アジア諸国、不動産取引、規制、税制、規模の国際比較

アジア諸国、不動産取引、規制、税制、規模の国際比較

不動産の国際比較
(写真=PIXTA)

 国内を対象として投資している不動産投資家の方の中には、ある程度国内での投資で経験を積んで、今度は海外に目を向けたいという人も多いでしょう。しかし、不動産市場が熱いと言われるアジア諸国に投資しようとしても、規制や税制、取引制度の面で、障害があることもあります。今回はアジア諸国の不動産取引の制度の実態について、比較していきましょう。

アジア諸国の不動産市場の実態

 アベノミクスによる金融市場の活況で、日本の不動産マーケットも好調です。しかしより高いリターンを得たいと考える投資家は、海外に目を向けるのではないでしょうか。どこの国の物件でも、不動産投資によって利益を得る方法そのものは変わりません。知識と経験、情報、資金があればどこの国の不動産でも売買することができるのです。しかし、海外不動産への投資には、ある問題があります。アメリカや欧州の主要先進国ならばあまり障害にはなりませんが、アジア諸国への投資ならば、その国の税制や外国人投資家への投資の規制、取引制度などが障害になることがあります。いくら大きなリターンが見込める国の不動産でも、税率が高かったり、そもそも外国人投資家への規制が強く投資すること自体ができないケースもあり得るのです。それでは、アジア諸国の不動産取引の制度を、それぞれ見てみましょう。

■ タイ

 東南アジアではASEANが統合を控えていることもあり、経済成長の期待から投資が活発化しています。特にASEANの中心国となるタイでは、不動産市場は加熱しています。ASEANの中では先進国でありバーツは金融取引においても多く取引されている通貨です。国内市場は大きく、観光のため世界中から旅行者が訪れます。タイは日本に比べて物価がずっと安いため、不動産市場が加熱しているといっても、日本の物件の3分の1程度から物件を購入することが可能です。特に観光地として有名な都市「パタヤ」などでは、都市部の人が休暇に利用する目的でコンドミニアム(マンション)を購入したり、外国人投資家が投資目的で購入する取引が非常に増えており、巨大な市場になっています。

タイの税制
 タイには日本で言うところの不動産取得税や固定資産税がありません。そのため、物件を取得したあとの税金面での維持費を抑えることができます。また不動産業界は政府に対して不動産に対する優遇政策を実施するように要請しており、期間限定ではありますが不動産の登記料も軽減税率が適用されるようになりました。タイでの不動産取得・保有に関する税制は以下です。

  • 印紙税
  • キャピタルゲイン税
  • 特別事業税
  • 土地家屋税
  • 開発税

 不動産取得時には印紙税がかかり、原則的には賃料1000バーツごとに1バーツ課税されます。保有時には土地家屋税がかかりますが、居住用の土地・建物には課税対象となりません。開発税も居住用物件にはかかりません。

タイの外国人投資家規制と制度
 タイでは非居住者による土地の所有は認められていません。しかし建物の所有は認められています。コンドミニアム(マンション)については、外国人投資家でも全ユニットの総面積の49%を超えない範囲の所有ならば、認められています。49%以上ならば登記が認められません。

 また、タイでは日本での都市計画にあたる土地制度があり、原則として土地は区分で決められた用途でしか使うことができません。土地区分は14種類あり、住宅地や商業地、工業地、倉庫、農地などに分けられています。多くの不動産投資の場合は、住宅地もしくは商業地に限られるでしょう。タイでの外国人による不動産取引は、アメリカやシンガポールが活発に行なっており、人気です。人気なのはバンコクですが、その他主要都市や観光地での取引も活発になっています。

■ マレーシア

 日本の富裕層や海外不動産を対象にした投資家にもっとも人気なのはマレーシアです。住みたい国ランキングで第1位を連続で獲得しており、物価も安いです。マレーシア不動産が人気なのは、割安なわりに物件は広く、デザイン性やセキュリティに優れているということ、外国人投資家でも簡単に取得でき、取得・保有・売却まで費用が安いという理由があります。また経済成長率も高く、これからまだまだ成長が見込まれているため、いまだに投資は増えています。

マレーシアの税制
 マレーシアの不動産取引に関連する税制は、日本に比べてずっと低くなっています。不動産取引で適用されるのは以下の税制になります。

  • 印紙税
  • 不動産譲渡益税
  • 固定資産税

 不動産取得時には印紙税がかかります。印紙税は累進課税制になっており、例えば3000万円の不動産の場合は、印紙税は約72万円になります。不動産譲渡益税は、保有期間2年以内の物件には15%、5年以内の物件には10%、5年以上の物件はゼロ%に設定されています。不動産保有時の税金は固定資産税のみになっており、100㎡程度のマンションの場合は、年間1000リンギッド〜2000リンギット程度となります。現在のレートで、日本円換算で2万8000円〜5万6000円程度となります。

マレーシアの外国人投資家規制と制度 
 マレーシアでは外国人投資家の不動産取引は容易だと言われています。実際、政府が外資の導入を推奨しているため、他の国に比べると規制が少なく不動産投資家にとっては、障害の少ない国です。ただし外国人投資家は、物件の最低購入額が50万リンギット以上でなければならないという制度があります。現在のレートで1400万円程度ですので、そこまで大きな規制ではありません。またアジア諸国で唯一、非居住外国人でも住宅ローンを申請することができます。審査は厳しくなっていますが、まだまだ投資先として魅力的です。

■ シンガポール

 エレクトロニクス産業や精密機械の製造、金融やIT産業を主要産業としているシンガポールも、やはり海外投資家に人気です。一般的な中国人投資家は、多くがシンガポールの不動産に投資しており、外国人投資家は非常に多いです。ここ数年は経済は低迷していますが、まだまだ潜在的な体力に期待ができます。シンガポールというと華人がほとんど、というイメージですが、マレー系やインド系の民族も多く、多民族・多宗教国家です。物価は先進国並みに高く、不動産取引において割安感はありませんが、高いリターンはまだまだ期待できるでしょう。

シンガポールの税制
 シンガポールは、実は税率が高いことで知られています。不動産取引に関わる税制は以下です。

  • 印紙税
  • 追加印紙税
  • 不動産所有に関する税

 不動産取得に関しては、印紙税および追加印紙税が課税されます。印紙税は累進課税制で、最大で不動産の市場価格の3%近くになります。また2011年以降は不動産取引に関して、追加印紙税が課税されることになり、居住用不動産に関しては印紙税が15%追加されることになりました。これは取得時だけでなく売却時も適用され、所有1年以内での売却は16%、2年以内は12%、3年以内は8%、4年以内は4%となりました。不動産保有時には、不動産評価額に対して10%が課税されます。2014年以降は非居住用物件に対しては、累進課税が適用されることになりました。

シンガポールの外国人投資家規制と制度
 外国人投資家は、多層階住宅アパートのユニットや認可を得たコンドミニアムなどに限って、投資することができます。一戸建ては居住用として一軒に限って保有が取得が認められます。金融サービスに関しては、外国人でも投資目的でもサービスを受けることができます。しかし、トータルで見ると税制のハードルもあって他国には見劣りします。

■ フィリピン

 日本から近く、日本からの留学や旅行者が多いフィリピンですが、フィリピンの不動産マーケットは、日本に比べて非常に割安であることで人気です。不動産価格は日本の4分の1ほどで、手軽に物件を取得することができます。経済成長も続けており、不動産市場も活況になっています。

フィリピンの税制
 フィリピンの税制は以下のようになっています。

  • 印紙税
  • 不動産移転税
  • 付加価値税
  • 固定資産税

 不動産取得時には、印紙税が約2%、不動産移転税が約0.5%かかります。不動産保有時には1%〜2%が課税され、さらに特別教育基金として1%が加算されて課税されます。ただし外国人に対しては、所得税に関して累進課税が課税されるため、注意が必要です。

フィリピンの外国人投資家規制と制度
 外国人投資家はコンドミニアムの総面積の40%までの保有が認められています。外国人投資家への規制は少なく、制度の面でも投資しやすい環境が整えられています。

アジア諸国の不動産取引の制度は違いが大きい

 今回はタイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンの不動産市場、税制、制度を解説しましたがいかがだったでしょうか。アジア諸国全体を見ると不動産市場は活況になっているように見えますが、それぞれの国を見ると、税制や規制の面でかなりちがいがあることが分かると思います。海外での不動産取引をする上では、不動産市場の規模だけでなく制度や取引慣行などまでも詳しく調べるようにしましょう。

 

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