法令改正で負担が増える税…「争族」回避のカギは生前の相続対策!

法令改正で負担が増える税…「争族」回避のカギは生前の相続対策!

法令改正で負担が増える税…「争族」回避のカギは生前の相続対策!

 相続税の対象になる人が急増する!といわれる2015年の相続税改正。最大の注目点は、相続税の基礎控除の大幅縮小だ。これまでの基礎控除の6割まで引き下げられる。

 相続税は、富裕者限定のものではなく、一般の人にも関係するものという流れが強まりつつある。だからこそ、主な対策は「転ばぬ先の杖」として誰もが覚おくべき知識だろう。

 相続税対策を考える際、相続が発生してから行える対策はほとんどない。すべて生前に対策を済ませておく必要がある。具体的な対策の中でも、相続をする方が生きているうちに、相続人に財産を贈与する「生前贈与」が有効だ。これにより、財産を減らしていけば、相続発生時に節税できる。だが、一方で、贈与税がかかってくるため、贈与税と相続税の合計金額が一番低くなるように考え、対策を練る必要がある。

毎年110万円まで非課税になる暦年贈与

 生前贈与をお考えの方にぜひ覚えて頂きたい仕組みは「暦年贈与」である。

 暦年贈与とは、暦年といわれる1月1日から12月31日までの間に、「贈与を受けた金額が110万円以内」であれば、贈与税がかからないという制度である。これは一度きりではなく、毎年110万円まで贈与税がかからないため、例えば、5年間に渡って行った場合、110万円×5年で550万円分を相続財産から減らすことができる。

 この暦年贈与と最近、話題のNISAを組み合わせた相続対策も一案だ。子や孫の相続人名義でNISA口座を開き、NISAの非課税枠100万円を使って、運用してさらに資産を増やすという方法である。攻めの相続対策といえよう。

 暦年贈与の注意点は、生前贈与の対象となる相続人の預金通帳を、相続人本人が管理することだ。たとえ通帳の名義が相続人になっていても、贈与者が通帳を管理していれば、「実態のない生前贈与」として、税務調査が入った際に否認される恐れがある。あくまでも、生前贈与で使う通帳は、相続人本人が管理しなければならない。

2500万円まで贈与税のかからない相続時精算課税贈与

 相続時精算課税贈与とは、60歳以上の親から20歳以上の子や孫への贈与であれば2,500万円まで贈与税がかからないというもの。

 これを利用すれば、贈与時に税金をおさめなくても、相続人に財産を与えることができる。ただし、贈与者が亡くなった際には、この制度を使って相続した財産と、通常の相続財産を合算して相続税を計算する必要がある。

 この制度を利用すれば、将来、値上がりが予測される不動産を事前に贈与することで、「贈与時の時価」で相続税を計算でき節税効果がある。また、現金を贈与することで相続人の住宅ローン返済期間を短くすれば、その分の金利が浮く。このように使い方次第で、様々なメリットが得られる。

 ただし、一度相続時精算課税贈与を選択した場合、途中で暦年贈与に変更することはできないため注意が必要だ。

 また、孫(30歳未満)に対しては、教育資金として贈与することで1,500万円まで非課税になる枠もある。ただし、これは期間限定の制度なので、2015年12月31日までに手続きを済ませておく必要がある。

居住用不動産、保険、アパート経営を活用した相続対策

 ここまで解説してきた主な対策の他にも、有効な相続税対策がある。一気にご紹介していきたい。

 長年連れ合った配偶者(婚姻期間20年以上)がいる方におすすめなのが、2,000万円までの居住用不動産の贈与税非課税の制度だ。通常の贈与の場合、相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算されるが、この制度を利用すれば加算されない。相続開始の年に行った贈与でも有効だ。同じく住宅に関連する制度が、住宅用家屋の新築・取得・増改築等の資金提供による贈与である。直系尊属である子や孫への贈与だけに使え、一定金額まで非課税(平成26年度は1,000万円まで)となる。

 健康な方におすすめなのが、生命保険の活用である。生命保険は、500万円×法定相続人数までは相続税がかからない。生命保険は若い人しか加入できないというイメージもあるが、貯蓄性が高い一時払保険なら、高齢でも加入が可能なケースもある。また、生命保険には、受取人を指定することで遺産分割や手続き面でも煩雑にならないというメリットもある。

 所有している土地や土地購入により、アパートを経営するのも一案だ。
土地にアパートを建築して経営すれば、建物部分が貸家として評価されるため、相続税評価額が約30%~40%減額される。固定資産税も減額されるため、現金での贈与よりも評価額が抑えられる。

 相続税対策をいろいろとみてきたが、いずれも「生前の対策」がメインだ。相続が「争続」とならないよう、しっかりとした相続税対策を設計し、実行していきたい。

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