物件探しにマイナスに働く不動産相場の問題点

物件探しにマイナスに働く不動産相場の問題点

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相場を分析できない不動産業界 

 オリンピック景気の期待に活況となっている昨今、資産形成における不動産の役割が再び注目を集めるようになってきました。毎週開催されている投資不動産会社各社のセミナーには、数多くの参加者が詰めかけ、不動産への期待の高まりが感じられます。

 しかし一方で、わが国において不動産市場価値を補足する手法は、いまだビジネス上きちんと確立されておらず、前近代的な手法に頼っているのが現状です。

 不動産業界はKKDの業界、つまり勘(Kan)と経験(Keiken)と度胸(Dokyo)の業界と呼ばれています。他業界では当たり前であるはずの、データを分析するという手法の蓄積が、現状あまりされてない業界なのです。特に住宅不動産に関しては、その多くが近隣の物件価格との比較といった相場感のみで取引が行われています。「同じものはない」という不動産資産の個別性の高さも理由の一つひとつですが、不動産事業者がそもそもマーケットのデータをもっていないというところに最大の原因があります。

 たしかに不動産業界には、共通の取引データベースであるREINS(レインズ)という法律で登録が義務付けられているシステムがあります。しかし実態は有名無実化しており、分析データとしての高い精度はほとんど期待できていません。

 他方で国交省による不動産のネット取引の一部解禁が開始されるなど、業界を取り巻くインフラが大きく変わろうとしています。こうした時代背景の中、不動産に関する専門的な調査・分析ノウハウが、これからの不動産取引の強力なツールとなっていくはずです。

不動産取引についての問題点

 宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が専任・専属専任媒介契約を締結したときは、一定の物件情報を指定流通機構に登録することが義務付けられています。そのシステムが、REINSです。REINSとは、REAL ESTATE INFORMATION NETWORK SYSTEM(不動産流通標準情報システム)の略称で、国土交通大臣から指定を受けた全国4ヵ所の不動産流通機構が運営している不動産情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・オンラインシステムの呼称です。 

 物件の媒介の際に、このREINSに物件情報を登録することで、全国の多くの不動産業者にその物件情報を周知し、取引の機会を増やすことが本来の狙いです。ところが、現実はその狙い通りにはなってはいません。

 この理由は、不動産仲介業特有の収益形態である「両手取引」にあります。不動産業者は売主と買主それぞれから手数料をもらうことができる、つまり両側からの収益授受が認められています(※媒介契約は代理人としての契約ではないので、民法の「双方代理」の禁止規定に抵触しません)。このため、手数料を稼ぎたい不動産仲介業者は、なるべく他の業者に物件を紹介させないように、売主の情報を「囲い込む」インセンティブが働きます。仲介業者にとってみれば、物件を在庫として抱えるわけでもなく、ただ仲介を依頼されているだけなので、取引を早く成約させるよりも、確実に両側から収益をとることの方が重要なのです。

 REINSに登録こそするものの、実際の問い合わせが他の業者からきた場合には、「今商談中のため、紹介できない」と断ってしまったり、そもそもREINSに登録すらしなかったりということもよくあります。某超大手不動産会社ですら、こうした囲い込みを積極的に行っているという事実は、不動産業者の間の常識となっています。売主にとってみれば、不動産業者の都合によって売却期間が延びるなどの弊害が生まれ、不利益を被ることになります。

不動産の相場情報

 こうした「囲い込み」は、不動産流通を阻害する原因と長らく指摘されてきました。2013年10月には、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が「登録物件の正当な理由のない紹介拒否行為の禁止」を利用規程に追加しました。しかし、どれだけの効果があるかは疑問視されています。またこうした現状は、REINSへの登録データの偏りを生むことになります。つまり自社で決められないような条件の悪い物件だけが登録されるようになりがち、になるのです。

 逆に、不動産の情報を掲載している民間の不動産ポータルサイトに目を転じてみても、ほとんどのサイトで過去の掲載データを公開していません。掲載情報は、住所や物件基本的な情報と写真などにとどまり、消費者が価格の妥当性を評価できる仕組みにはなっていません。

 たとえば、アメリカの不動産ポータル市場と比較してみましょう。有名なところでZillow, Elistit, Trulia, Redfin, Market Leader, Estately, ZipRealty などがあります。その中でもZillow, Elistit, Truliaはメディア型の不動産情報のポータルサイトで、日本と同じように収入源は主に広告収入です。各サイトではいずれも住所を入力するだけ、といった簡単な操作で当該地域の売り出し物件情報を検索することができます。

 また写真やマップ以外にも、過去の取引事例や価格相場のトレンドなども一目でわかります。アメリカ不動産市場は、こうした豊富なデータに基づいて分析できる点が先進的といえます。しかし日本の不動産ポータルサイトで、こうした相場情報を掲載している会社はありません。

 なぜなら不動産の過去の取引価格を掲載するのは、実は不動産業者にとって都合の悪いことだからです。不動産価格の上昇期には消費者に割高なイメージを持たれてしまいますし、不動産価格の下降局面では、先安予測から買い控えにつながってしまう恐れがあるためです。不動産会社をクライアントとしているポータル会社にとって、不動産会社の取引を妨げる要素はできるだけ載せたくない、というところが本当のところではないかと思います。

 そのため不動産ポータルサイトに掲載されている物件は、現時点の募集価格しかわからない状況になっているのです。TPPの協議が進む中、不動産業界もアメリカ同様の情報の流動性が高まる時代がくることが予想されます。日本でも不動産情報を客観的に調査分析できるサービスの一日も登場を待ちたいところです。

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