安定性が「物流系REIT」の最大の魅力
複数の投資家から調達した資金をもとに利益・配当を生み出すREITの中でも、物流センターや倉庫といった物流施設を対象にした「物流系REIT」へ関心を示す投資家が増加している。関心が高まっている背景としてよく言われているのが、コンビニを代表とする小売業やネット通販の取り扱い荷物増加による物流業界の拡大だ。市場そのもの拡大に加え、近年のネット通販の翌日着サービスや、コンビニの競争激化が物流高速化の流れに拍車をかけ、よりスピーディな仕分けを行うための大型物流センターの建設が相次いでいる。
「物流系REIT」の最大の魅力は安定性である。一般的な不動産物件と比べると規模が大きく、契約している企業の入れ替わりが少ない。また、不況の影響を比較的受けにくいとも言われ、賃料が安定している。もともと、安定性があると言われていた「物流系REIT」だが、そこに物流業界の拡大が加わり、「安定性」というメリットがさらに補強された。この点に「物流系REIT」が注目を集める理由は集約されるだろう。
数多くの個人投資家が参画する「物流系REIT」
「物流系REIT」の中でも存在感を放ってきたのが、この分野に初めて特化した日本ロジスティクスファンド投資法人である。資産規模はほぼ右肩上がりであり、物流系REITへの関心の高まりを裏付ける。最新の第18期では、その総資産額は2000億円に到達し、勢いはおとろえないように見える。同期稼働率は98.6%となっており、不安材料は見当たらない。
この他、「物流系REIT」に特化している法人としては、日本プロロジスリート投資法人とGLP投資法人がある。いずれも、グローバル展開する物流不動産会社を母体としており、日本の大企業が主要株主の中心である日本ロジスティクスファンド投資法人とは企業背景が対照的といえる。
ネット通販市場の急成長という追い風
今後、「物流系REIT」は、ますます魅力を高める可能性がある。なぜなら、ネット通販市場の拡大はこれからが本番といえるからだ。B to Cのネット通販市場規模は、現在10兆円前半だが(※1)、2020年に20兆 円まで急成長すると見込まれる(※2)。その根拠になるのが、EC化率である。2013年時点でのB to C商取引におけるEC化率はわずか3%台(※1)であり、まだまだ伸びしろがある、と言うわけだ。一方、B to B商取引においてのEC化は、B to Cよりも先行しており17%(※1)を超えているが、こちらも新たなサービスが生まれ続けており、まだ伸びる余地を残す。
あらゆる分野で成熟化が進み、成長が鈍化する中、物流分野は成長が期待される数少ない分野である。今後、物流系に特化した投資法人はさらに増える可能性があり、その中で、どの投資法人を選択するとより効率的な投資になるかがポイントになってくるはずだ。「成長性の高い企業と契約しているのはどこか」、「付加価値の高い施設開発に注力しているのはどこか」などに着目して、各社の動向をしっかり見極めていきたい。
※1 経済産業省「電子取引に関する市場調査の結果」(平成25年8月26日発表)
※2 東洋経済ONLINE「ネット通販市場は小売りの20%、60兆円に」