不動産仲介手数料は、不動産を取引するときに仲介に入った不動産会社に支払う手数料のことです。日本では、取引金額の「3%+6万円」に消費税をかけたものが、手数料の上限です。3%+6万円は、取引の一方から受け取る不動産仲介手数料なので、もし、売買で買い手側と売り手側の両方の仲介を行えば、それぞれから3%+6万円の、計6%+12万円を受け取ることができます。
日本の不動産仲介手数料は、世界的に見て高いのか安いのか気になるかと思います。今回は不動産仲介手数料について、売主と買主の負担額を合わせた総費用で国際比較し、合わせて、不動産の取引慣行の違いもご紹介します。
不動産仲介手数料の高い国
ベラルーシ:6%~15%
中国(本土):5%~10%
メキシコ:5%~10%
ロシア:5%~10%
スウェーデン:5%~10%
ベラルーシでは、不動産仲介手数料の平均は10%程度ですが、不動産取引で公になっている情報はきわめて少ない状況です。
中国は、5%から10%程度の仲介手数料の他に、15%の不動産取引税がかかります。
メキシコでは、MLS(Multiple Listing Service)と呼ばれる不動産ネットワークが使われています。MLSは不動産仲介業者が加入している不動産のデータベースのことで、メキシコでは米国と同じように不動産の流通に関してIT化が進んでいます。
ロシアは、仲介手数料は5%から10%ですが、一方で、売主による直接販売も盛んです。
スウェーデンは、一般的には5%の料率ですが、小規模な家では10%程度になります。
不動産仲介手数料の低い国
中国(香港):1%程度
イギリス:1%~2%
オランダ:1.5%~2%
アイルランド:1.5%~3%
マレーシア:3%
香港は、不動産の仲介手数料が極めて低い地域です。1%程度を売主が負担します。不動産取引税は最大で3.75%で、中国本土に比べると税負担も軽減されています。
イギリスは、1%から2%が典型的な水準ですが、競争の激しいエリアでは0.5%から0.75%までディスカウントされることもあります。一方で、低価格物件では3.5%程度になることもあります。
オランダは、1.5%から2%の仲介手数料を売主が負担します。
アイルランドでは、都市部では1.5%から2%で、地方では2%から3%になります。また、オークション形式での売買も行われています。
マレーシアは3%ですが、ある一定金額を超える部分では2%が適用されます。手数料は売主または買主の一方が負担します。
不動産の取引慣行 国による違い
不動産の取引慣行は国によって大きく違います。フランスでは、不動産仲介業者が取引に関わるのは全体の50%程度にすぎません。大半は売主による直接取引です。売主による直接取引はFSBO(For Sale By Owner)と呼ばれ、仲介手数料などのコストを低く抑えることができます。買主にとっては、売主が負担するコストが不動産価格に乗らない分、魅力的な価格で購入できるのがメリットです。
米国とメキシコにはそれぞれ、MLSと呼ばれる不動産の取引履歴や物件情報などのデータベースが整備されています。MLSは不動産流通を情報面から支えるITインフラです。
日本の不動産取引の行方
今回は不動産仲介手数料の国際比較と取引慣行の違いを見てみました。こうしてみると、一口に不動産取引と言っても国によって手数料率は大きく違いますし、取引慣行にも違いがあります。
現在、日本の不動産仲介手数料は、売主、買主のそれぞれで3%、計6%です。国際比較すると決して低い方とは言えません。この先、手数料率は低くなる方向で進むと思われます。
また、諸外国の一部には、売主による直接販売が活発な国や、不動産流通を情報面から支えるITインフラが整っている国もあります。諸外国の動向を取り入れるのがうまい日本ですから、この先、FSBOのような取引形態が増えるでしょうし、不動産流通を支える情報インフラも整備されていくと思われます。
この先の日本の不動産取引は、取引を判断するための情報量が増え、取引形態の多様性は増して、不動産仲介手数料は低くなる方向を予想しています。そういう時代はすぐそこに迫っているでしょう。
情報出典「International Real Estate Review, 2002 vol.5」