不動産投資評価DCF法の確実性を高める統計手法

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不動産相場評価における将来予測の手法

 不動産の価格は、賃料を期待利回りで割ることで求めることができます。これを直接還元法といいます。

不動産投資評価DCF法の確実性を高める統計手法1

 価値変化、価格循環が起こらない市場では、上記この直接還元法によって適正価格を算出することができます。ただし現実には賃料は築年数に応じて減価し、期待利回りもサイクルによって上下動することになります。ヘドニック法において現時点の適正賃料、年度あたりの減価率が補足できたとしても、期待利回りがどのように動くのかを考慮しなければ、不動産価格の将来予測、ひいては根拠のあるターミナル・キャップレート(最終還元利回り)を設定をすることはできません。

 さらに言えば地域ごとの賃料の減価率自体も、インフレ率などにともなって変化します。そうした複雑な要素を盛り込みつつ、不動産価値の将来の変化をどのように予測すべきでしょうか。

 もちろん将来を正しく予見できる人はいませんので、将来その推定には確率予測で代替することが合理的です。確率予測の手法として、予測できないことをシミュレーションできるモンテカルロ法を紹介します。

 モンテカルロ法とは、様々さまざまな事象を、乱数を用いて数千回から数万回シミュレーションすることで、発生確率を予測する手法です。サイコロやルーレットなど、予測できないランダムな数「乱数」を用いることから、モナコ公国のカジノ地区であるモンテカルロにちなんで命名された手法です。

不動産投資評価DCF法の確実性を高める統計手法2

 図2は、賃料と期待利回りがいくつかの変数に基づいて変動すると仮定した場合のシミュレーションモデルです。賃料は世帯数と消費者物価指数、可処分所得に依存して確率変動します。また期待利回りは実質金利、マネタリーベース、賃料の将来予測変化、景気動向指数に依存すると仮定します。こうしたマクロ指標を、乱数を用いてシミュレーションすることで、将来時点の賃料、と期待利回りを予測することを可能にする手法がモンテカルロ・シミュレーションです。

不動産市場の将来予測シナリオ

 たとえば、世帯数の確率予測としては大別して3つのシナリオが想定されます。

【上位】 現状の増加率のまま推移
 ⇒増加要因: 当該街のブランド価値向上による流入
 (商業施設の開発、延伸による交通利便性の向上)

【中位】 ゆるやかな増加率で推移
 ⇒各種人口動態の過去トレンドを総合的に分析した推計結果

【下位】 世帯数は僅かに低下推移
 ⇒減少要因: 当該街のブランド価値低下による流入停滞・流出加速
 (自治体による各種施策の相対的な不足による離別)

 上記シナリオによって予測される将来推移が図5のグラフとなります。
 不動産投資評価DCF法の確実性を高める統計手法3

 もちろんシナリオの想定という段階で恣意的な要素が入ることは事実ですが、重要なポイントは、将来を正確に予測するということではなく、発生確率の高いシナリオをすべて織り込むという点にあります。結果として物件ごとに異なる恣意的な想定数字になることを防ぐことができ、客観性の高いベース数値を計算することができるのです。

 資産評価において、予測できない数値を恣意的に設定するのに比べ、発生確率に基づいて設定することの優位性は明らかといえるでしょう。証券化バブルでは、多くのプレイヤーが取引を成立させるために恣意的な数値設定をおこなって不動産の評価をしていたことが、市場の過熱を生む原因となりました。前回の反省を踏まえ、個々人の恣意的なコントロールの及ばない確率統計の手法を用いることで、客観性の高い不動産市場評価を実現することができます。

不動産投資評価DCF法の確実性を高める統計手法4

DCF法を用いた適正な不動産価格評価に必要な手法

 DCF法は、ご存知の通り将来発生するキャッシュフローを現在価値に割り引くことで計算されます。将来キャッシュフローが高い確度で計算可能であり、客観的に妥当な割引率を算出、適用できた場合には、他の方法では得られない、個別資産の特殊性を踏まえた評価が可能となる方法とされています。そのため、不動産投資評価に適している手法といえます。重要となるのは、あくまでキャッシュフローと割引率(期待利回り)の正確性です。現在の賃料価値をヘドニック法で推計し、将来の賃料と、投資家の期待利回りの確率変動をモンテカルロ法でシミュレーションすることで、DCF法を用いる準備が初めて整うのです。

 これまで説明した手法は、すべてエクセルだけで計算することができます。また市販のソフトを組み合わせて使うことで、作業の効率化を図ることも可能です。

 参考までに弊社ではGISソフトMarket Analyzerとリスク分析ソフトCrystal Ball、DCFソフトREIFAを組み合わせて使用しています。50ページほどの不動産調査レポートを、正味1~2時間ほどで作成できるように自動化しています。上記ロジックによる不動産市場評価レポートをクライアントに提示することで、資産提案に有用なツールとして評価いただいています。

 インターネットの普及に伴ってともなって、情報開示、情報分析が容易になったことで、これまで維持されてきた不動産取引の現場での情報格差は、TPPの参加による海外不動産業者の進出や不動産取引のネット化などで、今後大きな変革を余儀なくされてるようになっていくことでしょう。

 消費者にとってみれば、透明性が高まっていくなか、従来の情報格差にあぐらをかいている業者は淘汰され、取引の透明性はますます高まるようになるでしょう。他方でそれだけに、専門的なノウハウによる不動産資産評価のニーズ要請が、今後ますます増えていくことが期待されます。

 勘と経験ではなく、プロフェッショナルとしてデータに基づいた市場評価ができるようになることが、ひいては不動産取引の透明性と健全性を担保することにつながるのです。

賢い不動産投資を始めよう

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2015年1月19日 6:31 PM カテゴリー: 不動産投資

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