不動産テック 不動産情報のIT化における国土交通省の取り組み

ITと政治

 最近になってフィンテックの不動産バージョンである「不動産テック」が急に話題になるようになりました。不動産テックとは、不動産業界でのIT化の潮流のことです。不動産業界の成長のために国土交通省は様々な取り組みをはじめています。今回は、不動産テックと国土交通省の取り組みについて解説します。

不動産テックの潮流

 金融業界でのIT化の波である「フィンテック」は、2000年代に入ってからアメリカを中心に拡大しています。ネット上での金融取引やビットコインなどの仮想通貨の利用の拡大などは、もはや一般的なものへとなりつつあります。金融業界に遅れて2010年代に入ってから、徐々に「不動産テック」の潮流が巻き起こりました。金融業界での「フィンテック」、広告業界での「アドテック」のように、既存業界へのITの浸透による革命が大きな流れを起こしているのです。
 不動産テックとは、不動産取引の売買や仲介などをネット上で完結させる新たなサービスのことです。アメリカではじまり、日本でもここ数年で取り入れられるようになりました。不動産業界では不動産仲介業者などの事業者側と、不動産を売買したい投資家や一般消費者との間に大きな「情報の非対称性」があります。消費者は取得したい物件の部分的な情報しか得られず、事業者に対して情報量で圧倒的に不利な状況で取引しなければなりません。情報の非対称性や不透明さから、不動産業界に距離を感じてしまうのが一般通念ではないでしょうか。
 不動産業界における情報の非対称性や、取引の不透明さなどの問題を解決する上で「不動産テック」に注目が集まっているのです。消費者が充分な情報を取得した上で円滑な取引ができるように、ITの活用が模索されています。不動産テックはたとえば、ネット上で取引を完結させる「ネット不動産」と言われる会社の登場をもたらしました。また、ネットから気になる物件の内覧を予約することができるサービスや、ITの活用による新たな相場情報データベースの開発などもはじまっています。アマゾンや楽天では、購入履歴からおすすめ商品が紹介されますが、人工知能の活用によって、自動的におすすめの物件を紹介するサービスもはじまりそうです。

 しかし、このような不動産テックの動きには問題もあります。これまでの不動産に関わる法律や規制は、既存の不動産業界の構造に合わせて形成されたものでした。そのため、不動産テックのような新たな動きには、法律・規制・ルールが追いついておらず、これらが不動産テックの潮流の障害となりつつあるのです。

国土交通省による取り組み

 そこで、不動産業界を管轄とする国土交通省は、不動産情報のIT化をすすめるために様々な取り組みをはじめました。不動産テックの普及のためには、不動産関連データの電子化が前提になります。国土交通省の収集している不動産関連データは、「土地総合ライブラリー」で公開されています。現在国土交通省が公表している、不動産関連データをご紹介しましょう。

土地の価格

・地価公示
 地価公示とは、毎年の1月1日における「標準地」の価格を公表しているもので、毎年3月に発表されています。標準地とは、全国2万3380地点で定期的に観測するポイントとなっているもので、国土交通省土地鑑定委員会が調査しています。このデータは、土地の取引、不動産鑑定、相続評価、固定資産税の評価などに対しての指標としての役割があります。不動産取引において、当該エリアの土地の平均的な価格を調べる上で参考にすることができます。

・不動産取引価格情報
 実際の取引がどのような価格で行われたのかの指標となるのが、不動産取引価格情報です。「土地総合情報システム」として運営されており、ほぼ全国の宅地、中古マンション、農地、林地などの情報を得ることができます。情報は取引価格だけでなく、所在するエリア、取引時期、面積、築年数、建物の用途など具体的な情報を網羅することができます。不動産取引においては、そのエリアで同じような条件では、どの程度の価格で取引されているのかを調べることができますので、非常に便利です。

・不動産価格指数(住宅)
 エリア別の不動産の取引価格を、毎月指数化しているのが「不動産価格指数」です。不動産の価格指数は、リクルートや日本不動産研究所も発表していますが、国土交通省の発表する指標ということで信頼性が高いです。毎月発表されるため、当該エリア、当該期間における不動産市況を見るのにもっとも適している指標です。またこの指標を補完するものとして、毎月の取引件数と取引面積の指標である「不動産取引件数・面積」も公表されています。

・主要都市の高度利用地地価動向報告
 主要都市で不動産鑑定士が地価動向を収集し、地価動向を先行的に表す高度利用地等の地価動向を把握したレポートが「主要都市の高度利用地地価動向報告」です。四半期ごとに発表されます。

 そのほかにも土地取引規制の価格審査などの参考になる「都道府県地価調査」なども、国土交通省のサイト上で公開されています。

取引制度、データ

・土地取引件数、面積
 国土利用計画法に基づいて届け出された土地取引の件数・面積や、登記情報に基づいた取引件数・面積について、集計されて公表されているデータが「土地取引件数・面積」です。データは市町村ごとに集められています。このデータからは、全国の市町村別の土地取引の動向を、把握することができます。データは「土地取引規制基礎調査概況調査」と「土地取引規制実態統計」の2つがあり、後者は大規模な土地の取得状況を知ることができるデータです。
 土地取引規制実態統計では、全国を「東京圏」「名古屋圏」「大阪圏」「地方圏」の4つもしくは、「北海道・東北ブロック」「関東ブロック」「東海・北陸ブロック」「近畿ブロック」「中国・四国ブロック」「九州ブロック」の6つに分けて、大まかな土地取引動向がデータ化されています。

・土地保有移動調査
 同じく土地の取引状況を調査したデータとして「土地保有移動調査」もあります。このデータは、全国での過去1年間の土地取引について、売主・買主の属性、取引価格、目的などを調査したものです。これは一般向けというよりも、国土交通省の政策に反映させるための調査ですが、一般にも資料が公開されています。「土地保有移動調査」では、通常の取引から集計できる数値以外の、取引した主体が個人なのか、企業なのか、自治街なのか、どのような目的で購入したのか、などが明らかにされています。

 これ以外のデータとしても、企業の土地取引に関する「企業の土地取得状況等に関する調査」「企業の土地取引動向調査」「土地動態調査」や、国公有地の保有する土地に関するデータである「活用可能な国公有地等情報」などの国土交通省のサイト上で公開されています。

その他の取り組み−重要事項説明の電子化−

 国土交通省が不動産テックの普及のために実施している取り組みは他にもあります。その一つが「重要事項説明に関する社会実験」です。現在、不動産取引における「重要事項説明」は、宅地建物取引責任者が対面で行うように義務づけられています。しかし、不動産テックの普及で、ネット上で不動産取引が完結できるようになれば、この重要事項説明もネット上で行うようになることが考えられます。ネット上での説明では、距離や時間の制約がなくなるというメリットがある一方、無資格者が重要事項説明を代行する不正が発生しかねず、トラブルになりかねないという声もあります。
 2014年から2年間、ネット上での重要事項説明の社会実験が行われることになりました。この実験の結果次第で、実際にネット上での重要事項説明を認めるかどうかが決定されることになりました。不動産テックの動きでは、最終的にはネット上で不動産取引を完結することが目指されており、この実験結果がその大きな転換点になることが予測されます。
 不動産テックと国土交通省の動きは今後も様々な試みが実践されていくのは確実です。これからの不動産テックの発展に注目していくことにしましょう。

 

賢い不動産投資を始めよう

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2016年3月15日 7:30 AM カテゴリー: テクノロジー, 不動産投資, 事例・実践

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