不動産運用を行うためには、いろいろな法律や条例について知識を深めていかなければいけません。他人の土地を借りる際には「借地権」という権利が存在し、その内容もさまざまです。
ここでは、借地権の概要をはじめ、種類、対抗要件などについてご紹介します。
借地権とは
建物利用などを目的として、地代を支払い他人の土地を借りることの権利を「借地権」と言います。
借りる人のことを「借地権者」、また貸す人(地主)のことを「借地権設定者」などと呼びます。
土地を借りた借地権者は、地主に毎月地代を支払うことになります。
借地権には「賃借権」「地上権」「永小作権」「地役権」「使用借権」の種類があり、一般的に「借地権」と言えば賃借権を指すことが多く、その対に当たるのが地上権です。
地上権は他人の土地で家を建てるなど、その土地を利用できる権利を指します。
次項で借地権の権利についてご紹介します。
借地権の種類
先述したように、借地権にはさまざまな種類があります。以下に借地権の種類について紹介していきます。
・賃借権
賃借契約によって生じる借主の権利を賃借権と言います。
借主は契約の範囲内で土地を使用して収益を得られますが、貸主に土地代を支払う義務が生じ、民法で債権とされます。
・地上権
他人の所有する土地を借り、建物を建てたりその土地の竹木を所有したりすることができます。土地を直接的に使用する権利があり、地主の許可なく登記したり、第三者に譲渡や転賃したりすることができます。地主には登記に協力する義務があり、地上権を持つ借地権者が希望した場合は登記に応じなければいけません。
・永小作権
他人の土地で耕作や牧畜をする権利のことです。他人の土地を利用する代わりに、小作料として料金を支払います。
永小作人は耕作や牧畜に従事し、得られた収穫物の権利を得られます。民法で契約期間を20~50年以下と定められています。永小作権は抵当権の対象にもなるため、永小作権を担保に住宅ローンの申請なども行えます。
・地役権
自分の土地の不便がなくなるように、他人の土地を利用することができる権利を地役権と言います。
地役県の目的には「他人の土地から水を引く」「他人の土地に高い建物を建てさせないようにする」など、さまざまなものがあります。地役権を設定するには、利用する土地の所有者と利用される側の地主との間で契約を交わします。このとき交わす契約を「地役権設定契約」と言います。
地役権には地役交通権というものがあります。これは他人の土地を通行することを目的とした権利です。
・使用借権(使用賃借)
一般的に、借地権では地代が発生していますが、使用借権は地代の支払いが発生しない土地の貸し借りのことをいいます。この場合、賃借人の保護があまりされないという傾向があります。使用目的や返還時期が定められていない場合、貸主はいつでも返還を請求することが可能です。返還が請求されたとき、原則的に借主は明け渡さなければいけません。
相続と借地権
借地権は相続の対象になり、一般的な遺産と同じく相続人へと受け継がれます。借地権は相続人に対し新たに借地契約を結ぶ必要はありません。しかし遺贈が行われる場合は賃借人の許可を得なければいけません。必要に応じて地主に承諾料や更新料を支払うことになります。
また、借地権は相続税の対象にもなります。
土地が更地であるとした場合の評価額に、借地権割合をかけることで相続税の評価額を求めることができます。
借地権割合とは、土地と建物の権利の割合を示す数値で、地域によって異なります。一般的にアルファベットで表記され、A=90%・B=80%・C=70%……G=30%と割り当てられています。
例えば、路線価図を見た時に「200C」と表記されていた場合。更地の土地の価格が200×千円(20万円)で、借地権割合を掛けて“20万円×0.7=140万円”という数字が出ます。これが借地権価格です。このため、土地を持つ人の財産は残りの60万円と評価されることになります。
この路線価図に基づいて計算される額は、相続税を算出するためのもので、これが取引に適用されることはありません。
借地権の対抗要件
地主が土地を第三者に売却された場合、注意が必要です。
もし、新たな土地所有者から土地利用者に対し立ち退きを要求された場合、借地権を持っていてもその土地を明け渡さなければいけません。こういった非常事態を防ぐための対策として「借地権の対抗要件」があります。
対抗要件を得るには次の2つが必要です。
・賃借権の登記が済んでいること
地上権は借地人に登記を請求する権利があります。しかし、賃借人には登記する権利はありません。このため土地を第三者に渡す前の地主は、建物の所有者の協力がなければ登記ができず、第三者に渡った後の賃借人の立場を悪くしてしまいます。
登記が完了していれば、新たな土地に対しても賃借人が借地権を主張し、所有し続けることが可能です。
・登記された建物があること
登記が済んでいても、家事などで滅失したなどの理由で建物が失われる場合があります。このとき、更地になってしまうため借地権を主張できません。
建物が滅失したなどの理由で更地になった場合は、見やすい場所に建物を特定するための事項(種類や構造、新たに築造することなど)を記載した立て札や枠を作り、明示することで新たな土地所有者に対抗することができます。
しかし、借地権を明示した掲示物が何者かに撤去されてしまい、そのことを知らずに新たな土地所有者が、全く新しい取引をしてしまった場合は、借地権を持って対抗できない(過去に判例があります。)ため注意が必要です。
借地権にはその内容や、状況によってさまざまな扱いが行われます。このため、不動産を生業とする方には間違いなく必須となる基礎知識といえるでしょう。
この基礎知識をさらに深めていき、さまざまなトラブルを予防できるようになることが大切ですよ。