アフターロンドン五輪から考える、東京オリンピックの不動産需要の落とし穴

アフターロンドン五輪から考える、東京オリンピックの不動産需要の落とし穴

東京五輪(写真=PIXTA)

 2020年に東京で開催されるオリンピックは環境に配慮した都市型オリンピックといわれている。新興国開催にみられるような、各競技施設を新たに建設する大規模投資型オリンピックとは異なり、既存の競技施設を利用し、建設投資をできるだけ抑えたオリンピックだ。スクラップアンドビルドを行わない点が環境にも配慮したエコ型でもある。

 このコンセプトは2012年に開催されたロンドンオリンピックと重なる。イギリスの文化・メディア・スポーツ省は、オリンピック開催1年後に「事後評価レポート」をまとめている。このレポートを参考に、アフターロンドン五輪から、今後の日本の不動産業に関する影響を考えてみたい。

ロンドン五輪の不動産業への効果は

 事後評価レポートでは、オリンピック開催前後の産業別の雇用誘発数を発表している。雇用が最も増加した産業は卸売・小売業だ。オリンピック開催前からの観光客増加により、観光客向けの物販業が伸びたとされる。次に広告業、警備および観光関連産業、建設業と続く。逆に雇用をあまり生み出さなかった産業としては、上下水道業等の公共事業関連や農業等の第一次産業、そして不動産業とされている。つまり、不動産業はオリンピック需要でも雇用は増加しなかったのだ。イギリス政府もオリンピックの不動産市場への影響はほとんどなかったと結論付けている。

日本の不動産業はどうか

 不動産業においてディベロッパーの収入源としては、オフィスビル等の賃貸物件からの賃料収入と、分譲マンションの売却益の2つが主である。まず賃貸物件の収入から考えてみる。賃料については、空室率は減少傾向にあるものの、オリンピックの影響で目立った回復をしている訳ではない。そのためディベロッパーにおいても、オリンピックにより賃料収入が増加しているとは考えにくい。

 次に分譲マンションの売却益も考えてみる。今のところ、オリンピック会場に近い江東区等の湾岸エリアのマンション開発が活況を呈している。これはオリンピックによる直接的な効果になるだろう。しかし、ディベロッパーも湾岸エリアのマンション開発だけを行っている訳ではないので、その効果は限定的であると思料される。

追い打ちをかける建築コストの高騰

 さらに、オリンピックにより建設業への需要が高まれば建築費が高騰するため、ディベロッパーにとっては不利な状況となる。ただでさえ現在は、建設業の人手不足による建築コストの高騰が続いている。今後、オリンピック関連施設の建設が本格化すれば、さらに建築コストが高騰することが予想されるため、ディベロッパーに与えるマイナス要因はますます大きくなってくる。このようにディベロッパーへの状況も考えると、ロンドン同様に、オリンピック開催は不動産業に特段の好影響を与えないことが予想される。

湾岸地区の住宅開発は供給過剰の恐れも

 一方で、不動産市場への影響はどうであろうか。オリンピック後の活用として期待されるのは、湾岸エリアに開発される選手村だ。敷地面積は約44万平方メートルであり、面積としては都内の住宅地開発としては超大規模開発である。オリンピック後に1万戸規模の住宅が一気に誕生するエリアとなる。

 選手村以外の湾岸エリアでもすでにオリンピックまでに建設される超高層マンションの計画が相次いでおり、それだけでも1万戸の供給が行われている。オリンピックまで1万戸の大量供給が続き、オリンピック直後にさらに1万戸の住宅が供給されるとなると、供給過剰になる可能性も出てくる。湾岸エリアが一気に値崩れする事を防ぐには、課題となっている交通アクセスの整備が急務といえそうだ。

 以上のように、ロンドンオリンピックの事後評価レポートから想定すると、オリンピックの不動産業界や不動産市場への影響は、日本でも限定的といえそうだ。むしろ、湾岸エリアの住宅市場の過熱感は、選手村の大量供給を考えると落とし穴になるかもしれない。2020年に向けては、冷静に不動産市場を見通すことも大事になるだろう。

 

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