不動産賃貸トラブル 家賃を滞納し、行方不明になった入居者にどう対処するか

不動産投資
(写真=PIXTA)

 不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、その中でももっとも身近なものの一つが“家賃の滞納”です。短期間の滞納ならばまだしも、長期にわたる滞納や滞納しても居座る入居者、また滞納したまま行方不明となる入居者などへの対処はとても難しいです。今回は不動産投資のトラブル事例として、家賃滞納のケースへの対処法をご紹介します。

滞納された場合の手段

 不動産賃貸業を営むと、いつか必ず経験することになるのが“賃貸トラブル”です。最近では賃貸管理会社に物件の管理を任せているオーナーも多いですが、個人で管理している方もまだまだ多いです。そのような場合、賃料の集金や滞納者への催促などの対処は、すべて自分で行わなければなりません。

 入居者が賃料を滞納している場合、まずは電話もしくは家まで行って催告します。それで支払われなかった場合や連絡がつかなかった場合は、連帯保証人に連絡します。不動産投資のトラブル事例において、多くの場合はここまでで解決します。しかしこの連帯保証人も支払いの意思がないケース、また連帯保証人にも連絡がつかないケースがあります。

 このようなケースでオーナーができる対処は、裁判所に申し出て契約解除することです。

 それではどのような場合に契約解除できるのでしょうか。

家賃滞納で大家は契約解除できる?

・契約解除できる条件

 オーナー側の都合で契約解除することは、法律で厳しく制限されています。オーナーの都合で契約を途中で解除することには多くの条件がつきます。しかし入居者側に契約違反などの問題があった場合は別で、多くのケースで契約解除することができます。法律では以下の場合に契約を解除することができるようになっています。

  ①賃料支払義務に違反した場合
  ②共益費支払義務に違反した場合
  ③その他費用負担義務に違反した場合
  ④①〜③のケースにおいて、オーナーが相当の期間催告したにも関わらず、入居者が対応しなかった場合

 契約書にこの旨を書いていなくても、法律で規定されているため、違反があればオーナー側から契約を途中で解除することができます。またこれ以外のものでも入居時に取り交わした契約書に定めた規則を違反した場合は、契約解除の理由にできます。しかしこの条件に該当したからといってすぐに解約できるわけでもありません。①〜③のような違反があっても、軽いものならば解約できないことがあります。賃料の滞納ならば、3カ月以上の滞納で契約を解除できるのが一般的です。それ以下ならば解除できないと考えていいでしょう。

 また④の条件にも注意しなければなりません。④の条件を満たすには「催告を行ってから一定期間が経過」し、また「契約解除の意思を相手に伝える」という2つの手続きが必要です。この一定期間とは契約内容によって異なりますが、催告の際に通例に従った期間を記載しておく必要があります。もしも期間を定め忘れても、1週間〜2週間程度で“相当の期間”と見なされます。

 契約解除の意思を相手に伝える、という点も注意が必要です。契約解除は滞納があったからすぐにできるわけではなく、一定期間催告した上で入居者が対処しなかった場合に解除の意思を伝えるという順番になっていますが実際には催告の書面と契約解除の意思表示は同時に行うのが通例です。しかしトラブルを起こす入居者の中には、催告や契約解除の意思表示を書面で行っても、「そんなの届いていない!」と主張する人もいます。そのため書面が届いたことを裁判所で立証できるように『内容証明郵便』で送ることが必要です。

入居者が行方不明で催告できないときは?

 入居者が何カ月も滞納したまま行方不明になっている、というケースでは内容証明郵便でも催告や契約解除の旨を伝えることができません。そのようなケースでは裁判所にて『公示送達の申立て』を行います。公示送達の申立てとは、訴状を送ることができない行方不明の相手の場合、裁判所の掲示板に2週間掲示すれば訴状が届いたことになる制度のことです。この訴状に契約を解除する旨を記載していれば、2週間で契約は自動的に解除できます。

 入居者が行方不明のケースで困るのが、入居者が置いていった部屋の荷物をどうするかです。「行方不明だし契約解除したからこちらで処分してしまおう」というのは、損害賠償を請求されることがあります。家財を整理するためには、公示送達の申立てに引き続き、明け渡し訴訟を行う必要があります。この場合も裁判所の掲示板に2週間掲示されると、相手に届いたことになりますので、強制的に家財を整理することができます。

 明け渡し訴訟の訴状に以下の項目を記載していれば、2週間後に強制撤去の権利が得られます。

  ①オーナーと入居者の間で賃貸契約を結び、契約に基づいて住居を引き渡したこと
  ②賃料支払いの期限が来たが、入居者が違反して滞納したこと
  ③一定期間の催告期間を定め、期間経過後は契約解除する意思表示をしたこと
  ④一定期間経過したこと

 これらの公示送達の申立てと明け渡し訴訟の手続きを行えば、約1カ月で行方不明の入居者の部屋を整理することができるのです。手続きは面倒ですが、この流れを覚えておけばいざというときに焦ることがなくなるでしょう。

契約解除の原則は“信頼関係の破壊”

 契約解除ができるケースについてご紹介しましたが、契約解除の原則はオーナーと入居者の間で信頼関係が破壊されていることが認められる場合となっています。そのため家賃の滞納以外でも、他の入居者の迷惑になるような行為、無断での増改築、転貸や契約上住居としての利用のはずが事務所として使っている、などの場合でも、オーナー側から契約を解除することができます。そのためちょっとした入居者同士のトラブルや、1カ月程度の滞納では「信頼関係が破壊されている」と見なされず、解除が認められないこともあります。

 契約時に契約書で、入居者が一度でも滞納したら契約解除する、という契約を結んでいることがあります。しかしこの場合も1度滞納したからといって、すぐに契約解除し退去させることができるわけではありません。裁判所で信頼関係が破壊されていると認められる事情がなければなりません。また入居者が破産し、今後の賃料の支払いが不安になっても破産だけを理由にして契約解除することはできません。入居者が破産していても、今回紹介した条件に当てはまっており、オーナーとの間で信頼関係が破壊されたと認められない限り、契約解除はできません。

 不動産トラブルの事例の多くは、賃料の滞納であるとご紹介しましたが、実際に不動産投資を行えば入居者との間で、また入居者同士の間でのトラブルは数多く発生します。なかには今回解説したようなルールでは解決できない問題もあります。そのようなときは、身近な税理士や弁護士などの専門家に対処をお願いするのが一番です。自分の独断で行動し、後々損失を被ることがないように慎重に行動しましょう。

賢い不動産投資を始めよう

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2015年9月10日 5:00 PM カテゴリー: 不動産投資

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