。アセットタイプのメインは相変わらずオフィスであるが、その割合は54.1%から46.8%に減っている。一方、この8年の間で物流が1.3%から10.0%まで上昇し最も変化が大きかった。保有不動産額で見ると、オフィスは1.9倍の上昇にとどまるが、物流は17.4倍もの伸びを見せている。このように、J-REITはその成長の過程で、中身のアセットタイプの割合を変化させてきたのである。

オフィス賃貸需要の縮小

 このようなアセットタイプの変化は、日本の産業構造の変化を如実に反映してきたと言える。オフィスについては、リーマンショック直後に関西エリアを中心にフリーレントの商習慣が現れた。もともと東京圏に比べてオフィス市場が小さく供給過剰気味であった関西では、リーマンショックによる景気停滞が加わり、一気に賃貸需要が冷え込んだ。そのため新築ビルがフリーレントを使って既存ビルからテナントを引き抜き始めた。当時、東京圏でもオフィス需要は減退していたが、神奈川や千葉、埼玉からオフィスを東京に回帰させる「ストロー現象」が出てきたため、フリーレントという商習慣は見られなかった。しかし2015年の今はどうであろうか。もはや東京でも新築オフィスビルはフリーレントが常態化している。オフィスビルは50年以上存続する建物であるため、一度需給バランスが崩れると供給を減らすことは難しい。そのため、就労人口が減っていくこれからの日本においては、オフィスの賃貸需要はますます厳しくなっていくことが予想される。

物流賃貸需要の拡大

 一方、この8年間で物流需要は確実に伸びてきた。一つには倉庫の工場化が挙げられる。サプライチェーンの変化により、簡単な梱包や組み立ては工場ではなく倉庫で行って出荷するという形態に変わってきたのである。またスマートフォンの普及に伴い、インターネット通販の利便性が飛躍的に向上したことも倉庫の賃貸需要を加速させている。そのため高速道路のインターチェンジ周辺や空港・港湾地区、全国の主要都市近辺、工業団地などに「メガ倉庫」と言われる巨大な倉庫も登場してきた。J-REITのなかでも物流については今後も堅調に資産規模を増やしていくものと予想される。

変化し続けるJ-REIT

 J-REITは今後もアセットタイプの構成割合を変化させながら成長していくと思われる。この8年間にホテルREITの保有不動産額は2.2倍になった。物流に次ぐ増加率である。また昨年はヘルスケアREITも上場した。高齢者人口が増えていくなか、このようなアセットタイプも今後の成長が期待される。投資においては、オフィスや住宅だけにこだわらず、これからどのようなアセットタイプの賃貸需要が強くなるのか、投資家の見極め能力も重要になっていきそうだ。

 

 

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