不動産市場が抱える、住宅と投資用不動産の問題とは【さくら事務所 長嶋修 × リーウェイズ 巻口成憲】(前半)

不動産市場が抱える、住宅と投資用不動産の問題とは【さくら事務所 長嶋修 × リーウェイズ 巻口成憲】(前半)

 

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株式会社さくら事務所 創業者・会長 長嶋修(左)
リーウェイズ株式会社 代表取締役CEO 巻口成憲(右)

第三者性を堅持した不動産コンサルタントの第一人者長嶋氏と、投資用不動産のプラットフォーム事業を手掛ける巻口氏に「不動産市場の抱える問題」について行われた対談内容を、今回はご紹介します。

目次

「未整備に等しい」 不動産市場が抱えるデータの問題

なぜ中古物件取引は活性化しなかったのか

「未整備に等しい」 日本の不動産市場が抱えるデータの問題

巻口:長嶋さんは一般の方々への教育を行い、知識の取得や理論武装をしてもらうためにメディアに出られているそうですが、今一番問題意識を持たれている、一般の方々は「ここの知識が足りない傾向にある」という、そのポイントについてお聴きしたいです。

長嶋:大きく分けて2つあり、一つは不動産業界人にも言えることなのですが、建物についての知識が圧倒的に足りないですね。日本の住宅は長持ちしない、建物は25年でゼロになってしまうという考えが常識になっています。先進国では、日本にしか存在しないようなおかしな常識を、逆転しないといけない。

巻口:そうですね。

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長嶋:もう一つは、市場のデータがあまりに未整備であることです。そもそもデータの所在地が点在しています。さらに、それぞれ物件調査するときにも、市役所、水道局、法務局などあちこちに行かなくてはいけません。私たちは、それらを一つにまとめて、物件情報が一箇所で把握できるように、政府には、一刻も早い情報整備を求めたいです。

巻口:今、私どもの方で運営しているプラットフォーム「Gate.」では、不動産投資に特化してはいますが、投資用不動産におけるあらゆる情報を集約するという理念をもっています。それは、長嶋さんがお考えになっている部分とだいぶ近いのかなと思います。不動産市場において未整備な情報はいっぱいあると思いますが、それがこれまで整備されてこなかった理由、諸外国ではできており、日本ではできてこなかった理由はどの辺りにあると、お考えですか。

長嶋:建物が25年でゼロになるのも、情報が整備されてないのも、特に理由はなく、ただただ不作為だったのだと思います。「不動産取引はこんなもんだ」という間違った認識を誰も疑わないでやってきてしまった。もうあと、10年や20年も前から「新しいデータベースを作りましょう」とか、「建物の評価をちゃんとやりましょう」だとかいう声自体は昔からありました。それがやっと政府も、具体的なアクションを起こすようになった。現在新築の取引が、全国で90〜100万戸あり、中古は40〜60万戸ぐらい。この状況を逆転させるという覚悟が政府にもできてきたというのは、ここ3年くらい前からでしょうか。

なぜ中古物件取引は活性化しなかったのか

巻口:現在日本において、中古不動産のマーケットを活性化させようと政府の方も動いているとは思いますが、私自身の意見としては今まで日本のマーケットで中古の取引が活性化しなかった原因は、やはり融資の問題があるのではないでしょうか。
銀行が担保評価というよりも、築古(物件)に対して評価を行うことが難しいというポイントが大きな問題じゃないかなと思います。最近の政府の覚悟というか、そちらの取り組みという意味において、銀行の担保評価までの一連の動きというのは、広がっていくものなのでしょうか。

長嶋:やっと政府もそれに気づきはじめて、2016年度に全国39ヶ所で補助事業的なその実証実験をやっています。建物の評価はどれだけできるのかみたいなものですね。これも、10年ぐらい前から国交省に言い続けてきて、やっと具体的な取り組みになりました。39ヶ所全てが成功するとは思いませんが、その中でも成功した雛形ができれば、それを全国に波及させることができると思います。例えば建物の評価であれば、築年数を無視して、現在の築年数が40年であっても、専門家がチェックしたところでは、事実上この建物はまだ20歳ですねというふうに判定すると、経済的耐用年数は延びるので、その延びた期間に対して融資できますよということになれば、買いやすく、借りやすくなる。そうゆう順序だと思います。

巻口:金融機関の担保評価という観点から言うと、今のキーワードに出てきた経済的評価というところと、物理的な存続可能性という2つの側面があると思います。今長嶋さんがやられているホームインスペクションというのは、まさに物理的な存続可能性というところに対してしっかりチェックをしていって、必要であれば補強していく。そういう流れだと思います。

長嶋:そうですね。

巻口:もう一つの経済的な持続可能性や、評価という意味でいうとこれまで不動産業界は、金融業界もそうですが、取引事例と積算価格だけで不動産の評価をしてきたというところが問題だと思います。収益性という考えで評価することができなかったという。

長嶋:マイホームの世界では、家賃とローンの比較しかしてないので、収益還元法でやると担保評価が低くなります。収益物件は大丈夫ですよね。収益物件なのだから収益に基づいて価格を出せばいいじゃないかという話ですよね。ここで肝になるのは、現時点で「瞬間的な収益」と「期間的な収益」です。途中で修繕が必要になるかもしれないとか、経年劣化で家賃も少しずつ下がっていくとか、そこまで読み取れるようになると、収益物件の投資の世界では一つの判断軸が完成するんじゃないかな。まさにそれが「Gate.」なんですよね。

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巻口:そうですね。私どもは基本的にはビッグデータを扱うことでその予測を行っています。一方で、「この物件だったら大規模修繕にこれぐらいの修繕費が必要」だというところのデータに関してはまだ集めきれていません。例えばこれまで、さくら事務所さんがやられてきた、「ケーススタディの中で総戸数50戸ぐらいだったらこれぐらいの修繕費が30年に渡って必要になってくる」といったデータを人工知能で分析して、この物件の取引には今後これだけの収益が発生する可能性があるという予測などは理論的に人工知能で出すことができると考えています。

長嶋:情報がだんだん集まってくれば、予測可能ですよね。

巻口:そうですね。

長嶋:現時点でできることは、ビックデータの活用にプラスして、アナログですけど建物を一通り人間がチェックしてそれを計算に組み込むことができれば、今できることとしては、ほぼ完璧なのではないでしょうか。

巻口:実際に、一気呵成に全部のマーケットだとか全部の制度が変わる想定は現実的じゃないので、少しずつステップを踏んでいくというところがどうしても必要だと考えています。私自身不動産業界に19年ぐらい関わっていますが、やはり不動産の取引において人の手を介在することは絶対無くならないと思っています。

長嶋:全部がデジタルにはならないですね。

巻口:やはり生きるか死ぬかになったときに、人工知能があなたに「この薬いいよ。」と言うよりも、信頼できるお医者さんにお任せしたいですよね(笑)

長嶋:はい(笑)

巻口:お医者さんがきちんと「私に任せてください。」と言うと、人間的には安心するのと同じで、生涯で一番高い買い物なので、そうなるとやはり信頼できる営業マンだとか親身になっていただけるサポートサービスとかが絶対必要になってくると思います。そのため、人工知能というのは、あくまでも営業の業務拡張のための支援ツールかなと思っています。

<後半「これからの不動産業界に起こりうる変革」などに続く>

【長嶋 修】

広告代理店を経て、1994年(平成6年)ポラスグループ(中央住宅)入社。
営業、企画、開発を経験後、1997年から営業支店長として幅広い不動産売買業務全般に携わる。
日々の不動産取引現場において『生活者にとって本当に安心できる不動産取引』『業界人が誇りをもてる仕事』『日本の不動産市場のあるべき姿』を模索するうちに、『第三者性を堅持した不動産のプロフェッショナル』が取引現場に必要であることを確信。
1999年、『人と不動産のより幸せな関係』を追求するために、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『不動産調査 さくら事務所(現 株式会社さくら事務所)』を設立する。
以降、様々な活動を通じて『“第三者性を堅持した不動産コンサルタント』第一人者としての地位を築く。
2005年12月、『人と不動産のより幸せな関係』を広めるため、同社代表を退き会長就任。
マイホーム購入・不動産投資など、不動産購入ノウハウにとどまらず、業界・政策提言や社会問題全般にも言及するなど、精力的に活動している。
著書やマスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。

近著『不動産投資成功の実践法則50』

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【巻口 成憲】

新聞配達専売員から社会人経験をスタートし、国内投資不動産デベロッパーに入社。
財務経理全般の業務責任者を担当しつつ、自社基幹システムを構築(VB+Oracleでのスクラッチ開発、社内ネットワーク整備、自社HP作成運営)し、システム責任者を兼任。
世界4大会計事務所系KPMGコンサルティング(現プライスウォーターハウスクーパース)に転職し、経営コンサルタントとして、多業種のシステム導入プロジェクトをはじめ、事業戦略策定や人事制度設計、経営管理に関する幅広いプロジェクトに参画。
MBA取得後、国内監査法人系トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)に転職。
上場のための経営計画策定やBSC導入等の経営管理に関する各種プロジェクトに参画。
2005年中古不動産事業を手がけるREISM株式会社設立に取締役CFOとして参画。
リーマンショック後の不動産市場低迷期に、バックオフィス業務に加えフロント業務の統括責任者として専務取締役に就任。
「顧客を育てる」という全く新しい観点によるリノベーション不動産投資ブランド事業を展開。
年間待ち行列3000人を超すリノベーション投資不動産をプロデュースし、セミナー販売のみで売上高46億円の事業に成長させる。
2014年さらなる業界改革を目指し、不動産情報化事業を手掛けるリーウェイズ株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。

近著『なぜ決断力のある人ほど不動産投資に失敗するのか』

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