米国は家にお金を貸し、日本は人にお金を貸す 住宅ローンの国際比較

家計 (写真=iStock/家計)

国が違えば住宅ローンの制度や条件も異なります。グローバル投資家や移住を検討している方はその国の住宅価格や住宅マーケットの動向だけでなく、税制や、住宅ローンの仕組みも比較検討する必要があります。今回は住宅ローンの国際比較をご紹介します。

アメリカ

 まずはアメリカから見てみましょう。アメリカの住宅ローンの制度は「ノンリコースローン」と呼ばれるものです。アメリカでは住宅ローンが返済できなくなると、家は差し押さえされます。しかし、このとき残った住宅ローンの債務も帳消しになるのです。日本の場合は、住宅ローンが返済できなくなると、その家は任意売却もしくは競売となります。その売却代金で返済できなかった分の残高は債務者の元に残り、債務者が自分で返済するか自己破産するしかありません。
 アメリカの制度は、日本よりも債務者にリスクの少ない制度になっているのです。それはリーマンショックの引き金となった住宅バブルのきっかけにもなりましたが、日本ならば持ち家を持つことができないような層の人たちも、自分の家を持つことができます。この違いをさして、「アメリカは家にお金を貸し、日本は人にお金を貸す」と言われます。
 アメリカの住宅ローンの金利は、30年固定金利で4%〜5%程度であるのが一般的です。日本の金利よりもずっと高いです。住宅ローンは長期金利を元に決定されるため、現在の世界的な低金利・ゼロ金利・マイナス金利政策の流れから、今後は住宅ローンも低下、もしくは低いまましばらく固定される可能性があります。しかしアメリカの場合は、追加利上げされる可能性が高いため、住宅ローン金利も高くなるかもしれません。
 住宅ローンの借入時には、銀行からクレジットヒストリー、頭金の金額、収入の返済額の比率、銀行残高、職業の5つから判断されます。確かに年収が高ければそれだけ借り入れることができる額も高くなる傾向はありますが、単純に年収がいくらあればいくらのローンが組める、というようには言えません。

イギリス

 ロンドンでは不動産市場が非常に過熱しており、住宅価格が高騰していますが、イギリスの住宅ローン金利はどのくらいなのでしょうか。イギリスでは住宅ローンは変動金利がほとんどですが、現在金利は3%程度になっています。アメリカに比べれば低いです。イギリス政府は持ち家を推進するため、1億円までの居住用不動産に対しては、住宅ローンの一部を保障する制度を適用しています。この制度ではローンが元利均等返済方式に限られ、銀行からの返済能力の審査に合格する必要があります。審査の条件は、最低でも2年以上同じ会社で働いていること、預金が充分にあることなどがあります。
 リーマンショック以前は、住宅ローン金利は7%以上あることもありましたが、その頃に比べれば金利はぐっと下がって借りやすくなりました。しかしその代わりに、ローンは100%ではなく70%、60%くらいでないと低金利の恩恵は受けることができない状況です。イギリスの住宅ローン(モーゲージ)には、大きく2つの種類があります。「リペイメント」と「インタレスト・オンリー」です。リペイメントは一般的なローンの形態で、利子の支払い、元金の分割払いを同時に行い完済します。元金が徐々に減っていくため支払いを続けるほど利子負担が少なくなっていき、元金返済の配分がさらに増えていきます。リペイメントは毎月の支払額が割高になるというデメリットはありますが、利子負担や保証金が割安というメリットがあることから、多くの種類が提供されています。
 これに対してインタレスト・オンリーは、利子のみの支払いを行うというものです。つまり元金の返済はしないのです。なぜこのような仕組みになっているのでしょうか。イギリスの住宅価格は、リーマンショック以前は上昇し続けていました。これは長期的な傾向で、現在も上昇傾向に戻っています。そのため、住宅価格が上がることを前提にして、ローンの返済期間終了後に家を売却し、そのキャピタルゲインでローンの元金を支払う、といった使い方をするためにこのようなローンがあるのです。毎月の支払額は利子分だけなので割安ですが、その代わり住宅価格の下落が大きなリスクになります。そのため、このタイプのローンを組むことができる会社は少ないです。

オーストラリア

 オーストラリアでは持ち家のオーナーのうち、半数近くの45%がローン債務者で、そのうち変動金利ローンが85%と、変動金利でローンを組んでいる人が多いという特徴があります。オーストラリアでは銀行ならば、ローンの60%から70%程度、その他の民間の住宅ローン会社で最大80%程度までのローンを組むことができるでしょう。ただ、現在のオーストラリアはかつてないほど低金利になっていますので、以前よりも利子負担は少ないです。住宅ローン会社でローンを組む方が、銀行よりもトータルで低コストになります。金利が低く、また信用力が相対的に低い方でも借りやすいのが民間住宅ローン会社です。
 金利は大きく固定金利と変動金利がありますが、固定金利は金利変化のリスクがあるため、割高になります。現在の経済情勢を考えると変動金利でローンを組む方が割安になります。オーストラリアのローンも、元利返済と金利のみの返済の2種類があり、投資用に住宅を購入する方は金利のみ返済のローンを組むのが一般的です。

中国

 中国はもともと共産主義国ですので、住宅を自由に売買することはできませんでした。しかし、その後市場経済化が進んだことによって、中国でもマイホームを保有したいと考える人が増えるようになりました。
 中国の住宅ローンには3つの種類があります。公的な住宅金融である「住宅公積立金制度」、民間の住宅金融である「住宅貯蓄銀行のローン」「商用銀行によるローン」です。個人向けの住宅ローンは年々増加しており、ローン返済に苦しめられる人も増えています。個人向けの住宅ローンの金利は、すべての銀行が一律になっています。自由化が進んでいないためで、日本や欧米に比べると珍しい特徴です。民間のローン金利がこのように管理され、それ以外は公的な住宅金融しかないため、実質的に住宅ローンは国の管理下にあると考えていいでしょう。
 ただし、融資の条件は銀行によって異なります。中国銀行は年収が300万円以上といった信用力をクリアすれば、20年〜25年のローンを組むことができます。また中国の場合は、ローンを組むにあたって永住権を持っていることは必須ではありません。居住用のローン購入金額の70%が上限で、残りは自分で頭金として準備する必要があります。

韓国

 韓国の住宅ローンはどのようなものでしょうか。韓国の住宅ローンはサブプライムローンにたとえられるような危うい構造をしているのが特徴です。韓国には「安心転換融資」という制度があり、これは住宅ローンにおいて、利払いのみで元金を返済しないローンを、元利返済に切り替えることで、金利を軽減するというローンです。つまり、金利のみの返済から元利返済に切り替えることで金利負担が小さくなるわけですが、実際にこの制度を利用したのは一部にとどまります。元利返済をするほどの資金的な余裕がないからです。なんと住宅ローンの債務者のうち、75%が利払いのみを続けているといいます。負債を負債でカバーするという構造が住宅ローンの大部分を占めているのです。それらは大部分が不良債権となることが考えられるのであり、今後韓国経済に大打撃を与える可能性があります。
 韓国の住宅ローンの審査は日本に比べるとずっと易しいものと言われます。銀行はまだしも民間の住宅ローン会社は信用度の低い人でも借りることができるため、それも住宅ローン問題の要因の1つとなっています。約70%の人が変動金利でローンを組んでおり、金利は4%〜5%程度です。低所得者層ほど金利のみの返済を選択しており、返済能力の低い、もしくはない割合が高く、今後はこの制度は変わってしまうかもしれません。

タイ

 日本のように固定資産税や相続税のないタイは、日本人投資家も多く投資している国です。そのタイでは、持ち家率が80%を超えており、住宅供給は過多になることもあります。そのため住宅の価格は抑えられています。タイでは持ち家推進のため、低所得者向けに政府機関が住宅の供給を行っています。その1つが国家住宅公社です。国家住宅公社は「バーン・ウアアートン・プログラム」を実施しており、これは国家住宅公社に購入者が5年間、延滞金足で割賦金を支払うと、政府住宅銀行が低金利で30年ローンを融資するという仕組みです。中間層以上の人はほとんどが商業銀行を利用します。年々住宅ローンの利用は増えてきている傾向にあるようです。
 金利は変動金利が一般的ですが、金融機関が最低金利を定めており、金利水準は7%程度です。また政府系銀行は、新規で購入する人に対して2年間金利をゼロに設定する新たな制度もはじめました。住宅ローンの融資期間は、かつては20年ほどだったのが、最近では30年ほどが一般的になっています。
 今回は、先進国、新興国を織り交ぜて住宅ローンの国際比較をしましたが、いかがだったでしょうか。住宅ローンはその国の政策金利の変動や不動産市場の景気によって、金利や条件が左右されます。

 

同じ国でも時期によって変化しますので、今後も引き続き観察していきたいと思います。

賢い不動産投資を始めよう

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2016年6月3日 8:00 AM カテゴリー: 不動産投資, 事例・実践

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