2015年のマンション市場、新築と中古で明暗?
「中古が新築を逆転?マンション戦線異常あり」
こんなタイトルの記事が、2014年12月31日付の「東洋経済オンライン」に掲載された。記事を要約すると、次のような内容になる。
2000年の首都圏マンション市場は、新築の販売数が9.5万戸、中古がその4分の1程度の2.5万戸だった。それが2015年には、新築が4万戸を割り、中古は3.6万~3.7万戸に上向く可能性があるため、状況によっては、中古販売数が新築販売数を上回るのではないかという業界有識者の見通しを紹介している。
新築マンション市場が縮小している理由としては①地価上昇により中小デベロッパーの仕入れの動きが鈍い ②円安や労働者不足から建築コストが上昇 ③実質所得が上がった実感がなく消費者が様子見ムード、などがあげられている。
これに対して中古マンションは、新築マンションと比較した時の割安感、金融機関による中古住宅普及の積極的な取り組みなどの後押しがあるため、販売数で新築を上回る可能性があるというのだ。
海外投資家や富裕層に人気の一等地の中古物件
では、2015年1月の中古マンション市場の実際の動きはどうだったのか?
東日本レインズの「マーケットウオッチ」によると、2015年1月の首都圏の中古マンション成約件数は前年同月比マイナス9.2%、坪単価がプラス5.3%、販売価格がプラス4.7%となっている。
このレポート内には「成約件数は、すべての地域で前年比減」との解説もある。しかし、この情報から中古マンション市場が伸び悩んでいると判断するのは早計である。
成約件数はマイナス、坪単価・販売価格がプラスというデータが示すのは、「高額物件を中心に中古マンション市場が活発に動いている」ということの表れでもある。成約件数、坪単価、販売価格のすべてがマイナスなら、市場が落ち込んでいると考えるのが一般的だが、それとは状況が異なる。
実際に中古マンションを販売している不動産会社の営業が口を揃えて言うのは、「一等地の物件は、お客様に提案すればすぐに成約になる」ということだ。一等地イコール高額物件であり、値上がり傾向が強い。
買いに走っているのは、中国、台湾、シンガポールなどの投資家と、国内の富裕層である。前者は円安進行で割安感がある日本の不動産を積極的に購入するようになった。後者は今年から施行された相続税増税の対策として、節税効果のあるタワーマンション購入などに動いているとみられる。
「中古マンションの勢いが止まらない」の本質とは
2015年2月27日付の東洋経済オンラインで、「中古マンション、『価格上昇』100駅ランキング」と題する記事が掲載された。その結果を見てみると、先述した「一等地の物件ほど人気がある」という現場の声とおおむね合致している。
掲載されていた首都圏の駅の価格維持率トップ10は、①元町・中華街駅 ②半蔵門駅 ③広尾駅 ④品川駅 ⑤辰巳駅 ⑥外苑前駅 ⑦大井町駅 ⑧白金高輪駅 ⑨東日本橋駅 ⑩新浦安駅だった。
1位となった横浜の元町・中華街駅は、一等地であることには間違いないが、首都圏屈指の最上位ブランドエリアとまではいえない。それにも関わらず1位を獲得したのは、「築浅物件が多い」というエリア特徴によるものだ。
不動産関連の情報サービス提供会社、東京カンテイの分析では、2000年代初めからミニバブル期にかけて分譲されたタワーマンションの値上がりが顕著で、いずれも分譲時から坪70万~100万円程度値上がりしているとみている。
新築物件の比率が高いエリアは値上がり傾向が強い。同エリアが5年後、10年後にも1位を維持している可能性は低いといえるだろう。
また、品川駅は新駅ができることによる期待感が強く出ているとみられる。
こういった追い風があるエリアに混じり、半蔵門駅、広尾駅、白金高輪駅といった不動のブランドエリアが上位にランクインしている。この結果からも「一等地にある中古マンションの人気の高さ」がうかがえる。そして、円安傾向の持続や東京オリンピック需要によって、この人気は当面続くことが予想される。
今の不動産市場の活況は、バブル期のように首都圏のすべてのエリアが値上がりしているということではない。好立地で「新築比率が高い」「新駅ができる」などの好条件が絡んだエリアや、不動のブランドエリアを中心に値上がり傾向が強まっているだけだ。
そう考えると、手頃な物件を安く仕入れることを重視するよりも、より「付加価値の高い高額物件」に目を向けた方が有利といえるだろう。
「中古マンション市場の勢いが止まらない」の『中古マンション』というのは、あくまでも「一等地にある中古マンション」ということだ。本質をよくみて、一等地に絞って投資をしていくのが賢明である。