不動産ビッグデータを使って駅の分析をしました。
上の図は首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)にある駅の位置を表したものです。対象の駅はJR、私鉄、東京メトロ、都営地下鉄のほか、都電やモノレールなどを幅広に含む約1,500駅です。この図を見ると東京の区部に密集しているのが分かります。
葛西臨海公園駅に最も近い駅は?
駅と駅との関係を直線距離で測って分析しました。駅のどこから距離を測るかによって少し変わってくるのですが、今回は当社が保有している駅の位置データにもとづいて直線距離を計算しました。
沿線を問わないで純粋に位置関係をみていくと、意外と面白い結果が出てきます。
たとえば「葛西臨海公園」駅です。
葛西臨海公園駅は、東京と千葉の湾岸エリアを通るJR京葉線の駅です。一つ隣りは、東京寄りが「新木場」、千葉寄りが「舞浜」です。東京の湾岸エリアになじみのある方は、葛西臨海公園駅に一番近い駅として、新木場駅か舞浜駅か、あるいは東京メトロ東西線の葛西駅と思うかもしれません。
でも、実はその3つのいずれでもありません。
最も近いのは、「東京ディズニーランド・ステーション」駅です。この駅は、東京ディズニーランドのアトラクションの駅ではなく、鉄道事業法にもとづく交通機関(モノレール)の駅です。
葛西臨海公園駅と、東京ディズニーランド・ステーション駅の関係は特殊な例ですが、その他でも駅と駅の位置関係をみていくと面白いものがあります。
たとえば、上野周辺では、東京メトロ銀座線「上野広小路」と、都営大江戸線「上野御徒町」の距離は60メートルほどですし、銀座線「上野広小路」と、千代田線の「湯島」との距離は260メートルほどです。
以下、近い駅関係をいくつか示します。
駅A |
駅B |
距離 |
鬼子母神前 (都電荒川線) |
雑司が谷 (メトロ副都心線) |
40m |
京成関屋 (京成本線) |
牛田 (東武伊勢崎線) |
40m |
上野広小路 (メトロ銀座線) |
上野御徒町 (都営大江戸線) |
60m |
山下 (東急世田谷線) |
豪徳寺 (小田急小田原線) |
100m |
淡路町 (メトロ丸ノ内線) |
小川町 (都営新宿線) |
100m |
御徒町 (JR京浜東北線) |
仲御徒町 (メトロ日比谷線) |
150m |
原宿 (JR山手線) |
明治神宮前 (メトロ千代田線) |
170m |
三越前 (メトロ銀座線) |
新日本橋 (JR総武線) |
200m |
馬喰横山 (都営新宿線) |
東日本橋 (都営浅草線) |
200m |
京橋 (メトロ銀座線) |
宝町 (都営浅草線) |
210m |
銀座 (メトロ銀座線) |
有楽町 (JR京浜東北線) |
270m |
浜松町 (JR京浜東北線) |
大門 (都営浅草線) |
270m |
赤坂見附 (メトロ銀座線) |
永田町 (メトロ半蔵門線) |
280m |
築地 (メトロ日比谷線) |
新富町 (メトロ有楽町線) |
300m |
駅の「密集度」という考え方
冒頭の図で東京の区部に駅が密集して、周辺部では密度が薄くなることが分かります。そこで東京と神奈川、千葉、埼玉に分けて、駅の密集度を計測しました。駅の密集度は、ある駅とその駅から最も近い駅までの距離の分布で測ります。具体的に見てみましょう。
■ 東京都 : 平均距離 730m
東京都内の駅と駅との平均距離は、730メートルです。
近くの駅までの最頻値は700メートルとなっています。直線距離で測っていますので、実際に歩くともう少し時間がかかりますが、だいたい10分歩けば、どこかの駅にたどり着けるイメージです。
都内で最も近隣との距離が離れているのは、西多摩郡瑞穂町にあるJR八高線の「箱根ケ崎駅」駅です。最も近い駅は、同じく八高線の隣の駅で「福生」駅です。直線距離でおよそ3,000メートルです。
■ 神奈川県 : 平均距離 1,050m
神奈川県も駅間が密集していますが、東京都に比べると2,000メートルを超える駅が増えています。
神奈川県の特徴としては、密集している都市部と、2,000メートル以上の距離があるエリアとに分かれていることです。
神奈川県で駅間が離れているのは、JR東海道本線の二宮駅と国府津駅の間で、4,200メートルほど離れています。
■ 千葉県 : 平均距離 1,680 m
千葉県内の駅間の平均距離は1,680メートルですが、かなりバラつきが見られます。
東京に近いエリアでは密集しているのですが、それ以外のエリアでは駅間が離れています。JRの成田線や内房線は、駅間の距離が離れています。
■ 埼玉県 : 平均距離1,720m
埼玉県内の駅間の平均距離は1,720メートルで、一都三県の中では最も離れています。
また、最頻値が1,000メートルを超えるのは埼玉県だけです。駅間の距離が最も離れているのは、JR八高線の明覚駅と生越駅の間で、その距離はおよそ4,600メートルです。
駅の価値
今回、当社が保有している駅データを使って、沿線の枠を超えて駅間の距離の分析を行いました。駅が密集しているエリアは、普段使う路線がストップした時の代替がききやすいため、単なる交通利便性以上の価値があります。
不動産投資の場合でも、自宅として住む場合でも、エリアの検討は沿線と駅で検討することが多いのですが、沿線の枠を超えて近隣駅との関係を見る、という視点も合わせるとより良いのではないでしょうか。