タワーマンション節税は今後どうなるのか?

タワーマンション節税は今後どうなるのか?

タワーマンション群

 相続税の税制が変わったことから、以前から用いられてきた「タワーマンション節税」の役割はさらに高まってきています。しかし度を超えた節税対策については、国税庁が監視の目を強めています。これからタワーマンション節税はどうなっていくのでしょうか。

タワーマンションを使った節税対策が厳しくなる?

 2015年11月3日、タワーマンションを使っての節税に対して、国税庁の監視の目が厳しくなるとニュースになりました。これは10月27日の政府税制調査会において出された意見です。相続税の税制が変わったことから相続税の納税対象となる人が増えたため、いろいろな節税対策に熱が入るようになりました。その流れの中で、タワーマンションの節税も活発になっていたことが背景にあります。国税庁の調査では、評価額が3600万円の物件が1億円で売られるなどのケースが発生しており、このような「著しく不適当」なケースについて、国税庁の資産評価企画官は「不動産の値上がりで節税効果が大きくなっており、看過できないケースには適切に適用したい」というスタンスを示しています。

相続税の仕組み

 そもそもタワーマンション節税はどのような仕組みになっているのでしょうか。タワーマンション節税とは、相続税を安くするために資産の一部をタワーマンションにすることで、相続税評価を下げて節税する方法のことです。タワーマンション節税に入る前に、相続税について説明します。
 相続税の納税額の算出は、大まかには以下のような計算式で算出します。

 ① 単純試算合計 - 生命保険控除 - 退職金控除 = 資産総額
 ② 資産総額 - 基礎控除 = 課税財産
 ③ 課税財産 × 税率 = 納税額

 そして2015年からは②の計算式にある基礎控除額が減額されたため、相続税の納税者の対象者が増えました。

<基礎控除額>
  減額前 :  定額控除5000万円 + 1000万円×法定相続人の数
  減額後 :  定額控除3000万円 + 600万円×法定相続人の数

 また、取得金額が2億〜3億の相続人は税率が40%→45%、6億円以上の相続人は50%→55%に税率が上昇しました。
 そのため、高額の資産を持っている人にとっては、いかにして納税額を少なくするのかがこれまで以上に重要になってくるのですが、税率や控除は自分の裁量で変化させることができません。しかし資産の評価額は、資産の種類によって変化するため、資産の内容を組み替えることによって、課税財産を小さくする(小さく見せる)ことができるのです。その手段として、タワーマンションが注目されているのです。

タワーマンション節税の仕組み

 マンションの相続税評価額は、建物と土地にそれぞれ個別に計算します。建物は固定資産税評価額と同額になりますが、土地については、その土地の全敷地の評価額にその部屋の持ち分割合をかけて算出します。そのため階数が高く部屋数が多いほど、持ち分に応じた土地の評価額が安くなるのです。
 タワーマンション節税には以下のようなメリットがあります。

メリット① 評価額は時価よりもずっと小さくなる

 タワーマンションの評価額は、上記のように算出されるため、タワーマンションに多くあるプレミアムなどは評価額に反映されません。しかし実際の流通にはそれはプレミアムなどが反映されるため、大きな価格差が生まれます。そのため相続税評価額が時価よりも3分の1以下になるケースもあるのです。
 プレミアムがついて流通価格が高くなるのは、高層階ですので、高層階の物件ほど節税効果は高くなります。また物件の方角によっても価格差が生まれます。一般的に人気なのは南向きですので、南向きの最上階などがもっとも流通価格が高くなり、節税効果が高くなるでしょう。

メリット② さらに評価額を小さくする手段がある 

 さらにタワーマンションの物件を賃貸した場合は、さらに評価額が建物部分は3割、土地部分は2割程度割引されます。また小規模宅地の特例が適用することでも、評価額を下げることができ、相続税節税の対策になります。

メリット③ 流動性が高い

 タワーマンションの多くは人気なため、賃貸や売買が円滑に行なうことができます。賃貸にしても通常のマンションよりも賃料が安定的であり、投資利回りも期待できるでしょう。

メリット④ キャピタルゲインとインカムゲインが狙える

 資産の一部をタワーマンションにすることで評価額を下げ、賃料収入を得ることができる(インカムゲイン)だけでなく、さらにそれを流通価格かそれに近い価格で売却することで、キャピタルゲインも得ることができます。そうすると二重で利益を得ることができて、節税効果以上の魅力があるのです。

 このようなメリットが存在するため、タワーマンション節税は一定以上の資産を持つ人に人気なのです。

タワーマンション節税が否認された例

 節税効果の高いタワーマンション節税ですが、節税が否認された例もあります。国税不服審判所で公開されている事例を見てみましょう。

<平成23年7月の例>

 父が入院したため、父の名義でタワーマンションの一室を2億9300万円で購入し、父の死亡後の相続税の申告にはマンションを5802万円として評価しました。その年、相続人はこのマンションを2億8500万円で売却しました。

 これは実際の流通価格の約5分の1で評価額を出しているため、節税効果としては非常に高いものになっています。しかし国税庁はマンション購入から売却までの経緯からみて著しく不適当として5802万円の評価を否認し、評価額は取得価格と同等であるのが妥当であると判断しました。

 納税者は、国税当局の否認に対して不服申立で争ったのですが、国税不服審判所は、マンションの購入目的は、相続税の節税にあることが認められるとして、国税庁の主張に沿う裁決を下しました。

 実際に平成23年に裁決が出た判例です。
 納税額の基準は不動産としての相続税評価額の5802万円ではなく、相続開始時の時価である2億9300万円と認定されたのです。

今後強化されるのか?

 2015年10月の税制調査会においては、国税庁は全国の国税局に行き過ぎた課税逃れがないかチェックを強化するように指示しました。
 マンションに対する相続税の評価の仕組みは、土地は路線価で、建物は固定資産評価額で算出する仕組みになっています。この評価の仕組みは昔からあるものであり、タワーマンションを用いた節税は、以前から行なわれてきたものでした。その仕組みが現在まで変更されていないことを考えれば、これから評価の仕組み、税制の仕組みそのものが変更される可能税は少ないと考えられます。その他の評価方法を採用すると、評価の仕組みが煩雑になりますし、タワーマンションのみの評価方法を変更するのは公平性がないからです。しかたがって当分は、一律に課税が強化されるというよりは、個別事案に応じた対応が続けられると考えられます。
 ただし、タワーマンションで節税を考えている人は、タワーマンションを購入すれば節税になると安易に考えない方がよさそうです。

 

不動産投資カテゴリの最新記事