昭和のイメージが強い木造アパートですが、手頃な家賃で今でも根強い人気があります。木造アパートの賃貸が多いのは吉祥寺、西荻窪、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺、中野、東中野駅といったJR中央線沿線と、下北沢、三軒茶屋、駒澤大学駅のエリア。東京の東側では北千住、綾瀬、小岩、篠崎駅の周辺です。これらの駅周辺は木造アパートだけでなく、鉄筋コンクリート造のマンションも多いので、住もうとする人にとっては選択の幅が広いエリアといえます。
一方で、より都心に近いエリアや最近開発の進んだエリアでは、テナントを募集する木造アパートはあまりなく、選択肢も限られます。
今回は、鉄筋コンクリート造のマンションも木造アパートも数多くあるエリアのなかで、木造アパートと鉄筋コンクリート造マンションの比較を行います。
東京のアパート・マンション事情
以下の図は、弊社が保有している2014年のデータにもとづき、都内の主要200駅について、駅ごとに賃貸面積と賃料単価の関係をみたものです。薄い色が木造アパート、濃い色が鉄筋コンクリート造マンションです。一つの点が一つの駅周辺の賃料相場を意味します。たとえば、点Aは恵比寿駅の木造アパート、点Bは恵比寿駅のマンション情報です。
例)恵比寿駅周辺のケース
木造アパート(点A):平均賃貸面積は20.6平米、平均賃料単価は4,041円(月額の賃料に換算すると、およそ実額83,000円が平均の目安となります。以下同じ)
マンション(点B):平均賃貸面積は32.8平米、平均賃料単価は4,656円(月額賃料平均、およそ152,600円)
木造アパートは意外と安くない?
遮音性や耐震性を考えると鉄筋コンクリート造のマンションの方が有利ですが、賃料負担の軽さの点では木造アパートに軍配が上がります。
集計した200駅全体でみると、賃料相場は以下のようになっています。
木造アパート:平均賃貸面積は24.1平米、賃料単価は3,115円(月額賃料平均、およそ75,000円)
マンション:平均賃貸面積は34.4平米、賃料単価は3,151円(月額賃料平均、およそ108,500円)
都内で、木造アパートなら月75,000円、マンションなら108,500円が目安になります。その差は33,500円もあります。アパートの方が毎月の負担額が軽いのは実感に合うと思います。
ところが、賃料単価でみるとそれほどの違いはありません。木造アパートの賃料単価が3,115円なのに対して、マンションの賃料単価は3,151円です。単価で36円の差です。仮に、マンションの34.4平米に合わせると、木造アパートの月額賃料は107,300円になります。マンションと1,000円ほどしか違いません。
木造アパートだからといって、マンションよりも賃料が割安だとは限らないのです。
個別駅の例
木造アパートの多い駅の具体例です。どの駅もマンションより木造アパートの方が月額賃料が安いのですが、その大きな要因は賃貸面積が狭いからです。
|
木造アパート |
鉄筋コンクリート造マンション |
||||
駅名 |
月額賃料の目安(円) |
平均賃料単価 |
平均賃貸面積 |
月額賃料の目安(円) |
平均賃料単価 |
平均賃貸面積 |
高円寺 |
71,000 |
3,415 |
20.87 |
109,000 |
3,429 |
31.93 |
吉祥寺 |
74,000 |
3,232 |
22.88 |
107,000 |
3,654 |
29.25 |
北千住 |
75,000 |
3,306 |
22.58 |
103,000 |
2,963 |
34.79 |
中野 |
76,000 |
3,465 |
21.88 |
110,000 |
3,546 |
30.93 |
三軒茶屋 |
76,000 |
3,419 |
22.27 |
116,000 |
3,949 |
29.42 |
西荻窪 |
76,000 |
3,055 |
24.92 |
107,000 |
3,347 |
31.96 |
阿佐ヶ谷 |
77,000 |
3,278 |
23.57 |
106,000 |
3,549 |
29.86 |
東中野 |
78,000 |
3,773 |
20.61 |
119,000 |
3,559 |
33.34 |
下北沢 |
81,000 |
3,460 |
23.33 |
120,000 |
3,680 |
32.64 |
荻窪 |
81,000 |
3,182 |
25.47 |
106,000 |
3,419 |
31.11 |
遮音性や耐震性、防犯性の高さを考えると、しっかりした造りのマンションが有利です。そのためマンションの方がアパートよりも賃料が高いというイメージが強いですし、実際、月額賃料はマンションの方が高く設定されています。しかし、賃料単価でみると、イメージほどには差がないことがわかります。
引っ越しをお考えの際は、賃料単価も比較した物件選びをしてみてはいかがでしょう。