J-REIT市場は、2001年9月に2銘柄の上場でスタートし、2015年2月には上場銘柄数が50銘柄に達しました。
J-REITは不動産投資において証券化された金融商品として人気が高まり、2001年の市場創設から順調に成長しました。その後、2008年の世界的な金融危機等の影響を受けてJ-REIT市場においても銘柄の整理・統合が進み、上場銘柄数が減少することもありましたが、景気回復を受けて2012年4月には新規上場銘柄が出現するなど、再びJ-REIT市場が活性化しています。
上場銘柄数が50銘柄に達した今、どの銘柄に投資すればいいのでしょうか。ひとつの判断指標として、今回は不動産の含み益に着目した銘柄選択をご説明します。
見落としがちなこと
J-REIT投資の魅力は配当利回りの高さです。J-REITは法人税の負担を回避するため、収益のほぼすべてを投資家に配当します。J-REITは配当性向が高く、一般的な株式と比べて配当利回りも高くなります。そのため、投資家はこの点着目し、配当利回りの高い銘柄を好む傾向があります。
しかし、ここで注意すべき点があります。配当利回りの高い銘柄が、必ずしも良い投資先であるとは限らないということです。なぜなら、各REITが持つ不動産の価値がどのくらいあるのか、という視点が欠けているからです。
保有不動産の価値
J-REITが保有している不動産を売却した場合、考えられる2つのケースがあります。それは含み益が実現するものと、含み損が実現するものがあるということです。
含み益が実現する場合、その利益は特別利益として投資家に分配されます。大きな含み益を持った物件を売却した際には、その期の配当金が一気に増えることにもなります。投資家にとってはうれしい驚きであり、配当金が増えるというニュースが流れると、その銘柄の株価は上昇します。
含み損が実現する場合、売却損失を計上するためその期の配当金が減少します。投資家は失望し、株価も連動して下落します。
含み益をたくさん持った銘柄は、保有資産を売却して大きな利益を計上する可能性がありますし、逆に、含み損を抱えた銘柄は、いつか大きな損失を計上する恐れを秘めています。
このため、配当利回りの高さに着目する一方で、各REITが持っている資産の価値、含み損益の大きさにも目を向けておく必要があります。高い配当利回りで、かつ多くの含み益を持っている銘柄が理想的で、逆に、配当利回りに魅力がなく、かつ多くの含み損を抱えた銘柄は、投資を避けるべき銘柄となるのです。
個別銘柄の状況
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投資法人 |
含み益 |
時価総額 |
含み率 |
8967 |
日本ロジスティクスファンド |
466億円 |
2019億円 |
23.1% |
8964 |
フロンティア不動産 |
326億円 |
2792億円 |
11.7% |
3249 |
産業ファンド |
204億円 |
1943億円 |
10.5% |
3263 |
大和ハウスリート |
175億円 |
1687億円 |
10.4% |
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3282 |
コンフォリア・レジデンシャル |
121億円 |
1234億円 |
9.8% |
3269 |
アドバンス・レジデンス |
353億円 |
3891億円 |
9.1% |
8951 |
日本ビルファンド |
713億円 |
8472億円 |
8.4% |
3287 |
星野リゾート・リート |
46億円 |
560億円 |
8.3% |
3281 |
GLP |
242億円 |
3132億円 |
7.7% |
含み益と直近の時価総額の比率を「含み益率」としています。上の図は含み益率の大きい上位10銘柄です。(2015年2月末時点)
含み率の大きな銘柄は、含み益があまり株価に反映されていない、すなわち資産価値からみて相対的に割安であると考えられます。
J-REIT投資の基本的な戦略として、現在では毎年3%程度のインカムゲインを中長期的に狙うことになるでしょう。まずは、安定的にどのくらいの配当金が出せるのかが、銘柄選択のポイントです。
それに加えて、物件を売却したとき実現益が出そうな銘柄はどれか、そのくらいの含み益を持っているのかなど資産価値に着目して銘柄を選ぶことも重要です。
含み益の大きい銘柄は、物件売却による特別利益のポテンシャルが高く、含み損を多く抱えた銘柄は苦しいREIT運営を余儀なくされるからです。同じ配当金利回りなら、資産価値の高い銘柄に投資すべきというのが原則です。
J-REITに投資する際には、各銘柄の配当利回りだけでなく、資産価値にも目を向けるといいでしょう。