不動産投資家にとって、中古マンションの価格推移を知っておくことは重要です。中古マンションの価格推移をあらわす指標はいくつか存在し、それぞれに特徴があります。それぞれの特徴を抑えた上で、どのように指標を活用することができるのか見てみましょう。
不動研価格指数
不動研価格指数とは、「一般社団法人日本不動産研究所」が発表している、中古マンション価格の推移を表す指数です。不動研価格指数は、不動産流通機構に登録されている不動産取引のから、実際の成約価格情報に基づいて算出されます。
不動産流通機構とは、日本全国を4つのエリアに分け、それぞれのエリアで運営されている機構です。東日本は「東日本不動産流通機構」、中部圏は「中部圏不動産流通機構」、近畿圏は「近畿圏不動産流通機構」、西日本は「西日本不動産流通機構」が運営しています。
不動産流通機構には、全国の主要な不動産会社が契約しており、物件のデータを登録しています。たとえば不動産を買いたい人は、不動産会社にいって条件を提示しますが、その不動産会社は条件に該当する物件があるか、不動産流通機構のデータベースを利用して調べることができます。そのため膨大な不動産取引のデータを蓄積しているのです。不動研価格指数は、その東日本不動産流通機構のデータから提供された首都圏中古マンションの成約価格情報から、同一物件の価格変化に基づくリピート・セールス法で算出されます。2011年に開始した東京証券取引所の「東証住宅価格指数」を引き継ぐものであり、指数の正確さ、信頼性が非常に高いのが特徴です。
不動研価格指数は、日本不動産研究所のサイトから閲覧することができます。首都圏の中古マンション市況がどのような状況にあるのか、時系列で見た不動産価格の動向を知ることができます。
IPD/リクルート日本住宅指数
リクルート日本住宅指数は、「リクルート住まい研究所」の発行する日本の不動産価格に関する指標です。リクルート日本住宅指数は、リクルートの運営するリクルート住まいカンパニーのデータから、取引が成立したため掲載が停止された価格情報に基づいて作成されている指標です。
リクルート住宅指数の特徴は、週単位でデータが更新されるという点です。週単位でデータが更新され、月単位で指標が作成されます。多くの指数やデータは月単位で更新されるため、最新の動向がリアルタイムで反映される更新の早さは、リクルート住宅指数の強みです。
リクルート住宅指数にはもう一つ特徴があります。リクルート住宅指数は「ヘドニック型時系列インデックス」と呼ばれるもので、このヘドニック型には3つの特徴があります。1つはその物件の特性や立地など、たとえば築年数や駅からの距離などを区別して評価することができるという点です。つまりより詳細な指標から価格変化を見ることができるということです。2つめは、指標は人の点で作成されているわけではなくコンピュータで算出されるため、人的なバイアスがないということです。3つめは市場の変化、たとえば金利の変動や税制の変化なども敏感に反映するという点です。つまりヘドニック型という統計手法では、個別物件の属性による価格の偏りを排除し、偏りをなくした上で時系列的な価格変化を抽出して指標にしているのです。
リクルート住まいカンパニーから提供されるデータは、実際の市場での取引を目的とした情報であるため、物件による属性によって品質が異なります。たとえばある時期のあるエリアでの平均価格を見ようと考えた場合、その時期そのエリアにまったく同質の物件ばかりがあることはあり得ません。まったく質の同じ物件は2つと存在しませんので、平均価格も市場の変動以外の要因で大きく変わってきます。IPDその属性による偏り分を調整して正確な市場の動向を反映することができる指標なのです。
リクルート住宅指標はリクルート住まい研究所のサイトから閲覧することができますが、過去の掲載分やエリア別・駅別のものは問い合わせなければ見ることができません。より詳細なデータを必要とする方は、住まい研究所のサイトから問い合わせてみましょう。
東京カンテイ
「東京カンテイ」は、株式会社東京カンテイが運営する会員制の不動産情報サイトで、不動産に関する情報やデータの提供に特化したサービスを運営しています。不動産デベロッパーだけでなく金融機関や公的機関なども、多岐にわたって利用しています。
東京カンテイの提供する指標は、株式指標をマンション価格の推移が分かるようにアレンジした指標です。指標には「PBR」と「PER」の2つがあります。もともとPBRとは「株価純資産倍率」、PERとは「株価収益率」のことです。これをマンションに当てはめたのが東京カンテイの指標ですが、ここでPBRとはある期間に分譲されたマンションが、中古マンション市場に登場するときに新築価格の何倍になっているか、という指標とされています。以下のような計算式で計算されています。
PBR=中古マンション価格÷新築マンション価格
多くのマンションは当然新規分譲時よりも中古販売時の方が安くなりますので、PBRは1倍以下になるのが通常です。まれに1倍を超える物件もありますが、これは新規分譲時に割安だったということですので、売却時にキャピタルゲインが期待できます。買ったときよりも高く売ることができるということです。つまりPBRは大きいほどいいものです。東京カンテイの指標は過去10年間に販売されたマンションの70㎡換算価値を駅ごとに算出して計算しています。PBRでは10年前に購入したマンションが、10年後にはどのくらいの価格で売れるのかを表しています。
PERは、現在分譲されている新築マンションの価格が、周辺の分譲マンションの賃料の何年分に相当するか、という指標です。PERの数値が小さければ小さいほど、賃料相場よりも割安で分譲されているということができます。つまり収益性が高いわけです。PERが低いほど賃料に換算して短期間で投資資金を回収できるということになります。東京カンテイのPBR、PERを駆使すればもっとも合理的な投資先物件を見つけることができます。以下のような計算式で計算されています。
PER=マンション価格÷賃料(年間)
PBRとPERの指標をうまく使えば、実際に投資する物件を探す上で非常に有利に物件選びを行うことができます。居住する目的のみならば、PBR、つまり資産性だけを気にすればいいかもしれませんが、投資目的ならば収益性を判断するPBRもリサーチしておくことは必須です。
それぞれの特徴を踏まえて
中古マンション価格推移を知るために、いくつかの機関から発行されている指標を参考にするのは、不動産投資の第一段階で行うべき作業です。指標を見ることで物件の相場や、割安・割高であるかという判断、収益性・資産性の判断の材料になります。今回ご紹介した3つの指標の、それぞれの特徴を踏まえて活用してはいかがでしょう。