中古マンション投資では、古い物件を購入してあまり手をかけずに経費を極力おさえて利回りを得る方法もあれば、リノベーションを施して競争力を高めることで、長期的に安定した稼働率を実現して利回りを得る方法もあります。前者は「価格で勝負」の戦略で、後者は「中身で勝負」の戦略と言えます。
どのような戦略を取るにしても中古マンション投資で気になるのは、築年数が古くなると修繕費などの経費がかさむかもしれないということでしょう。
築年数と経費率の関係 J-REITのケース
J-REITは一般的にはマンションを一棟買いし、一括して運用・管理します。そのため一部屋ごとの区分所有での投資とは異なる面もありますが、J-REITの状況を見ることは不動産投資の参考になるでしょう。
以下の図は、J-REITが都心5区(港・千代田・中央・新宿・渋谷区)に保有しているマンションに絞って、築年数ごとの経費率をみたものです。
ここでの経費率は、管理業務費、公租公課、損害保険料、修繕費などの賃貸事業に関する費用の合計を、賃貸事業収入で割ったものです。なお、費用には減価償却費は含まれていません。
おおむねの傾向として、古い物件は経費率が高いという関係がみられます。ただし、個別物件ごとに経費率のばらつきが大きいことは注意が必要です。
1年ごとに0.6%の増加が目安
どのくらいの築年数であればどのくらいの経費率で、年々どれくらい増えていくのかをみてみましょう。先ほどの散布図のデータをもとに計算すると
経費率 = 0.64%×築年数+17.1%
という関係がありました。
上の式は、新築(築年数0)であれば17.1%となり、築10年であれば、0.64%×10年+17.1%で23.5%となります。築10年のマンションの場合、経費率は23.5%で、1年ごとに0.64%増えていくというのがJ-REITが保有する物件からみえてきた目安です。
もちろん個別物件の差が大きく、経費率も築年数が古くなれば必ず増えるというものでもありません。
中古マンション投資の戦略
J-REITのケースでは、築年数の古さと経費率の高さには関係がありました。ただし、個別の差が大きいことも同時にわかりました。築年数が古くても経費があまりかからない、あるいは経費をあまりかけていない物件もあれば、比較的新しい物件でも経費がかかっているものもありました。
個別の違いを考えるために、経費率の要素を確認したいと思います。
経費率 = 経費 ÷ 収入 です。
経費率が高いということは、(1)経費がかかっている、(2)収入が減っている、の両面から考えることができます。経費をかけていなくても家賃収入が取れていなければ経費率は上がってしまいます。マンションの維持管理に経費をかけていないことで、物件の競争力が落ちていれば、かえって経費率を高めることにもなりかねません。
必要なときにリノベーションなどの資本的支出を行い、中古マンションに追加投資を行うことで物件の競争力を増やせれば、家賃収入を増加・安定させることができ、結果として経費率を抑えることもできるでしょう。
中古マンション投資の戦略としては、経費を抑えることだけでなく、家賃収入を増加・安定させることも考えて、経費と収入の両面のバランスをとることが大切です。