不動産投資の否定的意見で見落とされるポイントとは?ネガティブ記事に異論唱える

不動産投資の否定的意見で見落とされるポイントとは?ネガティブ記事に異論唱える

不動産
(写真=Thinkstock/Getty Images)

なぜか不動産投資のマイナス面しか訴えない記事

 某経済雑誌で「不動産投資は危険がいっぱい」というコラムを読みました。「低金利の今はリスクを多少とって株式や投資信託、REITなどに投資を」「住宅ローンを組むチャンス」と提案している一方で、不動産投資はやめたほうがいいという趣旨の内容でした。

 レベルの高い経済雑誌であるにもかかわらず、内容が矛盾しているので、事実を整理しながら反論していきたいと思います。

不動産投資のネガティブ面しか捉えない記事

 以下がコラムの要旨です。

  • 今後は人口が減っていくので賃料が安定する可能性が低い
  • 賃料を下げなければいけないのでインカムの実利回りが低下する
  • 利回りを上げるためには古いものを安く買うしかないが、バリューアップには気力と体力が必要なのでやめたほうがいい

 例として売買価格1,800万円、賃料9万円の設定で不動産投資の利回りが、表面利回りは6.0%、実質利回りが3.9%になってしまうという事例が説明されていました。

 典型的なステレオタイプの不動産投資ネガティブ記事です。「株式投資家の7割は損をしている」「海外投資家は日本株に興味を失っている」という理由をあげて株式投資を否定するのとなんら変わりません。こうしたコラムを書く執筆者は「不動産投資というものをまったく知らない人」といえるでしょう。

実はリスクが低い実物不動産投資

 コラムでは、株式や投資信託、REITで収益を得るためには、リスクを取らなければならないと主張しています。株式市場では不動産銘柄が有望とし、一方では実物不動産はリスクが高すぎるのでやめた方がいいと述べています。

 本当にそうでしょうか。実際にそれぞれの資産リスクを見ていきましょう。図は、世界的な不動産情報分析会社のIPD社が調査をした株式とJ-REIT、上場している不動産株、国債と実物不動産を比較したグラフです。IPDとついているのが実物不動産のパフォーマンスですが、リーマンショックという空前の経済危機の状況においても非常に安定した収益であったことがわかります。リーマンショックで最も打撃を受けたのは、記事で薦めている不動産銘柄株です。その次に暴落したのがJ-REIT、株式の順です。重要なのは何をもってリスクと捉えるか、なのです。銘柄の価格が大暴落することよりも、賃料が下がって年間収支が数%悪くなる方を「リスクが高すぎる」と判断するのは同意できません。

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不動産投資は家賃収入だけ?ネガティブ記事が見落とすポイント

 不動産投資のネガティブ記事の多くは家賃収入しか見ていません。家賃が下がる=収益が悪い投資というロジックです。実際に不動産投資を行っている方であれば十分理解できることですが、不動産投資の収益は家賃収入だけではありません。売却益を得ることが不動産投資の醍醐味なのです。

 不動産投資は家賃収入であるインカムゲインと、売却益のキャピタルゲインを合わせてパフォーマンスが決まります。ところが、不動産投資のネガティブ情報の場合、このキャピタルゲインの存在を忘れています。不動産は値が上がらないものだと思い込んでいるのでしょうか。実際には不動産の相場価格は、市場の期待値が変化するため時期によって大きく変動します。おそらく56年前に不動産投資を行った方であれば、今ならば何も考えなくてもキャピタルゲインを得ることができるマーケットなのです。

 人口減は不動産の価格形成にはほとんど影響しないということは日本銀行の調査レポートでもあきらかです。人口減の経済では大都市に人口が集中するので、不動産投資において人口減は必ずしもネガティブ原因とはいえないのです。

 家賃を下げてパフォーマンスが下がるという主張は、前述のとおり不動産投資の収益が家賃収入だけという誤解です。株式投資のパフォーマンスを配当性向だけで判断するのと同じことです。株式投資ではキャピタルゲインを重視するのに、実物不動産投資ではキャピタルゲインを無視する理由が理解できません。

 最後にバリューアップに関してですが、古い不動産を購入して「自分で」バリューアップする投資家はほとんどいません。今は多くのリノベーション会社があり、その専門業者が賃貸のパフォーマンスが上がる工夫をさまざまに提案・実行してくれます。

 物事を一面からしか見なければ、成功するのが難しいのはどの投資でも同じです。投資において大切なことは、複合的な視点できちんと事実を理解するということではないでしょうか。

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