(写真=REISM meets rigna)
2014年の消費増税後も価格が上昇している日本のマンション市場ですが、中古マンション市場はどのような動向を見せているのでしょうか。日本の中古マンション市場の規模はどのくらいなのでしょうか。今回は中古マンション市場の特徴と、現在の動向、今後の予測について解説します。
中古マンション市場は拡大中?
日本ではもともとマンションは新築の方が人気でした。しかし最近では中古マンションの需要も増加しており、中古マンション市場は拡大傾向にあります。背景にあるのは、中古マンションに対する抵抗感が薄れたことがあります。日本人は不動産以外でも新品を好む傾向がありました。しかし近年は衣服や本、家具などを中心に中古市場が拡大し、マンションも中古物件に対する抵抗感は少なくなったという消費者が増えているのです。
中古マンションには、新築にはないメリットもあります。新築の場合は完成する前に契約する必要があり、できあがった状態は事前に自分の目で確認することができません。中古物件はすでに完成しているため、事前に自分で確認することができます。しかし、もっとも大きいメリットはやはり新築に対して割安であるという点でしょう。中古マンションでもリフォームやリノベーションをすると数十万円〜数百万円単位のコストがかかりますが、それでも新築よりも何割か安くなるのが一般的です。このような中古マンションのメリットを消費者が重視し始めました。
また、格安で中古物件を購入し、自分の手で修繕・リフォーム・リノベーションをする、という動きも出てきています。まだ一部の消費者の動きでしかありませんが、今後少しずつそのような人も増えていくと考えられます。
中古マンションの流通市場の変遷
もともと日本のマンション市場は、新築の市場に比べて中古市場が非常に小さい、という特徴がありました。しかし約25年前の平成初期から比べると、中古マンション市場の規模は、新築市場の5%程度から13%程度へと、確実に拡大してきています。中古マンション市場が小さいと、住み替えのコストが高く、消費者は用意に住み替えることができないデメリットがあります。そこで政府も中古住宅市場を拡大するために、「日本再興戦略(2013年)」などで、中古住宅の基準の整備や評価に関わる指針の策定を行なうことを掲げています。政府は2022年までに中古住宅全体の流通量を倍増させることを目標として設定し施策を進めています。
さて、消費者の中古マンションの選好が強くなったこと、政府の政策の後押しなどの要因から、近年の中古マンション市場は拡大しています。2014年に消費税が増税された影響で、中古マンションの新規登録数は2015年10月現在までほぼ横ばいですが、平均成約単価は上昇し続けています。首都圏のデータを見ると、2011年〜2013年あたりまで平均成約単価は2500万円ほどでしたが、2015年8月には2800万円を超えています。つまり高額物件の取引数が増えているのです。近畿エリアで見ても、2011年〜2013年までは平均成約価格は1700万円前後でしたが、2015年に入ってからは1900万円を超える月もある程です。中古マンション市場は拡大していることが分かります。
現在の動向としては、アベノミクスによる低金利と金融市場の活況、外国人投資家の日本の不動産市場への投資拡大、オリンピックの影響、相続税対策としての不動産利用の増加など複数の要因から、不動産市場全体が拡大していることが分かっています。これらの要因が中古物件への選好の拡大から、中古マンション市場の拡大にもつながっており、それは今後も続いていくと考えられます。
一般的に、日本の不動産市場は長期的・マクロな視点で見ると縮小していくことが予測されています。それは少子高齢化・人口および世帯数減少社会が現実のものとなっていることや、国内の不動産の数が飽和状態にあり空き家対策が課題となっていること、などが背景にあります。そのため中古マンション市場も同様に縮小していくと考える人も多いかもしれません。しかし、短期的・ミクロの視点で見ると、すべての市場が縮小するわけではありません。
まず、これからの日本はエリアによって人口の流入の多い地域と流出の多い地域とに二極化していくことがほぼ確実です。現在すでに地方から都市部への人口の流出は加速しており、財政難の自治体が増えている一方で、財政に余裕があるために新しい施策を実践し、さらに魅力を高めている自治体も増えています。今後は日本全国で人気なエリアとそうでなエリアは二極化していくため、人口が流入するエリアでは不動産市場も好調が続くでしょう。
また、時間軸で見ると2020年ごろまでは、オリンピックや金融緩和の影響から、不動産市場の長期的な好調は続くのではないかと考えられます。日本のデフレ脱却は時間がかかると考えられるため、消費増税も控えている現在、金融引き締めへの転換は難しく、最低でも3年〜5年は低金利が続くのではないでしょうか。オリンピックの影響もあり、特に首都圏では不動産市場の活況が続くことが考えられます。
これらの要因と関連して、中古マンション市場は拡大していくことが予測できます。全国に800万戸ある空き家が問題となっていますが、半数以上はマンションであり、空き家物件の活用が増加してきていること、消費者が徐々に新築から中古市場へと流入しているという動きがあるからです。エリアにもよりますが、「不動産市場全体の活況」と「新築市場から中古市場への消費者の選好の移転」が今後も続けば、中古マンション市場は拡大していくと予測できるのです。
中古マンションは個別性が高い?
今後の中古マンション市場のポイントをまとめると以下のようになります。
①不動産市場全体の拡大から中古マンション市場も拡大
②新築市場から中古市場へ消費者は移行
③エリアごとに格差が拡大するため、投資家は物件の判断をより正確に行なう必要性がある
今後の日本の中古マンションの流通市場はエリアごとに格差が拡大すると紹介しました。そのためどのエリアの物件が投資価値が高いのか、投資家は正確に判断なければなりません。しかし、中古マンションは個別性が強く適正な価格・相場が分かりにくいという欠点があります。投資する上で適正価格が分かりにくければ、利回りやリスクの計算やマネープランの作成が難しくなってしまいます。不動産会社は売ることを前提に話を進めるため、情報は100%は信用できません。最近では無料で取引データが公開されている情報サイトも公開されていますが、個人でできる調査には参考程度の価格しか把握できません。どのようにして適正価格を判断するか、というポイントが紹介されている本やサイトも存在しますが、結局は投資家個人がそれぞれ自分の裁量で判断しなければならない状態です。
現在政府も中古市場拡大の政策を進めていると紹介しましたが、中古物件の適正価格に関する情報を開示するようにすれば、中古マンションの流通市場はより拡大していくでしょう。