オリンピックと不動産 新国立競技場で何が買えるか

オリンピックと不動産 新国立競技場で何が買えるか

国立競技場
(写真=PIXTA)

総工費2,520億円の新国立競技場は白紙撤回

 2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の総工費が、当初の計画である1,300億円から、2,520億円に膨らむ見込みとなり、国民の批判が高まったことから白紙撤回となりました。

 計画が撤回される前の新国立競技場は、斬新なデザインで好き嫌いが分かれていましたが、こと建設費に関しては、高額に膨らんでいることから疑問を持っている人が大多数でした。7月3日から5日にかけて行われた読売新聞社の調査では、新国立競技場の建設計画を「見直すべきだ」と答えた人は81%に達しています。

 オリンピックに備えた公共投資としての新国立競技場の事業費が高いか妥当かは、オリンピック後の活用度合いなどによっても異なってくるため、長期的な視点で評価する必要があります。

 建設計画の見直しが発表され、今後の計画はより費用を抑えたものになりそうですが、今回は計画が見直しされる前の2,520億円という事業規模について、オリンピックと不動産の関係から、2,520億円でどれだけの不動産が買えるかを試算しました。

住居系J-REITの物件

 2,520億円でどれだけのマンションが買えるかを、J-REITの代表的な物件で見ていきましょう。

日本アコモデーションファンド投資法人:大川端賃貸棟 308億円

 日本アコモデーションファンド投資法人は、三井不動産がスポンサーとなっている住居特化型のリートです。賃貸管理などを含めて、三井不動産グループのバリューチェーンの活用により、安定的な収益の確保と着実な運用資産の成長を目指します。

 日本アコモデーションファンドの代表的な物件は、大川端賃貸棟です。

http://www.naf-r.jp/portfolio/5-1-1.html

 東京都中央区の佃地区にあるタワーマンションで、「リバーポイントタワー」、「パークサイドウイングス」、「ピアウエストハウス」の3つの建物からなります。リバーポイントタワーは、地上40階建ての超高層マンションです。

 3つの建物の合計額は、2005年の取得価格ベースで308億円です。

大和ハウス・レジデンシャル投資法人/プレミア投資法人:芝浦アイランド ブルームタワー 359億円

 大和ハウス・レジデンシャル投資法人は、大和ハウス工業がスポンサーとなっている住居特化型のリートです。一方、プレミア投資法人は、NTT都市開発が主要スポンサーとなっているオフィスと住居に投資を行う複合型リートです。それぞれのリートが「芝浦アイランド ブルームタワー」の一部に投資しています。

http://daiwahouse-resi-reit.co.jp/cms/portfolio_0169.html

 芝浦アイランド ブルームタワーはJRの田町駅の芝浦側にあり、周辺を運河で囲まれた地区に立地する地上48階建ての超高層マンションです。

 物件価格359億円は、プレミア投資法人が2010年に取得した際の、一棟にかかる鑑定評価額です。

日本アコモデーションファンド投資法人/プレミア投資法人/オリックス不動産投資法人:芝浦アイランド エアタワー 262億円

 オリックス不動産投資法人は、オリックスがスポンサーとなっている、オフィスビルを中心に物流施設、商業施設、住宅など様々な用途の不動産に投資を行う日本で最初の総合型リートです。

 オリックス不動産投資法人の他、日本アコモデーションファンド投資法人、プレミア投資法人が、それぞれ「芝浦アイランド エアタワー」の一部に投資しています。

http://www.orixjreit.com/ja/portfolio/detail.85.html

 芝浦アイランド エアタワーはJRの田町駅や、ゆりかもめの芝浦ふ頭駅からアクセスできる立地にある地上48階建ての超高層マンションです。

 物件価格262億円は、オリックス不動産投資法人が2011年に取得した際の、一棟にかかる鑑定評価額です。

ここまでの総戸数は、2,379戸

 ここまで、大川端賃貸棟、芝浦アイランド ブルームタワー、芝浦アイランド エアタワーの3つのタワーマンションを紹介しました。この3棟の合計額は929億円で、新国立競技場の半分に満たない金額です。

 この3つのタワーマンションの戸数はそれぞれ、大川端賃貸棟のリバーポイントタワーが390戸、同じくパークサイドウイングスが154戸、芝浦アイランド ブルームタワーが964戸、芝浦アイランド エアタワーが871戸です。合わせて2,379戸です。

 新国立競技場の2,520億円は、大川端賃貸棟、芝浦アイランド ブルームタワー、芝浦アイランド エアタワーの3つのタワーマンションをセットにした総額929億円を、2.7個買える金額です。総戸数では、およそ6,500戸に相当します。

 6,500世帯のマンションとほぼ同額と考えると、新国立競技場の投資額の大きさを改めて実感できます。建設計画の見直しが決定され、今後の行方は目が離せません。新国立競技場の有効活用は、オリンピック後の重要テーマになるでしょう。

 

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