どうなる民泊運営!?関連法案の最新動向まとめ 2016年8月版

どうなる民泊運営!?関連法案の最新動向まとめ 2016年8月版

Decorative Scales of Justice in the Courtroom

 

大きな潜在市場を持つ新しいビジネスチャンスとも言われる「民泊」ですが、法整備の状況はどのようになっているのでしょうか。最新の動向をまとめました。

民泊ビジネスの拡大

近年Uber、Airbnbなどシェアリングエコノミーと呼ばれる新たな経済現象が、ビジネスとして浸透してきています。その一つが民泊ビジネスですが、まだ法整備が追いつかず、様々な議論を巻き起こしています。特にここ最近の関連法案の動向はどうなっているのでしょうか。最新情報をまとめました。

民泊ビジネスの代表であるAirbnbの日本のホスト数は、2012年ごろから急増しはじめ、特に2015年から2016年にかけて急増しました。2015年3月から2016年3月まででその数は3倍も増えています。しかし、民泊は一般向けの住宅を宿泊用にするビジネスであるため、民泊の拡大に伴ってトラブルも急増しています。トラブルは大きく3つに分けられ、宿泊者が深夜に騒ぐ、ゴミを外に出しているなど、住宅のルールを守らないというもの、ホストが大家に無断で民泊利用しているという契約関連のもの、宿泊業として営む上での充分な設備が備わっていない、など旅館業法に関わる法律上の問題です。特に問題なのが3つ目の法律上の問題で、メディアでも毎日のように最新の動向が報道されています。

民泊関連法案のこれまでの動向

そもそも民泊は法律上どのような問題があるのでしょうか。民泊とは、通常の住宅に旅行者などを宿泊させ、その対価として利益を得る業務形態のことです。旅館業法上では、宿泊料をもうけている、寝具を提供する、などの用件に該当する場合に、旅館業として判断されます。旅館業に該当する場合は、営むための許可が必要ですが、多くの民泊のホストは無断で営業しています。それは、旅館業として許可を得るためには、設備や業務形態上の様々な条件をクリアする必要があるため、普通の住宅では許可を得ることができないからです。さらに、そもそも副業として空いている部屋を貸し出しているという人も多いため、許可を得るほどの手間をかけたくないというのも、本音でしょう。しかし、このような民泊ビジネスが拡大すれば、既存の旅館業者は打撃を受けます。そこで、取り締まり強化派と規制緩和派とが対立することになっているのです。

しかし、2016年には2000万人を超えることが予想される外国人旅行者を受け入れるため、民泊の規制緩和は避けられません。そこでこれまで、民泊の適法化に向けて様々な取り組みが行われました。2016年1月には、東京都大田区が「特区民泊」を認めました。特区民泊とは、国家戦略特区と言われる特区の中での民泊の営業に関しては規制緩和し、旅館業法の適用を除外するというものです。2016年1月に東京都大田区が申請しています。さらに民泊を認めるには、自治体レベルでの条例の改正が必要ですが、条例に関しても大田区、大阪府、大阪市で認められました。

また、旅館業法改正の動きも出ています。特区民泊では国家戦略特区として認められたエリア内で、さらに条例レベルでの改正が必要なため、緩和されるエリアが限定されてしまいます。事実、現状3つの自治体でしか認められていません。そこで、旅館業法そのものを改正しようという動きが起こりました。この動きは2015年「民泊サービスのあり方に関する検討会」の立ち上げから生まれ、2016年4月には旅館業法が改正されました。

民泊新法とは?

2016年6月2日には、旅館業法の規制を緩和する新民泊制度の概要が記載された規制改革実施計画が、閣議決定されました。一般に民泊新法と呼ばれています。すでに存在する旅館業法を改正するのではなく、民泊の急増という新しい経済現象に適合した、新しいルール・法律・制度を作っていこうという動きです。民泊ビジネスにとっては追い風となる動きが積極的になってきたのです。これも、前述の「民泊サービスのあり方に関する検討会」が推進しています。まだ制定されているわけではありませんが、その原案はできています。どのような制度が検討されているのでしょうか。

端的に言うと、新しい民泊法案では定められた要件のもとで行われる民泊業務は、旅館業法には抵触しない、つまり既存の旅館業法の規制に枠外で行うことができるというものです。

新法では、まずホテルや旅館ではない「住宅」での民泊の営業が認められます。ホテルや旅館が営業できない住宅地で民泊を営業することが可能になるということです。また、年間180日という営業日数の上限が設定されました。対象となる住宅はあくまで住居としての利用がメインで、副業として営むような形態が、制度化された形になります。180日を超えて営業する場合は、従来通り旅館業法の法律の対象になるため、旅館業としての営業許可を得ることが義務づけられます。住宅での営業が許可されたという点では規制が緩和されましたが、年間180日という営業日の上限が設定されたことで、グレーゾーンだった民泊ビジネスに新しい制限がかけられる形です。しかし、「民泊サービスのあり方に関する検討会」の最終的な報告書には、日数の制限が政治問題化されかねないため、日数の明記は見送られました。

また、民泊が認められている海外の都市では、フロントの設置、民泊サービスを営業していることの掲示、常駐する管理者の設置などの義務があります。これらの義務が日本ではどのように扱われるのか、今後の争点になりそうです。

民泊新法は2016年の末までに制定することが目指されており、この新法ができれば、現在行われている旅館業法に抵触すると思われるグレーソーンの民泊は「特区民泊」か「新法の民泊」のいずれかになり、完全にビジネスとして行われている大きな規模での民泊は旅館業法が適用されるようになります。民泊ビジネスは、大きく3つの制度内で営まれるようになるでしょう。総合的に見ると民泊ビジネスは規制緩和に向かっていますが、新しい問題も発生しそうです。

Night scene in hotel room: prepared fresh bed

専門家の意見は?

海外の多くの観光客の集まる国際都市では、民泊規制が緩和され一般化しているところが多いです。観光立国を目指す日本でも、これから規制緩和、民泊ビジネスの解禁は必須です。専門家はどのように考えているのでしょうか。

「民泊サービスのあり方に関する検討会」では、各業界から代表者が集まって意見を集めています。これに対して、フランスのホテルGNIの会長と、UMIHホテル部門会長が参加しましたが、観光立国であるフランスではAirbnbの増加によってホテルが倒産に追い込まれていると主張されました。民泊先進国であるフランスからの、民泊規制緩和への警鐘です。(Yahoo!ニュース5月23日:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160523-00095025-hbolz-soci)

他にも、ホテル/旅館業界を中心に民泊ビジネスへの批判は根強いです。このような規制緩和反対意見に対して、Airbnbは地域住民にお金が支払われる新しいビジネスが批難されるのは残念だ、とコメントしています。これまでになかったまったく新しいビジネスですので、法律との不整合性や反対意見など、まだ超えるべき課題は多くあります。

しかし、日本の民泊に対する規制緩和の動きは、基本的に「現状違法な民泊を適法化していく動き」です。年間180日の営業日の設定など新しいルールの盛り込みも争点になっていますが、これもまだ確定しているわけではありません。今後どのような法律として制定されるのか、まだ注目していく必要あがります。

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