不動産投資で重要なのは、表面の利回りよりもトータルのリターンでしょう。賃料収入を投資金額で割った表面利回りは、あくまで投資の目安としての利回りです。また、償却前利益(NOI)の利回りも、その時点の手取りの利回りをみる目安にすぎません。
表面利回りにしても、NOI利回りにしても、欠けているのは出口(売却額)の概念です。そこで、いくらで購入して、どのくらいの純収入があって、いくらで売れるか(売ったか)まで考慮したIRR(内部収益率)が不動産投資のトータルリターンを測るのには適しています。
IRR(内部収益率)とは?
IRRとは、「Internal Rate of Return」のことで、内部収益率ともいいます。
不動産投資におけるIRRは、投資金額、投資期間中のインカムゲイン、投資期間が終了した時の出口の価格(キャピタルゲイン)までを考慮した、トータルの投資収益率です。以下の等式を満たすRの値の部分です。
たとえば、2,000万円の物件を購入し、毎年100万円の償却前利益(NOI)があり、投資の出口で1,900万円で売却すると、上の計算式からIRRは4.08%となります。
2,000万円の投資に対して、毎年100万円のNOIですから、NOI利回りは100÷2,000で5%です。しかし、投資のトータルリターンを考えるときは、1,900万円で売却する時のキャピタルロスも考慮しないといけない。キャピタルロスを考慮したトータルリターンは、IRRの4.08%ということになります。
IRRはキャピタルロス・キャピタルゲインも考慮したトータルのリターンです。先ほどの例で、売却金額が1,900万円ではなく、2,100万円だとしたら、IRRは5.89%になります。なお、売却金額が購入金額と同じ2,000万円ならIRRはNOI利回りと同じ5%です。
このように売却時のキャピタルゲイン、キャピタルロスによって、投資のトータルのリターンが変わってくるのです。
J-REITの例
住宅に投資しているJ-REITのデータを使ってIRRを検証してみましょう。過去5年のデータがそろう29物件についてIRRを計算しました。
条件をそろえるために5年前の簿価を購入金額とみなし、5年間の償却前利益(NOI)は実際の数値を使い、今の鑑定評価額で売却するという仮定で計算しました。
その結果、IRRの最小値は-0.25%、最大値は+7.79%でした。物件によってばらつきが大きくなっています。IRRはインカムゲインとキャピタルゲインの両方を含むトータルリターンです。
以下の図は、各29物件についてインカムゲインの水準とキャピタルゲインの水準に分解したものです。
どの物件もインカムの利回りはおおむね5%前後です。IRRの違いは主にキャピタルゲインの水準によることがわかります。
IRRとキャピタルゲインの関係だけを取り出したのが以下の図です。
IRRが高い物件では、8%近いものもあります。8%はできすぎだとして、たとえば5年間、IRRが6%でまわるということは、2,000万円の投資で、毎年100万円の償却前利益(NOI)が入り、出口の段階でさらに100万円のキャピタルゲインを手にします。
高いIRRを実現するには、投資期間中の高いインカムゲインと、売却時の高いキャピタルゲインがポイントになります。この図と先ほどの図は、IRRは、キャピタルゲインの要素が大きいということを示しています。
不動産投資のトータルリターンを高めるためには、投資期間中の稼働率を高めて、高いインカムゲインを得るとともに、売却時に高い値段で売る、高い値段で売れるタイミングで売るといった「出口戦略」も重要になります。




