不動産仲介手数料の無料あるいは半額をうたう不動産会社が出始めています。
不動産の投資を考えるとき、物件の価格や受け取れる賃料水準を気にする方は多いでしょう。その一方で、不動産仲介手数料は、購入金額の「3%+6万円」(税別)を一般的なものとして、あまり気にしない方もいるかもしれません。しかし、国土交通大臣が定めているのは手数料の上限なので、それ以下の手数料でもいいわけです。そこで不動産仲介手数料に注目して、不動産仲介手数料が投資リターンに与える影響を見ていくことにします。
不動産仲介手数料
まず、一つの投資用不動産を想定します。
物件価値:2,000万円
想定賃料:初年度144万円(年額)(月額12万円)
管理費等:21万円(年額)
次に、この物件の不動産仲介手数料を考慮した「取引価格」を考えます。比較のため2パターンを用意しました。
1. 売り手側、買い手側ともに3%を負担
2. 売り手は手数料ゼロ、買い手は手数料半額(1.5%)を負担
物件の価値は2,000万円です。売り手は「手取りで」2,000万円欲しいと思い、物件価格に売り手が負担する仲介手数料を上乗せして売ると想定します。
なお、簡略化のため、どちらも「+6万円」と消費税は考慮しません。
そうすると、以下のようになります。
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ケース1. 売り手3%、買い手3% |
ケース2. 売り手0%、買い手1.5% |
物件価値 ① |
2,000万円 |
2,000万円 |
売り手の手数料 ② |
60万円 |
0円 |
買い手の手数料 ③ |
60万円 |
30万円 |
買い手の必要資金額 ①+②+③ |
2,120万円 |
2,030万円 |
シミュレーション
同じ物件を、Aさんは2,120万円(ケース1)で、Bさんは2,030万円(ケース2)で購入したとします。
AさんもBさんも、取引金額に対して10%の頭金、90%のローンで購入します。ローンの金利はともに2.5%、期間は30年の元利均等返済です。
Aさんは頭金が212万円、ローンが1,908万円。
Bさんは頭金が203万円、ローンが1,827万円
物件は同一なので、賃料の水準などはAさんもBさんも同じ条件です。当社が持っているデータをもとにすると、賃料と物件価格は以下のように減価していくと推定できます。
まず20年間の想定賃料です。
次に、物件価格の推計です。
当社の推計では、20年間で獲得できる賃料の総額は、2,633万円。20年後の売却予想額が1,441万円となりました。この条件で20年間の投資期間を想定したIRR(総合的な利回り)は、
Aさんのケースで年13.9%
Bさんのケースで年16.3%
AさんとBさんの利回りの差を考えます。
Bさんは、不動産仲介手数料の負担が少ないため、購入時の総支払額がAさんよりも90万円ほど少なくなりました。購入時の総支払額が少なければ、ローンの金額も少なくて済みますし、利払いの負担も減ります。
手数料の負担の違いによって、総支払額もローンの総額も、ローンの利払い負担も、Bさんの方が少なくて済みました。同じ物件に投資するにしても、コスト負担の低い方が高い利回りを実現できます。
まとめ
冒頭にも述べたように、不動産仲介手数料は「上限」が定められているだけなので、一時的なキャンペーンによって手数料を割り引くことはこれまでにもありました。最近では不動産取引のIT化も進み、広告や情報提供の仕方を工夫するなどの企業努力によって、不動産仲介手数料を引き下げる動きもみられます。
仲介手数料の負担が減れば、その分不動産投資としては高いリターンが期待できます。十分な情報が提供される中で不動産仲介手数料が引き下がることは、投資家にとって歓迎すべき動きと言えるでしょう。